118 第四十三話 決戦!ケンツvsアパーカレス 01 【邪竜復活・絶望の戦い】


Side ケンツ



「なんだ?一体何が起こっている!?」



ふっ飛ばされてぶっ倒れていたバークが、なんとムクリと起き上がりやがった!


しかも全身から邪悪なオーラを吹き出し、黒かった皮膚はさらに黒く、身体もなんだか大きくなったように見える!


バークはそのままゆっくりと立ち上がり、そのまま物凄い勢いで戻って来やがった。



『ドラゴニックウォール』



― ボヒュッ!



突如、神官が張った結界のさらに内側に、黒々とした結界が張られた!



『邪魔をされたくないので結界を張らしてもらったぞ。久しぶりだな、噛ませ犬・・・・の人間、ケンツよ』


「!?」



知っている、俺はこいつを知っているぞ!


でかい図体、真っ黒な皮膚、青黒い鱗鎧、爬虫類的な金色の目、禍々しいどす黒いオーラ……


こいつは以前俺に戦いを挑んで来た男だ!


だが一体どういうワケだ?


なぜバークがこんな姿に?


もしかして、バークには変身能力があるのか!?



「おい、おまえバークなのか?その姿はどう……おわっ!?」



― ザンッ!



この野郎、いきなり切りかかって来やがった



『ふふふ、矮小な咬ませ犬など取るに足らない相手だが、(バークとの)約束があるからな。少し遊んでやろう』



なんだ?何を言っている?


なんかキャラが変わっちまってるぞ!?


バークじゃないのか?



「おまえはバークなのかと聞いている!イエスかノーで答えやがれ!」



まずはこの点をはっきりさせないと。


バークならこのまま試合続行だ。



『イエスかノー?その選択肢なら、答えはイエスでもありノーでもある』




この野郎、謎々か?わけのわからない回答を!


あれか、ピンチになると変身して人格が変わるとか、二重人格とかそんな感じのやつか!


だとしたら、前に遭遇したときも、こんな感じで変身して召喚勇者相手を一捻りにしたってわけか!?



「バークめ、面倒くさい奥の手を……しかしまずいな」



こいつがバークであろうとなかろうと、とんでもない強敵であることは間違いないぜ。


以前戦った時の感触では、恐らく今の俺よりも強い!



『どうした、戦わぬと言うのであれば、我の不戦勝だな。シャロンは頂いていくぞ!そしてアリサもな』


「 !? 」



バーク(?)がいやらしい笑みを浮かべ挑発しやがる。


て、そうだった!


前に遭遇した時、シャロンを眷属しもべにして、アリサもしゃぶりつくすとかとんでもない事を言っていたんだ!


それに、こいつがバークだと言う以上、引き下がれねえ。


絶対に倒してシャロンを取り返さないと!


俺はちらりと主審を見た。



「し、試合続行!」



ちっ、主審もこの野郎をバークと認めやがった。


腹を括るしかないぜ!



「ヒール連続発動!過剰身体強化オーバードライブ 7.5倍!」



―ボウッ!



俺の身体はオーラを噴出し、キラキラと銀色の粒子に包まれた!


魔力も残り少なく、残された時間は僅かだ。速攻で決めるぜ!



「おらアアアアアアアアアアアア!!!!」



― ドンッ!



そして弾かれる様にしてバーク(?)に突進!



― ガキンッ!ギュリリリリリリィ……ザンッ!



真向から刃を合され、鍔迫り合い。


そして刃を流してからの斬撃!



『ふんっ!』



― ガキンッ!



「うぉっ!?」



まるで分厚い鉛の塊に払いのけられたような重厚な衝撃!


俺の斬撃はいとも容易く弾き飛ばされた。



「だったら、なます斬りにしてやるぜ!

縮地!縮地!縮地!縮地!縮地!縮地!縮地!縮地!!!!」



― バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!

バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!



バーク(?)の周りに4人8人と俺の残像が現れ、それらが一斉に斬りかかる!



― ザンッ!ズバッ!シュバッ!ドシュッ!ガッ!ドバッ!シュビッ!シュザンッ!



『ふふんっ』



― ガッキャアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!



「おぐっ!?」



しかし縮地残像斬撃は全てバーク(?)の剣に防がれてしまった。


やはり俺よりも数段強さは上か!



『ふん、つまらん。所詮咬ませ犬などこの程度か。ほら続けて打ってこい』



― ブチッ!



この野郎、俺が技を繰り出すまで待つってか!?



「なめんなあああああああああああああああああ!


 魔法剣、フローズンスラッシュ極冷の凍斬

 魔法剣、バーニングフォース爆熱の炎斬

 魔法剣、フラッシュセイバー煌めきの光斬

 魔法剣、グラビトンバッシュ重力子の圧斬

 魔法剣、サンダーブレイク破壊の雷斬!」



― ドギャラッドッシャアアアアアアアアアアアアアアアン!



普段は絶対に使えない、十分に溜めてからの複合魔法剣技だ!


これでダメなら……



『むんっ!でええええええええい!』



― ズバッ!ボッシュウウウウウウ!



しかしバーク(?)は、俺の複合魔法剣技を一刀両断にして粉砕しやがった!



「嘘だろ、今の俺が放てる最強の魔法剣技だぞ!?」



冗談じゃねえ、勝負にすらなっていねえぞ。


基本魔法剣技縛りだってのに、こんな化物どうやって相手すりゃいいんだよ!



『今のは中々良かったぞ。敬意の意味を込めて、〈咬ませ犬〉扱いするのは止めてやろうではないか』



そんな事言われても、あんまり嬉しくないぜ。


こうなりゃ俺としちゃ不本意な戦術だが、ヤツの剣をへし折ってやる。


流石にあの剣は聖剣や魔剣ってことは無いだろう。


ラーズソード《滅ぼしの剣》と刃を交え続ければ、いつかそのうち砕けるはずだぜ。


そうすりゃ戦闘不能扱いで俺の勝ちだ!



