121 第四十三話 決戦!ケンツvsアパーカレス 04 【場外】
『我に盾突いた罪は重いぞ。だが我は慈悲深くもあるのだ。シャロンは我の
そう言い放つと、アパーカレスは口元を歪めて魔素の剣を振り下ろした!
― ブォッ!
「 ! 」
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場面はかわり、ケンツとアパーカレスが激闘を演じている裏で、他の仲間達は――
◆観客席
『ギャオオオオオオオオオオオオオ!!!』
「次から次へとしつこい!」
― ザンッ!
『ギャピイイイイイイイイイイ!!!!』
アリサは、次から次へと湧いて出てくる復活竜に少々手を焼いていた。
今、アリサとミヤビが相手をしているのは、俊敏な小型復活竜【ラプトルドラゴン】の群れだ。
最初の大型復活竜四体はアリサとミヤビが速攻で倒したが、入れ替わるようにラプトルドラゴンが沸いて出てきたのだ。
俊敏で頭の良いラプトルドラゴンは、アリサとミヤビを囲うようにして視覚外から攻撃してくる。
それで傷つけられる二人では無いが、どうしても倒す手間がかかってしまう。
「一気に殲滅できないのが面倒ね、観客達を巻き添えにしちゃう」
「アリサさん、頑張って個別撃破していきましょう!」
元々過密状態だった観客席には、まだまだ大勢の観客達が残っている。
大技で殲滅というわけにはいかない。
それでもアリサとミヤビは敵の数を減らしていった。
上空では翼竜型の復活竜が大挙して舞い、召喚勇者ヒロキと召喚聖女アカリが飛空魔法を駆使して応戦している。
そのさらに上空で、ユリウスの放った巨大な炎が走ったのが見えた。
*
Sideユリウス
ユリウスの交戦相手――それは邪竜アパーカレスを創造した邪竜族竜人ダゴン!
ダゴンはアパーカレスの復活とともに邪竜の力が流れ込み、手の付けられない程の巨大な力を手にしていた。
だが、そのダゴンを相手にユリウスは互角の戦いを演じていた。
『どけい人間!おまえなどに構っている場合ではない!』
ダゴンは、下方闘場で戦っている邪竜アパーカレスの戦況が思わしくない事に気をもんでいた。
実は、アパーカレスは決して万全の状態では無い。
バークの身体を乗っ取り復活に成功したとは言え、復活したばかりのアパーカレスには全盛期の凄まじい力を取り戻しているわけでは無かったのだ。
そのケンツを相手にするのは、今のアパーカレスには少し厳しかったようだ。
「そうはいかんな。キサマとアパーカレスにどんな事情があるのかは知らんが、おまえ達の好きにさせるわけには行かない!」
『事情……事情だと!?この残忍で歪んだ心しか持たぬ罪深き人間めぇ!』
ユリウスは、目の前で猛っている竜人から激しい怨念を感じた。
「やはり何か訳ありか。やるせないぜ」
正義というものは、結局立ち位置によって変わるものだ。
邪悪としか思えない邪竜アパーカレスも、目の前の竜人ダゴンも、もしかしたら自分達の掲げる正義の名の下に女神の使徒と人間を抹殺しようとしているのかもしれない。
そもそも、竜族が人間を襲うなど――
ユリウスは一瞬そんな事が頭に過ぎったが、意識はすぐに戦いに戻した。
「
― ヒュイイイイイイイイイイイイン……
ユリウスの身体はアリサ同様に白銀の鎧に包まれ、手には装飾が施された聖剣が握られる!
『それはまさか……聖剣なのか!?』
驚き目を見開くダゴンを無視して、ユリウスは聖剣を横一文字に一閃!
「 炎 獄 流 星 斬 ! 」
― ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウ!
巨大な炎の斬撃波が空を熱く走った!
*
― ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウ!
「きゃ、なに!?」
アリサは突然の熱波を感じて空を仰いだ。
上空300メートルほどの高さで、巨大な炎の斬撃波が走っている!
「あれは……まさか!?」
アリサは炎の斬撃波を目の当たりにして驚いた。
なぜなら、その炎の斬撃波は自分のよく知るものだったからだ!
「なんでユリウスさんがあの剣技を!?」
またしても様々な想いが沸々と湧き出てしまい困惑するアリサ。
「ユリウスさんがユーシスでないことはさっき確認したばかりなのに……なのになんで!?」
― ザンッ!ズバッ!
『キシャアアアアアアアアア!!!!』
『ギャオオオオオオオオオオ!!!!』
その困惑を片端から復活竜にぶつけていく!
「アリサさん、これだけ数が減れば私ひとりでも大丈夫です。早く行ってください!」
「ありがとう、お願いします!」
ラミア形態のミヤビに促され、アリサはユリウスの戦闘空域へと舞い上がった。
*
◆観客席
Sideシャロン
『グルルルルルル……』
『キシャアアアアアアアアアア!』
「た、助けてくれええええ!」
「ひいいい、彼女が化物にぃぃぃぃ!」
邪竜の因子に目覚めた一部の観客は、
これには冒険者達とハンターが応戦し、リットールの青年会や自警団が避難誘導を手伝っている。
すでに観客防御用の防御結界は無く、セフィース系神官達が重傷者の手当に当たっていた。(テラリューム系神官達は早々に
「えい、とう!」
― バキッ!メキョッ!
『グギャアアアアア!』
『ブロオオオオォォ!』
シャロンは
シャロンの近くでは、武闘大会参加者の【魔術師ミレル】と【魔法剣士アレル】も観客達を守って戦っている。
「ミレルさん、アレルさん、その人たち元は人間です。絶対に殺さないで下さい!」
手加減しすぎてフラストレーションの溜まっているミレルとアレルに対して、シャロンは注意を促した。
「くっ、わかっているけどさ」
「こいつら中途半端に強いから力加減が難しいぜ」
ミレルは射程の短い睡眠魔法や時空魔法などで、アレルは魔法剣技を使わず剣の腹で叩いてチマチマと敵を捌いていく。
「その気になればサブドラゴニュートなど束で瞬殺できるのに!」
「まったくだ。面倒くせえ!」
だが、そんな不満に応えるかのように、空から二つの影が舞い降りた。
『ふーん、思いっきり戦いたいのね?』
『だったら私達が相手してあげるわ』
そう言ってミレルとアレルそしてシャロンの前に、魔術師キリスと戦士キュイが現れた。
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次回はケンツの話に戻ります。
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