168 第50話 Dの悲劇 26 【500年前の復讐14】
登場人物
【邪竜族ダゴン】
同胞と家族を人族に殺され、その恨みから邪竜族化した。
仲間のアパーカレスが力を増大させるとダゴンも比例して能力が強化される。
現在人族に対して復讐中。
【邪竜アパーカレス】
ダゴンが息子アークの遺体をベースにして創った竜型ホムンクルス。
ダゴンとともに人族を蹂躙する。
【魔法剣士ガンツ】
バツイチの32歳。魔法剣士。子供もいて親権は元妻に奪われた。
バンバラとは同郷。
【大賢者バンバラ】
魔女パーラ・ヌースの弟子。しかしながらパーラ・ヌースとは袂を別れた。
現在はガンツと行動を共にして打倒ダゴン&アパーカレスを目指す。
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【ダゴン&アパーカレス】と【ガンツ&バンバラ】のファーストコンタクトから一週間が経った。
【リットール】及び隣国【フェレング】【マハパワー】は、アパーカレスと眷属竜である
さらには、アパーカレスは
眷属化した彼女達は邪竜の力を与えられ、アパーカレスとともに人族に戦いを挑むのだ。
そんな状況の中で、リットール国王は
「くっ。消えたと思っていた復活竜がこんなに!」
「踏ん張れ! 一匹たりとも結界内に入れるな!」
「避難民を早く誘導しろ!」
「ちくしょう、俺達の都を無茶苦茶にしやがって!」
残存兵達は結界の外の様子、すなわち破壊された街並みを見て悔しがった。
もはや彼らには打って出るだけの戦力は無い。
偽りの歴史を活力として造られた様々な文化。それらはアパーカレスとダゴンにその存在を許されず、徹底的に破壊された。
しかし意外な事に、そこに住んでいた民は呪詛混じりの瘴気に犯されはしているものの、いまだ死者は出ていない。
王国軍を主とする抵抗勢力も次々と石化の竜魔法で沈黙させられた。彼らは絶望のシンボルとしてそのまま壊さずに残され民達をさらに絶望させた。
『ダゴン様、また眷属候補の女を見つけました』
人型になったアパーカレスが一人の女の腕を捩じ上げながらダゴンに報告した。
『うむ。そろそろ奴らが来る。手早く済ませよ。俺はその間に瓦礫に隠れる人族の様子を見て回る』
『御意』
ダゴンはアパーカレスと別れ、荒廃した王都、瘴気の薄い地区を一人見て回った。
視野に入るのは破壊された瓦礫の山。だがその瓦礫の中に明らかに人の気配を感じる。
ダゴンは息を潜めて隠れている王都の民達に言い放った。
『人族よ。蹂躙される気持ちはどうだ!』
約200年前、ダゴン達追放竜族はコルト王と魔女パーラ・ヌースの計略に嵌り無力化され無慈悲に蹂躙され壊滅した。
瓦礫の影に隠れ怯える人族を見つける度に、怯えた目と視線が合うたびに、かつて人族に蹂躙された記憶がダゴンの脳裏にフラッシュバックする。
『殺された同胞達と同じ苦しみを味合うがいい。これは意趣返しなのだ』
ダゴンは絶望に怯える人族の様子を見て、かつてのコルト王やコルト兵士のように愉悦浸ろうとした。
しかし浸れなかった。そんな感情など全く湧き上がらなかったのだ。
『ふん。つまらぬ。
ダゴンの心が晴れる様子は微塵もない。
人族と同じような感覚にはならない。ただただ不快でしかなかった。
『しかし殺された同胞達のかたきだ。ケジメは付けさせてもらうぞ』
眉間にシワを深く刻ませダゴンは歩く。
びゅっ! こつん
『む?』
ダゴンの肩に弱弱しく飛んで来た
あまりの弱さにダゴンは避けようとせず、そのまま石が飛んで来た方向を見た。
「この人でなし! なんでこんな酷い事が出来るんだ!」
そこにはまだ10歳にも満たない少年が石を握りしめてダゴンを睨みつけていた。おそらく衝動的な行動だったのだろう。
『やられたからやり返しただけのことだ』
ダゴンは面倒臭そうに返答し、手の平に軽く魔力を込めて威圧した。
途端に真っ黒な邪炎が手の平の上で噴き上がる。
少年は邪炎に威圧され、腰を抜かしてへたり込んだ。
「待って! 許して下さい! お願いします! 子供のした事なんです! どうか御慈悲を!」
瓦礫の影から慌てて二十歳くらいの女が飛び出して来て少年を庇う。
『うるさい』
「な、ならこの子の代わりに私の命を」
『…………』
しかしダゴンを聞く耳を持たず、女と少年に邪炎を放った!
