第一章 追悼師は歌う
死の土地 -1-
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最果ての村で逢う
カンテラに照らされた藍色の髪
空を仰いでピータを探せば
狂気の暗闇で魔物が
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[死の土地]
エルナ23、
ここ数エルナは特に不作が続いていた。日照不足、冷夏、長雨……作物において生を脅かす自然災害が起きた為ではない。単にこの世界が、ライランとダルワッドが、戦争に明け暮れていたのである。
男は漏れなく戦争に参戦し、家に遺された女子供が畑の世話を続けていた。だが女手だけでは範囲は狭まる。当然の成り行きとして、ライランは不作にも諦念していた。
ライランの中でも特に不作の酷い村がある。ライランの辺境にあり、ダルワッドとの国境の手前。戦地と定められし荒廃した土地に、砦とばかり取り残された村だ。
人々は土に汚れた服を厭わず、希望を捨てた顔で、ただ日々をやり過ごす。父を、夫を、息子を亡くした、やり場のない
逝去した人々の魂を悼み、安寧と共に昇天することを願う。
遺された人々の
死因はそれぞれ違うけれど、ここエルナ10は戦死した者を送り出すのが大半だった。必然的にチコリは戦地が目と鼻の先にある、ジュビートの宿屋によく世話になる。
今日もチコリは
(終わりの見えない戦争。いつまで続けるのかな……)
チコリは自分と同じ温もりを持った布団を抱き寄せ、顔を埋めた。腰まである髪が、窓から差す白んだ陽を遮って顔を隠した。
自分の吐息を聞く。耳を塞いで心臓の音を聞く。規則正しい振動が耳に届いてやっと、自分は生きていると信じられた。
チコリは自分の瞳から日々、色が失われてゆく感覚に苛まれている。白黒の世界で、自分が生きているのか分からない。
特に朝は酷い。目が醒めて、昨日までの記憶が遅れてやって来て、今日までの記録が記された時。走馬灯が切れて、死んだのだと錯覚する。
だから毎朝、チコリは自分の生死を確認しなければならなかった。
生まれてエルナ17、今日もチコリは生きていた。
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