122 第四十三話 決戦!ケンツvsアパーカレス 05 【反撃】


Sideケンツ




「なんということだ、まったくちからがはいらない。これはもうだめだ、ころされてしまう」



力が抜け狼狽する俺の様子を見て、アパーカレスは目を細めて勝利を確信した。



『愚かなりケンツ。素直に我の眷属になっていればよいものを……』



アパーカレスの魔素の大剣がバチバチと黒きいかづちを纏い、さらに禍々しく変形した。


その魔素の大剣をアパーカレスは高々と振り上げる。



『我に盾突いた罪は重いぞ。だが我は慈悲深くもあるのだ。シャロンは我のきさきとして大切に娶るゆえ、おまえは安心して冥界に逝くがよい!』



そう言い放つと、アパーカレスは口元を歪めて魔素の剣を振り下ろした。



― ブォッ!



「うひぃ!」



俺は無様にもゴロゴロと転がって斬撃を躱した。



『む?まだ動けるのか。ならばもう一度……イビルデバフ邪竜の呪弱化!』



―ズオッ!!!!



またしても俺の身体が黒き波動に飲み込まれる!



「うわああああああああ、もうからだがうごかない。こんどこそもうだめだあああ」



俺はガタガタと震えながら絶望的な顔をした。



『さあ、今度こそ死ね!』



― ザンッ!



「どひゃあ!」



間一髪!


俺はまたしても器用に転がり斬撃から逃れる。



『往生際の悪い奴め、イビルデバフ邪竜の呪弱化!』



―ズオッ!!!!



またまたしても俺の身体が黒き波動に飲み込まれる!



『今度こそ!』



― ザンッ!



「ひょええええ!」



奇声を上げて、俺はまたしても斬撃を避けた。



『なんだ?効き方が甘いのか?ならば…………

 イビルデバフ邪竜の呪弱化

 イビルデバフ邪竜の呪弱化

 イビルデバフ邪竜の呪弱化

 イビルデバフ邪竜の呪弱化

 イビルデバフ邪竜の呪弱化!』



怒涛のイビルデバフ邪竜の呪弱化ラッシュ!


その全てが外すことなく俺にぶつけられた!



「わああああ、もうあかんぼうよりもよわくなっちまったぞ~~」


『はぁはぁぜぇぜぇ……ふふふ、ははは!そうであろうそうであろう!では今度こそさらばだ!』



― シュバッ!


― ガキンッ!ギュリリリリリリィ……



『なん……だと!?』



だがしかし!


今度はアパーカレスの斬撃をラーズソード滅ぼしの剣でガッチリと受け止めた!


何度も何度もイビルデバフ邪竜の呪弱化受けたにもかかわらず、俺は弱体化していなかったのだ!



『なんだ、どういうことだ!?』


「へへへ、すまねえなぁ。どうも俺にはナンチャラデバフとか言うのは効かないみたいだぜ、おらっ!」



― ザンッ!



鍔迫り合いの状態から刃を流し、そのまま袈裟斬り!



― ドバッ! ブシュウッ!



やつの青黒い竜鱗的な鎧スケールメイルがパックリと裂け、そこから鮮血がほと走る!


しかしその傷は、邪竜の超回復能力によりすぐ塞がっていく。



『おのれ!ならばこれならどうだ、邪竜魔術 アビスフレイム奈落の炎!』



― 突如、俺の足元から黒炎が噴き出し全身を包み込んだ!



「うぎゃああああああああああああああああああああああああああ!」


『どうだ、奈落アビスより召喚した呪われた黒き炎の威力は!骨の髄まで呪われながら滅死するがいい!めははははは!』



アパーカレスは今度こそ俺を殺せたと思い高笑いする。


が――



― シュルシュル……ポンッ!



「ああああああ!!!!!!……て、全然平気だったりして」



アビスフレイム奈落の炎は急速に消え失せ、俺は髪の毛一本焼かれてはいない。



『そんなバカな!?人間にあの黒き炎が耐えられるわけがない!本当に人間なのか!?』



明らかに混乱するアパーカレス。


もしや目の前の男は人間ではないのかと怪しむ始末だ。



「ほれほれ、もっと放ってみろよ。ご自慢の邪竜魔術トカゲの手品とやらおよぉ!」



『おのれええええええぇぇ!調子に乗りおってぇぇぇええええええ!!!!』



トカゲ扱いされアパーカレスは激昂!


過去においても現在においても、人間にバカにされた事など一度もない!


俺のやっすい挑発に、アパーカレスは本気で激怒。今度は斬撃と邪竜魔術を交えながら襲ってきた!



『でええええええええええええい!』



― ザンッ! ガキッ!ギュルリンッ!



「見えているぞ!」



刃を合わせ、即座に受け流し、今度はこちらから魔法攻撃!



テラボルト上級雷撃!」



― バリバリバリッ、ドッシャアアアアアアアアアアアアアアン!



テラボルト上級雷撃をヤツの目の前に落し牽制!



『ぐおおお!なぜおまえが雷撃魔法を!?』



今のはソーサリーストック無限魔法貯蔵に貯めてあったアリサの雷撃魔法だぜ。


こいつは聖属の魔力は帯びちゃいねえ(アリサは聖属・雷属・樹属(植物属性)の三つの系統の魔法を使いこなすことができる)。


そしてヤツが怯んでいるところに踏み込み袈裟斬り!



この辺・・・かああああああああああああああああああ!!!」



― ザンッ! ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!



『うおぉっ!?』



今の斬撃に過剰な反応を示すアパーカレス。


竜鱗的な鎧スケールメイルが裂け、そこから血がにじむ。


ほう。あの慌てよう、今のはかなり近かったみたいだな。



『おのれ人間めぇえええええええええええええええええええ!』



何かに触れたのか、アパーカレスはとんでもなく激昂し怒気を膨らませた!



