117 第四十二話 ケンツvsバーク R2 05 「変異」
「ふふふ、ケンツさん。この黒き肌は
― ドンッ!
バークはミチミチと黒き力を漲らせ、弾かれたように突撃してきた!
「
― バッシュッ!
とんでもない強力なバフに加え脚力への追加強化!
― ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!
辛うじて反応して剣を合わせるも、その一撃一撃がとんでもなく速く重い!
「うぉっ!この速度差はヤバイ!」
またしてもパワーバランスは崩れ、バークの一方的な攻撃となる。
そしてこの速度差は本当にやばい、これだけ差があるとバークは“タメ”を練ることが出来る!
「魔法剣、
― バシュッ!シュギュウウウウウン!
ほら来やがった!
まずはタメが少なくても済む魔法剣技、
鋭い風の
「なんのおおおおおおおお!!!!」
― ザンッ!
一刀両断、風の刃をかろうじて砕く!
しかしバークは次から次へと魔法剣技を放つ!
「魔法剣、
魔法剣、
魔法剣、
― ヒュゥゥ……ピキーーーーーーーーン!
― ゴウ……ゴオオオオオオオオオオオオ!
― ピカッ、シュギイイイイイイイイイイン!
「こ、こんなもの!うぉぉぉおおおおおお!!!」
次々と襲い来る凍斬、炎斬、光斬!
一度この図に嵌ると一歩も動けなくなり、防戦一方となってしまう。
それでも俺は全斬辛うじて防いだ。
「ぐはぁ、はぁ、はぁ、」
「お見事です。まさか
「な、なにが
「当然です。僕は
「バーク、おまえ性格悪くなったよな……」
いや、本当にコイツはバークなのか怪しくなってきたぜ。
こんな陰湿なヤツじゃなかったと思ってたんだけどな。
もしかしてこれが本性のなのか?
「力量差は歴然!さあ、ケンツさん。そろそろ終わりにしましょう!そして舞台から降りて下さい!」
「やだね、おまえが主人公だなんて
「いいでしょう、その意識を刈り取って決着として…………なんだ!?」
バークが俺の異変に気付く。
ボウッ!っと一瞬オーラを噴出すると同時に、俺の身体は銀色の粒子に包まれた!
「ヒール連続発動!
― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
これまでの【
しかしこの
これが俺が思いつた対バーク戦の戦技だ!
体内魔力タンクを拡張して、ヒール効果向上の特訓をしたのはこのためだぜ!
ただ欠点として……
「ぐ、ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ!」
― バシッ!ビシッ!
発動中、全神経が塩漬けにされたかのような激痛がずっと続く。
その上、ヒールの連続発動なんて狂気じみた行為は、【大穴の開いたバケツから漏れる水】のように大量の魔力を消費する。
そのため戦闘時間はかなり短く、その間に倒し切らなければ敗北は必至だ!
バーク、時間がないんだ。悪いが全力で行くぞ!
「7.5倍の身体強化!? く、コケ脅しだ!一瞬で勝負を決めてやる!」
「勝負を決めるのはコッチだぜ!今こそシャロンを返してもらう!」
「でやああああああああああああああ!!!!」
「はあああああああああああああああ!!!!」
ここから本当に本気で、お互い全能力を出し切っての戦いに突入!
ついさっきまで余裕の態度だったバークは一変、ピリピリとした真剣な表情で剣を振る!
― キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! ギャリリリリリィ!
「バカな!僕が押されているだと!」
「へ、どうしたい。相当焦ってんじゃないか!」
「咬ませ犬相手に焦ってなどいない!こうなったら大技で!」
「咬ませ犬、咬ませ犬、失礼な野郎だ。いいぜ、大技に付き合ってやらぁ!」
本当なら付き合う必要など無い。
相手の“溜め”の一瞬を狙って斬撃で勝負した方が堅実だ。
だが俺は、『誰の目から見ても本当に強いのはどっちか』を証明させるために、敢えてバークの土俵に乗った!
なあ、バークよ。
もしかしたら、テメーは本当にこの世界の
だがな、シャロンの主人公は俺であり、俺のヒロインはシャロンなんだよ。
そこにテメーが入り込む隙間なんてありゃしねーんだ。
だからこの世界の主人公をやりたいのなら、公園の砂場で一人でやってろってんだ!
さあ、シャロンを返してもらうぜ!
「「
― ガラガラガラ、ドッシャーン!!!!!!!
奇しくも、俺とバークは同じ魔法剣技、
俺の白銀色の雷斬波と、バークの漆黒の雷斬波が、闘場中央で激しくぶつかり合う!
そして……
― バッゴオオオオオオオオオオオオン!
「うわああああああああああああああ!!!」
俺の放った雷斬波は、バークの放った雷斬波を粉砕!
そのまま突き抜けバークに直撃した!
そしてバークは闘場の端まで吹き飛ばされた!
「よっしゃぁ!」
あれを食らって起き上がれるはずが無いぜ!
