123 第四十三話 決戦!ケンツvsアパーカレス 06 【抵抗】
「なんだ一体…………な、おまえ
新たに俺の前に現れたのは…………
そしてキリスに抱えられグッタリとしているシャロンだった。
『ケンツ、あんたバークに何しようとしているのさ!?』
『バークに危害を加えるならアタイ達が相手になるよ!』
キュイとキリスはシャロンを抱え、俺とアパーカレスの間に割って立ち塞がった。
『シャロン!?それにオメーらはキュイとキリスなのか!?』
俺は二人の姿を見て我が目を疑った。
金色の爬虫類的な瞳、鋭く伸びた爪、所々
『そうよ、私達はバーク|家族だもん』
『バークが姿を変えれば、私達も姿を変えるのよ』
くそ、やはり二人はバーク側で、しかも人間をやめちまったのか!
「うう……ケンツ、気を付けて……この二人………信じられないくらい強く…………」
シャロン!?
なんてこった、またシャロンが敵に奪われちまった!
だが外傷は無さそうだ。
キリスの魔法にやられているのか?
「おまえらがバーク側についたのは仕方ねぇ、だがシャロンは違うだろ?人質になんか取らねえで解放してやってくれ!」
『『 人質? 』』
「そうだ、どうかシャロンだけは危害を加えないでくれ!頼むよう!」
キュイとシャロンは一瞬ポカンとしたあとクスクスと笑った。
『私達がシャロンを人質に?』
『ないない、危害なんて加えないよぅ』
なんだ?人質にするんじゃないのか?
ただ連れて来ただけ?
「それじゃあ!」
『シャロンはアタイ達の仲間だもん。家族だもん』
『バークの寵愛を受けた日からシャロンも家族なのよ。家族を人質にしたりしないわ』
バークからの寵愛?
違うだろ、
断じて寵愛なんかじゃない!
「シャロンはおまえらとは違う!そんなことより、シャロンを解放してくれるんだよな?」
『もちろんシャロンの意思に任せるわ』
『でもその前に……』
キリスはシャロンの胸元を掴み一気に!
― ビリビリ!
「きゃああああああああああああああああ!!!」
突然のキリスの行動にシャロンは悲鳴を上げた。
シャロンの武闘着が引き裂かれ、たわわな双丘が
「なっ!キリス、テメー何しやがる!?」
『何って、シャロンは本当の自分の気持ちに気付いていないのよ』
『だから気付くためのお手伝いをするの』
キリスはそう話しながらシャロンが首にかけている宝珠の付いたペンダントに手を掛けた。
『バーク見て。シャロンがバークの想いを拒んで来た理由がこれよ!』
『この宝珠のせいで、シャロンは家族に、
キリスは宝珠を邪竜アパーカレスに向けた。
『それは竜魔法・竜呪術を妨害する宝珠か!?』
召喚勇者の件以降、アパーカレスはシャロンに何度も
シャロンをケンツの元に行かせ、ケンツが一線を超えた力を身に付けないようさりげなく妨害させるよう仕向けたのだが、まるで効果がなかったのだ。
『どうりでシャロンが我の思う通りにならず、サブドラゴニュート化もしないワケだ。そんなものを身に着けておったとはな……』
アパーカレスは予想外のアイテムを見せられ驚くと共に納得した。
『キリス、その宝珠を引きはがせ!』
『はい!』
宝珠の説明はアリサから受けている。
今の話の流れじゃ、宝珠を失えばシャロンがアパーカレスの手に堕ちる!
今度こそシャロンが奪われちまう!
それどころか人間ですらなくなる!
「やめてくれええええええええええええええええええええええ!!!
縮……!?」
― ブチィッ!
縮地を掛けて飛び込む前に、キリスは宝珠のペンダントをシャロンから引きちぎった!
「あああっ………いやああああああああああああああああああああ!!!」
グッタリしていたシャロンの身体がビクンと跳ね上がる!
ウナジに付けられた邪竜の紋章が強く反応しだしたのだ。
「熱い!身体が熱いいいい!!!」
それまで宝珠によって守られていたアパーカレスの呪力的なものが一気に発動!
邪竜の紋章を中心に、シャロンの身体が変化し始めた。
― ビキンッ!ビキンッ!
「身体が変わる!心が作り変えられる!自分じゃ無くなる!ケンツ!ケンツー!」
「シャロン!そんな……シャロン!シャローン!!!」
― シュウウウウウウゥゥゥゥゥ……
「かはっ……はぁ、はぁ……』
シャロンは何度も身体を大きく震わせ、そのたびに身体が変貌していき、やがてキュイとキリスと同じようなサブドラゴニュート化した。
いや、何か違う。
シャロンの姿はもっとドラゴニュートに近い!?