ゴウ!
邪炎が迫り女はへたり込んだ少年を抱いて邪炎に背を向けた。
逃げようとする素振りは一切ない。
『ちっ』
その様子にダゴンは舌打ちして邪炎を納めた。
『女。その
ダゴンがそう聞くと女は首をふるふると横に振った。
女と少年は顔見知り程度の間柄であった。
『他者を理不尽に惨殺する残虐性を持ちながら、命を投げ出して他者を守る一面も持つ。まるで整合性が無い。やはり人族の心は壊れているな』
ダゴンは少年を庇う女の様子に苛立ちが高まった。
我欲を優先し他種族を平気で滅ぼす残虐な人族。そんな奴らが他者を助けるなど何を勘違いしているのかと。
それともあざとくも人族の善性をアピールしているのかと。
女の行動は200年前なら【崇高な自己犠牲の精神】に映ったかもしれないが、今のダゴンには命を張った醜悪な【偽善】にしか見えなかった。
『どうせおまえ達は長くはもたない。それまで絶望に身を捩るがいい』
二人の身体は瘴気と呪詛に犯され、身体のあちこちに【死の黒斑】が現れている。
息も微かにヒューヒューと不快な音が混じっている。肺も瘴気で少し焼けているようだ。
よく持って二週間程度の命だろう。
『ふんっ』
ダゴンはそれ以上二人に構う事は無く、今度は生命の存在を許さない瘴気の濃い(王都内の)無人化地区に向かった。
そしてダゴンが無人化地区奥深くまで侵入した辺りで彼らは現れた。
キュイイイイイイイイイイイイイン……
「
「限界
突如
バンバラはダゴンを弱体化と拘束しようとした!
ガンツは身体強化術を限界まで使い、
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ように見えたのだが…………
『驚いたな。一週間前とは比べ物にならないパワーではないか』
今度はダゴンがガンツとバンバラの遥か直上から言った。
「チッ。竜族の瞬間移動術か」
「必死で特訓したのにこうも簡単に躱されるとはね」
この一週間、二人はバンバラが開発した【ガンツフィールド】(時間の流れが異なる特殊空間)にて打倒ダゴン&アパーカレスの特訓をしていた。
しかし結果は吉とはならなかった。
ダゴンは
「バンバラ、撤退するぞ!」
今の奇襲のためにパワーを全振りした二人に戦闘力は残っていない。
だから不発のときは速攻離脱を決めていた。
ガンツはバンバラに即時撤退を促した。
「了解。
しかし
ギュパパパパパ! ガラガラドグワッシャーーーーーーーン!
『 うぉっ!? 』
突然、途方も無い威力の雷系斬撃波と無数の魔法光矢がダゴンを襲った!
完全に虚をつかれ、ダゴンは
右手左足さらには顔面が部分欠損し、千切れた腹からは内蔵が零れ落ちる。
『これは聖属の力……ついに現れたな!』
ダゴンはダメージを受けた身体を急速再生しながら攻撃してきた遠方を見据えた。
そこにはこの時代の真正勇者と真正聖女の姿が在った。
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近況ノートに閑話あり
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