『邪竜魔術、

 カースイグロック呪怨の奏

 アキュラケウス破滅の暴風

 アビス奈落エクスプローションの爆裂

 バニングマグナライズ灼熱の溶岩

 ズオイダルベグマ崩壊の乱心

 ドラゴンパペット竜族の傀儡

 ドラゴニアメモリー竜族の怨殺!』



― スオゴラアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!



見たことも聞いたことも無い邪竜魔術の飽和攻撃!


しかもその一つ一つが確実に絶殺級の代物だ。


こんなもん、掠るだけでも身体がただれそうだぜ。



「だが!」



しかし俺は身体を大の字にして全身で受けた!


と言うか、こんなえげつない魔法、避ければ後ろの観客達が巻き添えになっちまう。



「きやがれ、おらあああああああああああああああ!!!!!!」



― ドバババババーン!



アパーカレスの放った邪竜魔術は全弾命中!


しかしヤツの放った魔法は、俺に触れるや否やその全てが瞬時に消滅!


そして俺は相変わらずケロッとしている。



「お返しだぜ! アビス奈落エクスプローションの爆裂!!」



俺はたった今アパーカレスから直撃を受けた邪竜魔法を放った!


空間が揺らぎ、アビス奈落と繋がったホールから、呪性を帯びたとてつもない衝撃波がアパーカレスに襲い掛かる!



― ボゴワアアアアアアアアアアアアアアッ!



『 !? 』



直撃、アパーカレスはかなりのダメージを帯びた!



『バカな、それは我の邪竜魔法ではないか!?』



一瞬何が起きたかわからず軽くパニックになるアパーカレス。


しかし、魔法による攻撃は何かマズいと感じ取ったようだ。



『ならば、フレイムブレス邪竜の燃える息吹!』



アパーカレスは口から炎をはいた!



― ゴオオオオオオオオオオオオ!!!



「む、これはダメなやつだぜ!」



真っすぐ伸びて来る炎の息を、俺は必死で躱した!



「あち、あちちちちち!」


『避けただと?もしや……… フリーズブレス凍える息吹!』



― ブオオオオオオオオオオオ!!!



今度は極冷の邪竜のブレス!


これも俺は必死で避ける!



「冗談じゃねえ、こんなもんまともに受けたら瞬間冷凍されちまう。ストライバー絶対障壁!」



― パキーンッ!



物理・魔法を完璧に防ぐ聖属の魔法障壁が広がり、邪竜のブレスを跳ね返した!



『やはりブレス攻撃は受けようとはせぬか!そしてそのスキルは500年前に我を苦しめた、あの忌々しい人間の賢者バンバラの……

おい人間ケンツ、きさまソーサリーストック無限魔法貯蔵をどうやって獲得した!?』



この野郎、俺のソーサリーストック無限魔法貯蔵に気付きやがったか。



「さあてな。知りたかったら俺を倒してから、ジックリと聞きやがれ!」


『この人間があああああああああああああああああああああ!!!!!』



シャフン創造ニトロブラスト大爆破!」



― ヂュドオオオオオオオオオオオオオオオン!



一瞬火球が発生!したかと思うと瞬時に衝撃波となりアパーカレスを襲った!



『ぐおおおおおお!今のはなんだ!?』



今のはソーサリーストック無限魔法貯蔵にあるミヤビから貰った魔法だぜ。


液状の爆薬を瞬時に創造して爆破!その衝撃波を任意の方向にぶっぱなす魔法だ。


今の衝撃波でアパーカレスの竜鱗的な鎧スケールメイルが吹き飛び、やつの黒々とした胸板が露にされた。


そしてその胸元には、【大きな黒い魔石】が埋め込まれているのが見える!



「あれがユリウスの言っていた黒魔石か!」



そしてあれがアパーカレスの本体!?


あれを分離するか破壊すれば、バークを助けられるかもしれねぇ!


よーし、畳みかけるぜ!



ホーリーフラッシュ聖なる閃光!」



― カッ!ビカッ!!!



『むおっ!目があああ!?』



突然の閃光に怯むアパーカレス!


アリサの聖属魔法だが、こいつはただの閃光だ。アパーカレスの糧にはならない。



サンダースタビング破牙の雷突!」



― バリバリバリッ!



そこから雷を伴う高速の剣突き!


狙うはもちろんヤツの胸元に埋め込まれた黒魔石!



「勝った!」



ヤツの黒魔石を破壊してジ・エーンドだぜ!


ていうか、ちゃんとアパーカレスだけ死ぬよな?


バークも一緒に死んだりしないよな?



しかし俺の心配は残念な方向に杞憂で終わった。


なぜなら――



アイスウォール氷の壁!』



― ビッキーンッ!



「うぉ、なんだ一体!?」



突如俺とアパーカレスの間に氷の障壁が現れ、俺の攻撃は阻まれた!


しかも続いて――



『はああああああああああ!!!!!』



直上よりが戦斧せんぷが迫る!



邪斧怒号じゃせんどごう殲滅破せんめつは!』



― ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアン!



「うおおおおおおおおおおおおお!?」



― ガッキャアアアアアアアアアアアアアアン!ギュリンッ!



咄嗟に剣で受けて、ベクトルを変え力を逸らし間合を取る。


そして状況を確認して驚いた!



「なんだ一体…………な、おまえは!?」



新たに俺の前に現れたのは…………サブドラゴニュート亜竜人化した魔術師キリスと戦士キュイ!


そしてキリスに抱えられグッタリとしているシャロンだった。



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