副審が、大急ぎで遠くに飛ばされたバークの状態を確認に駆けて行く。
だがバークは動く気配は微塵もねぇ。
これは流石に勝っただろう!
「シャロン、やったぜ!俺はバークに勝ったぞ!」
俺は選手用観覧席のシャロンに向かって腕をブンブン回した!
しかしけっこうヤバかったな。
あいつ俺とほとんど同じレベルの強さだった。
俺達は確かに全力を出して試合った。
だけどよぅ……
バークが“もしも相手が自分より強かったら……”と少しでも頭に過ぎっていれば、結果は違っていたかもな。
途中で“自分の方が強い”と思い込み、絶対的自信持った事がおまえの敗因だぜ!
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
確実に勝利したと確信した俺に対し、大歓声が沸き起こった!
『いいぞ、ケンツウウウウウウウウウウウウ!』
『シャロンを見事取り戻したな!』
『おめでとう!恩赦ってことでイジメ返しは勘弁してくれー!』
『ケンツ!ケンツ!ケンツ!ケンツ!』
おおう、みんなありがとう!
て、なに恩赦?勘弁?
よっしゃ、よっしゃ、今の俺は気分がいいぜ!
イジメ返しは十倍返しから三倍返し程度に負けてやろうじゃないか!
さあちょっと小太りの副審、さっさとバークの戦闘不能の確認をしてきやがれ!
だがその大歓声の中で、俺は危険を知らせる声を聴きとった!
「ケンツさん、何やってるの!勝負はまだ終わっていないわ!」
「ケンツ、油断しないで!バークさんはまだ動くわ!」
これは……アリサとシャロンの声か!?
終わっていない?まだ動く?
「いや、さすがにアレを食らって無事でいられるわけないぜ。むしろ生死を確認して、なんならアリサに
ふっ飛ばされてぶっ倒れていたバークが、なんとムクリと起き上がりやがった!
しかも全身から邪悪なオーラを吹き出し、黒かった皮膚はさらに黒く、身体もなんだか大きくなったように見える!
「なんだ?一体何が起こっている!?」
*
Sideバーク
― ガラガラガラ、ドッシャーン!!!!!!!
「うわああああああああああああああ!!!」
― バシンっ!
僕はケンツさんの一撃をくらい、闘場の端まで吹き飛ばされた。
ケンツさんの雷斬波にやられ、全身がビリビリと痺れ指一本動かせない。
「うう、どうしてだ……どうしてこの世界の
(惜しかったなバークよ、残念だがおまえの負けだ。これでシャロンはケンツのモノとなってしまったな)
う、正しい道を歩ませるハズの声がまた……
その声が僕の敗北を告げる。
「うう……シャロンさん…………いやだ……僕はシャロンさんと……人生を……歩むんだ……」
(だがおまえは負けたのだ。シャロンはもう二度と手に入らない)
「いやだ……認めたくない……」
(そんなにシャロンが好きか?大事なのか?)
「好きだ……愛している……失いたくない……」
(ならば後は我に全て
“声”に委ねる?
委ねれば僕は勝てるのか?
しかし、それで勝てたとしても、僕がケンツさんに勝てたことにはならないのではないか?
僕にだってプライドがある。この言葉にはやはり委ねられない。
「それは……ダメだ……。これは僕の……戦い……なんだ……」
(バークよ、たった一度でいい、一度だけ折れるのだ。おまえはこの世界の
「僕とシャロンさんは……
(そうだ。このままではシャロンが不幸になる。プライドを捨てろ。さあ我にその身体を委ねるのだ)
プライドを捨てる……
そうだ、何が大切なのか、何を優先するかを間違えるな。
優先するのは僕のプライドなんかじゃない。
シャロンさんの幸せだ!
シャロンさんをケンツと一緒にさせてはならない!
「わかった……あなたに……この身体を……委ねよう……」
(それでいい。戦いが終わった時、シャロンはおまえの傍にいることだろう。これから一生を共にする
「…………」
僕は胸中からの声に全てを委ね、ゆっくりと目を閉じ意識は闇に堕とした。
それが歪み誤った判断だと気付きもせずに……
*
バークが意識を失うと同時に――
― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
バークの全身から邪悪なオーラが物凄い勢いで吹き出した!
様子を見に近づいてきた副審は、その異様で異常な状況に驚き、慌ててバークと距離を取る。
そしてバークは再び目を開き、ゆっくりと立ち上がった。
だがその姿は、もはやバークにあらず。
瞳はより金色に輝き、しかも不気味な爬虫類的なものに。
身体は二回り以上大きくなり、皮膚はさらに漆黒に染まる。
さらには周囲の魔素を固定化し、青黒い
『ふはははは!ついにバーク自らの意思で、この身体を手放しおった!これでこの身体は完全に我のものだ!』
バークであった者は、狂気じみた笑みを浮かべ歓喜した。
バーク自身の意思による身体移譲の承認と、糧にした三人分の
邪竜アパーカレスは、ついに復活を果たしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます