133 第四十六話 ジャッジメント 03 【大逃亡】
『優勝はバーク選手!なお、ケンツ選手は反則及び試合放棄により失格となりました!』
え?
俺、まさかの反則負け!?試合放棄!?
そんなバカな!
「おい、審判!どういうことか説明しやがれ!」
俺は鬼の形相で審判にくってかかった!
いくら俺でもこんな大舞台で反則みたいなマネをするわけないだろ!
しかし審判は俺の抗議を実に容易く粉砕した。
『説明も何もその通りだ。ケンツ選手、君は試合途中にもかかわらず、仲間を加勢に呼んでいただろ』
はぁ?
俺が仲間を加勢に呼んだ?
一体何を言って……
「あ……」
そういやアパーカレスが俺にトドメを刺そうとした時、ユリウス達が揃って来てくれたんだっけ。
あれのことか!
「審判、ちょっと待て。あれは俺が呼んだんじゃなくて……」
『他にも決定的な事があったぞ』
「け、決定的?」
なんだ、一体何が俺に引導を渡したんだ?
『ケンツ君、「おい、審判のおっちゃん達、試合はここまでだ」と言って試合を放棄したのは君自身だろ。忘れたのか?』
「うぐっ!?」
言った、確かに言ってた……
じゃあ、まさか、本当に俺の負け?
「ケンツ……」
「う、シャロン……」
やべえ、シャロンが泣きそうな顔して遠くからこっちを見てる!
多分俺も泣きそうな顔をしているぜ。
どうする、どうしたらいい!?
「ケンツさん、その……シャロンさんの件だけど…………」
「ひぃっ、バーク!?」
やべえ!ガチでやべえ!
今度はバークがシャロンを取り戻そうと何か言って来やがった!
ちくしょう、必死の思いでようやくシャロンを取り戻したと思ったのによう、こんなのあんまりだぜ!
審判、空気呼んでくれよ!観客だって、こんな結末なんか誰も望んで……
― うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
「な、なんだ!?何ごとだ!?」」
突如地鳴りのような大歓声が沸き起こった!
「バーク、おめでとう!」
「見事シャロンを守り通したな!」
「やはりシャロンを任せられるのはバークだ、ケンツじゃ役不足だぜ!」
「ケンツのヤツ反則負けだってよ、だっさ!」
「やったー、賭けに勝ったぞー!」
か、観客ぅ……
そういやこいつら、途中から観戦どころじゃなかったからな。
俺の真の活躍なんてまるで知らないんだった。
まずい!
まずい!
まずい!
まずい!
これは非常にまずい!
ギャラリー側に、俺の味方は一人もいねえ!
― バークッ! バークッ! バークッ! バークッ!
「う、うるせー!」
今度はバークコールがドッと沸きあがり圧倒される。
ちくしょう、まるで俺の存在をプチっと圧殺するかのようだぜ。
うっ……!?
― ぐにゃぁ~ ふらぁ~
ふぐぅっ!
ショックのあまり視界が歪む、足元がおぼつかねぇ。
まさか、この俺が負けるなんてなぁ……
バークにシャロンを持って行かれるなんてなぁ……
ちくしょう、
ちくしょう、
ぢぐじょう!
………
………
………
いいや、そんな事は絶対に認めねえ!
シャロンを奪われるなんてこと絶対にあっちゃならねぇ!
かくなる上は、
「うおおおおおおおおおおおお!
― カッ……ビカビカビカアアアアア!ガラガラガラ、ドッシャアアアアアアアアアアン!!
「うわあああああ!!!」
「な、なんだ!!!」
「眩しい!目がぁぁぁ!!!」
「ぐへええええええ!!!」
コロシアムに〈落雷の爆音〉と〈聖なる閃光と雷光〉が荒れ狂う!
その閃光をマトモに受けてしまった審判と観客達は、ゴロゴロと両目を押さえて転がり苦しんだ!
バークとシャロンへの祝福ムードだったコロシアムは、俺の
「ケ、ケンツさん、待ってくれ。大事な話が……く、どこだ!?」
へっ、一時的な目つぶしだぜ。
バークの野郎、目を押さえながらなんか言ってやがるが無視だ無視!
「シャロン、
「ケンツ、一体何を……きゃっ!?」
俺は視覚を失い戸惑っているシャロンを肩に担いだ!
万が一俺の敗北が確定した場合、全ての約束事を反故にする!
そんでもってシャロンを担いでリットールから逃亡する緊急プランだぜ!
シャロン、安心してくれ。逃走ルートは事前に決めてある!
このまま海に向かって逃げ切るぜ!
あとヒロキとアカリだっけ、いろいろありがとう!
おまえ達の事はいつまでも忘れないからな。
縁が有ったらまた会おう、アディオス!
バークとキュイとキリスも達者でな、テメーらとは永遠にサヨナラだ!
だから絶対に探さないで下さいっ!
ケイト、いつも陰ながらの支援ありがとう!
落ち着いたら手紙書くぜ!
「さあ、シャロン。今から愛の逃避行だぜ!」
「待って、そんな急に……あうっ!」
戸惑うシャロンを無視して、俺はシャロンを担いだまま全力で闘場ゲートに向かって走り出した!
悪いけどシャロン、時間との勝負なんだ!
モタモタしている暇はねえ。逃亡ってのは初動が大事なんだぜ!
バークの魔の手に追い付かれるまでに、なんとしても行方を
「待ちなさい、とおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
― ドカッ!
逃亡しかけた俺に対し、後ろから強い衝撃が!?
「ぐべっ!?なんだ一体……げ、アリサか!?」
なんとアリサが俺にタックルをかまし、そのまま腰にしがみつきやがった!
「ア、アリサ、頼むから放してくれ。俺達は一刻も早くバークの魔の手から逃げなきゃならねーんだぁぁぁぁぁ!」
「なにバカな事を言ってるの。こんな大観衆の中で大騒ぎ起こして逃げ切れるワケないじゃない!」
「わ、わかった。じゃあアリサよ、ユリウスも誘って一緒に逃げよう!俺とシャロンはおまえ達の母国への亡命を希望する!早く大使館に連れて行って俺達を保護してくれ!」
「何が“わかった”よ。面倒くさい事に巻き込まないで!それに大使館は内戦が近いせいで閉鎖中よ」
「なんだって!?じゃあやはり海上ルートで魔族の大陸に亡命してやる!」
「いいから落ち着きなさい!ていっ!」
― ガツッ!
「えぶっ!? キュウ…………」
「キャー、ケンツ!ケンツ!いやあああああああああああああ!」
ジタバタと抵抗する俺に対して、アリサは容赦なく後頭部をグーで殴りやがった!
俺はシャロンの悲鳴が届く前に、意識を刈り取られ深い闇へと堕ちて行った。
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次回
【134 第四十六話 ジャッジメント 04 【ザ・ウイナー】】
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