なんてこったい、シャロンが人間でなくなっちまったぁ!
『ふふふ、ようやくシャロンも我が眷属になれたか。シャロンよ、おまえは特別中の特別なのだ。さあ、我かケンツか好きな方を選ぶがよい!』
この野郎、シャロンになんてことを!
『シャロン、
『ケンツも最後のチャンスよ。ケンツも私達と家族になるの。そうすればシャロンと一緒にいられるわ。でも断れば、待っているのは確実な死!』
アパーカレスはシャロンに選択を迫り、キュイは俺に選択を迫った。
「キュイ、誰がテメーらなんかと家族になるかい!アパーカレスを倒してシャロンを元に戻してやるぜ!」
俺は状況を確認し直した。
ミヤビは相変わらず小型復活竜に手を焼いてやがる。
ヒロキとアカリも翼竜型復活竜に翻弄され気味だ。やつら、空中戦は得意ってわけじゃなかったんだな。
そしてアリサとユリウスは、邪竜族の男を相手に戦っている……いや、さらに二人の女性らしき敵が増えている!?
ユリウスのやつ、すぐ戻るとか言いつつ全然戻って来れねーじゃん!
そしてシャロンは……
シャロンを自分の胸を抱えるようにして俯き震えている。
くそっ、なんでシャロンばっかりこんな理不尽な目に合わされるんだ!
『さあシャロン、選ぶのだ』
アパーカレスはシャロンに返答を急かした。
『私はバークを……いえ、アパーカレスを……』
ダメかシャロン。また俺の敵に回ってしまうのか……
絶望に身をよじりそうになる俺を見て愉悦の笑みを浮かべ、シャロンがアパーカレスを選んだ事に満足するアパーカレス。
だがシャロンの返事はその全て者を良い意味でも悪い意味でも裏切った。
『私は邪竜アパーカレスの眷属には断じてならない!』
『 なっ!? 』
『 うそ!? 』
『 なぜ!? 』
シャロンの返事にアパーカレス、キュイ、キリスは驚き戸惑った!
身体は完全にドラゴニュート化しているのに、シャロンはノーを突き付けたのだ!
『そんなバカな!ならば今一度、
アパーカレスの胸にある黒魔石が怪しく黒彩を放ち揺らぐ!
― ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!
『うくっ……つつ……』
シャロンはふいに眩暈に襲われ振らついた。
『さあシャロン、もう一度だ。今度は間違うな!おまえは我にとって特別な眷属なのだぞ』
『特別な眷属……』
アパーカレスの声が、シャロンの脳髄深くまで浸透する。
『そうだ、私はアパーカレス様の特別な眷属。間違ってはいけないわ』
そしてアパーカレスが望む返事を、そしてアパーカレスの喜ぶ返事をしようと口を開いた。
だが出てきた言葉は――
『私はケンツの女よ!そしてケンツは私の男!私は二度とケンツを裏切らない!』
シャロンは凛とした声で再びアパーカレスにノーを突き付けたのだった!
「シャ、シャロン!!!!」
うおおおおおおお!!!
シャロンは自分を保っている!
洗脳だか魅了だかしらないが、シャロンは屈しなかった!
しかも今のは、初めてシャロンに告白したときの返事と同じだったぜ!
シャロンの気持ちは微塵も揺らいじゃいねえ!
そしてシャロンは俺の傍に付いた。
「シャロン、大丈夫なのか!?」
『あんまり大丈夫じゃないかな。油断すると頭の中をぐちゃぐちゃに書き換えられそうよ。でも洗脳・魅了も三度目ともなれば、簡単には堕ちないわ。洗脳されることが分かっているのなら耐えて見せる!だけど……』
シャロンは少し苦しそうに、しかし何故か悲しそうな顔をした。
「シャロン?」
『だけど……ケンツ、この邪竜は存在が悲しすぎる』
存在が悲しすぎる?
どういう意味だ?
『眷属になりかけた時、この邪竜の記憶が見えたの。戦いが終わったら話すわ。あと、こんな姿になっちゃってごめんなさい』
アパーカレスの記憶か。
シャロンの様子だと何やら訳ありっぽいが……
容姿の事は気にするな。俺が必ず元に戻してやる!
『ケンツ、シャロン、残念だわ。私達、いい家族になれると思っていたのに』
『バークを葬る?そんな事、絶対させないからね!』
キュイとキリスが心底残念そうな顔をする。そして改めて戦う姿勢をとった。
『我に牙を剥くのか。残念だシャロン。せめて苦しまずに逝かせてやろう』
アパーカレスも残念そうにシャロンに別れの言葉を告げた。
『断じてお断りよ。皆のおかげで生き返ったこの命、易々と失うわけにはいかないの』
シャロンは武闘家らしく気合を入れた構えをとり、アパーカレスを見据えた。
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