「いくぞ、おらああああああああああああああ!!!!」



― ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!



「縮地!縮地!縮地!縮地!!」



― バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!


― ガキッ!ガキッ!ガッ!ガッキャアアアアアン!



どんな体勢からでもいい、とにかく手数だ!


手数の勢いでヤツの剣を粉砕してやる!



「おらおらおらおら!」



バーク(?)は余裕かつ最小限の動きで、刃と刃を合せ攻撃を防ぐ。


この野郎、腹立つな。全然余裕かよ!


だがいいぞ、そのまま余裕こいてやがれ。


今にその剣が砕けるぜ!


しかしバーク(?)は涼しい顔をして言った。



『おい、人間ケンツ。おまえの浅く退屈な考えなどお見通しだぞ?』


「な、なんだと?」


『おまえは剣と剣との衝撃インパクトで、金属疲労を起こさせて我の剣を砕くツモリだろうが、よく見るのだな』


「は?」



― ガキッ!ガキッ!ガキンッ!



俺はヤツの剣に衝撃を与え続けたが、まるで砕ける様子が無い!?



「な、どういうことだ!?」


『愚か者め、よく見ろと言っている』


「こ、これは!?」



バーク(?)の漆黒の剣は、衝撃で亀裂が入った箇所が自己修復・自己再生している!?



「いや違う、これは……魔素か!」


『ほう、正解だぞ。この剣は空気中の魔素を固定化して形にした剣だ。欠けようがヒビが入ろうが、魔素を取り込み瞬時に修復する!』



なんだよそりゃ!?


じゃあ剣を砕くなんて絶対に無理じゃん!



「この野郎、そんなチートな剣を使いやがって!」


『お互い様だろう、おまえの剣こそ聖剣や魔剣並の頑丈さではないか』



くっそー、時間と体力と魔力の無駄だったか!


もう剣技で勝ち切る手がないぜ。


いや、それ以前に俺の魔力が尽きちまう。


こんな事なら総合格闘技の部にエントリーするんだった!


そうすりゃまだ少しやれたのに!


それにしてもコイツは本当になんなんだ?


見た目はもちろん人格とか、どう考えてもバークじゃねえよな?



『くくく、手持ちの技は出しつくしたか。それではそろそろ終わりにしてやろう』



― ブシュウッ!



激しく黒きオーラを放出し姿が揺らぐバーク(?)!


クソ、反撃に来やがるか!



― フッ



「 え? 」


『遅い』



― ズムッ!



「げはっ!?」



一瞬バーク(?)の姿が揺らいだかと思った瞬間、ヤツの拳が俺のどてっぱらを抉った!



「うぎゃあああああああああああああ!!!!!!!」



重い一撃なんてもんじゃねえ、致命傷の一撃だ。


腹が裂けこそしなかったが、内臓をグッチャグチャにされちまったぜ。



「ぐふっ……ぶろああああああああああああ!!」



腹の中の血が逆流して口や鼻から吹き出した。


蹲る事すら出来ず、俺は身体を“く”の字にして地に倒れた。


それにしても今のは何だ?


縮地のような身技的瞬間移動術とは違ったぞ!?



『くくく、生意気にも耐えたか。しかし臓腑は至る所で破裂したようだな』



バカ野郎、耐えてねーだろ!


こ、こりゃ死ぬぞ!



― ドカッ!ボゴッ!ベキッ!



それからバーク(?)の一方的な殴る蹴るの暴力劇が始まった。



「ぐぶっ、この野郎……いつでも勝敗を付けられるクセに遊びやがって、がはっ!」



蹴られ殴られる度に臓腑が弾け、骨は折れ、肉が破断されていく!


俺をクラゲにするつもりかよ!


鼠をいたぶる猫でもここまでヒデーことはしないぜ!



『ふん、そろそろ飽きてきたな。ではそろそろ終わりにしてやろう』



ちくしょう、まさかの負けかよ!


シャロンすまん。


試合が終わったらすぐ第二案プランBを発動するからな!



『まずは貴様の首を斬り落とし、それを持って500年前に受けた恨み、復讐劇の始まりとしようぞ!』


「500……年前?……てめえ……一体何……を……言って……やが……る……!?」



500年……なんか引っかかるキーワードだぜ。


いや、それよりも首を斬り落とす!?


こいつ、俺を殺す気か!



「てめえ……正気か……俺を殺せば……反則負けに……なるぞ……グフッ……」


『関係ない。おまえ達人間の遊びに付き合ってやるのはここまでだ。さあ死ね!』



バーク(?)の長剣は、周囲の魔素を取り込み成長させ、見る者をギョッとさせる禍々しい大剣へと変貌していた。


その大剣が俺の首目掛けて振り下ろされようとする!



「ちくしょう……!」



そう覚悟した刹那!



― グワッキャアアアアアアアアアン!!!!!



突如バーク(?)が張った結界の一部が破壊され穴が開き、濛々とするその穴を潜って三人の人影が現れた。




『む、なんだ?』



剣を振り下ろしかけていたバーク(?)の手がピタリと止まる。



「ケンツ、無事か!?」

「ケンツさん、そいつはバークさんじゃないわ!」

「その男こそが、邪竜アパーカレスよ!」



その結界の穴を潜ってきたのはユリウス!アリサ!ミヤビ!


三人は異変を感じ乱入してきたのだ。



た、助かったぜ。


危なくシャロンを未亡人にするところだった。


いやそれよりも、今なんて言った!?



「こいつが……邪竜……アパーカレス……だと……!?」

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