115 第四十二話 ケンツvsバーク R2 03 「激突」
『それではいざ尋常に……
― バーンっ!
主審のファイトコールと共に銅鑼の音が響き渡り、歓声がより大きくどよめいた!
「いくぞ、バーク!」
「シャロンさんは渡さない!」
―バシュッ!バシュッ! ガキンッ!ギュリリリリッリイィィィィィ!
「
「アルティメットバフ!」
― ボシュッ!ボシュッ!
まずは軽く剣を交えてから、互いに身体を強化しての激突!
「おらああああああああああ!!!!縮地!縮地!縮地!縮地!」
― バシュッ!バシュッ!バシュッ!
そして身体強化3.5倍からの連続高速移動による撹乱だぜ!
「どうだバーク、このスピードに対応できるか!」
俺の残像がそこかしこに現れては消え、まるで四方からの同時攻撃のように斬撃がバークを襲う!
しかし、
― ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキンッ!
そのすべてをバークは反応してはじき返す!
「 !? 」
「舐めてもらっちゃ困る!
― グオッ!
バークから発せられた莫大な“気”が剣に込められた!?
― バギュッ!ギンッ!
「な、なんだ?バークの剣質が突然重く!?」
これは、まさか身体ではなく剣の力を強化する技か!?
いや違う、剣だけじゃねえ!
「
― バシュッ!
「うぉっ、早い!?」
まるで縮地のような高速移動!
身体・物質に対して、部分的に過剰な強化をかけるバフか!?
バークめ、なんて技を身に付けてやがる!
― バシュッ!
― バシュッ!
そのまま俺達の戦いは超高速領域同士の戦いに!
「この野郎、俺の縮地と同等かよ!」
「同等?勘違いしちゃ困るな。
― ビシュッ! ザンッ!
「っ――――!?」
こ、この野郎、さらに高速移動が過激になりやがった!
一瞬目が追い付けずに斬られそうになったぜ。
高速領域での均衡は破れ、今やバークに押されている。
『バークは必ず縮地に対処してくるはずだ。もしかすると縮地を体得してくるかもしれん』
『ケンツさん、自分の得意技を対戦相手がいきなり使うと対応しにくいものなんです。その辺りの経験も積んでおきましょう』
そんな教授してくれたが、まさにその通りだぜ!
その手の特訓をしていなかったら、初撃で大ダメージを受けていたかもしれねえな。
― ブンッ! ザンッ! ガキンッ!
「ケンツさん、いつまでそのまま何ですか?」
「あ?テメェ、何を言って……っっっ」
「二番煎じは食らいませんよ。ワザと遅いスピードに目を慣らし、緩急をつけて攻める気なんでしょ?」
「ぐっ………」
ちぇっ、バレてやがんの。
この手は二級昇級試験の時に使ったからなぁ。
だがよう、それを言うなら……
「おまえだって力を抑えながら戦っているじゃねーか。人のこと言えるのかよ!」
「あれ、バレてましたか。意趣返しのツモリだったんだけど……
それじゃ、アルティメットバフ
― ボシュッ!
バークのパワーとスピードが、さらに増大し凶斬が迫る!
― ガキャッ!ギュリリリリッリイィィィィィ!
「ぐぬっ!」
受け流すラーズソードからバチバチと火花が飛んだ!
こいつ昇級試験の時の事、いまだに根に持ってやがったか!
それにしても、この余裕な表情はマズいな。まだまだ序の口って顔だ。
さっきからずっと俺の力を計ってやがる。
やはり召喚勇者を倒した時の【必死の力】を基準にしてやがるんだな。
身体強化3.5倍程度じゃ眉一つ動かさねー。
なら!
「
― ボシュッ!
一時は召喚勇者を追い詰めた強化倍数だ!
しかも今は素の力自体が、脳筋コンビの忌まわしい特訓により、さらにパワーアップしてるからな!
召喚勇者を倒した時の【必死の力】には届かないまでも、パワー・スピードはかなりのものだぜ!
「むおっ!?」
それまで表情を出さなかったバークが、ここで初めて眉間にしわを寄せた!
バークよ、本当に緩急をつけた攻撃に対応出来るか試してやるぜ!
「いくぜバーク!
雷を纏った鋭い突きが、バークの喉元を穿つ!
―バリバリバリ、ガッ!!!
「ふんっ!」
しかしバークはこれを華麗なバックステップでギリギリ躱す。
だがこれで終わりじゃない!
剣に込められた雷は、ほぼゼロ距離のバークに襲いかかる!
「爆ぜろ!
― バリバリバリ、ズキューーーン!
これで牽制してからの魔法剣、
「想定済みだ!」
― バチーーーーーーーーーン!!!
バークの野郎、剣先から放たれた
しかも、今度は俺自身が体を伸ばしたスキだらけな体形になる。
しかーし!
「へっ、今通用しない事はこちらも想定済みだぜ!」
やはり今のバークに緩急を付けた攻撃は通じねえらしいな。
だが全く違うベクトルからの攻撃はどうかな?
さあバーク!俺の一撃を受けてみろ!
― ギュンッ!
伸びきった上半身から深い踏み込みで一気にバークの懐へ!
しかしその距離は剣士の間合ではなく、格闘家の打ち合いの間合!
バークよ、
剣一辺倒のおまえに対応できるかな?
「食らえ!必殺のボディブロー!」
― ズムッ!
低姿勢から、俺の拳はバークの肝臓へ深々とめり込んだ!
――――はずだった。
「なっ、固い!?」
バークの脇腹は、
ダメージは微塵も与えられない!
「それくらい想定済みですよ。それ、
「!?」
今度はバークの右拳の強襲!
クソ、躱すのが間に合わねえ!
一発だけ貰ってやるぜ!
― グオッ! バキャリッ!
俺のテンプルに拳が突き刺さる!
瞬間、首を大きく回しダメージを緩和!
― バシッ!
「うぎぃぃぃ……」
それでも身体ごと地面に叩きつけられた!
だがこの距離でこれはマズイ!
「勝機!」
案の定バークが剣を振り上げた!
このまま喉元にピタリと剣先を突き付けられれば、その瞬間に俺の負けがコールされる!
― バシュッ!
当然容赦なく振り抜かれるバークの剣!
そして無情な主審の試合終了のコール!
「それまで、勝者バーク!………………い、いや!?」
戸惑う主審。
誰がどう見てもバークの勝利は一目瞭然のハズだった。
しかし、バークの剣先には俺の姿は無かった!
「しまった!」
勝利を確信した分、反応が遅れるバーク!
「おせえ!」
次の瞬間、俺の身体はガラスキのバークの左側面に!
「勝った!」
そして振り下ろされる
― ザンッ!
「それまで、勝者ケンツ!………………あ、あれ!?続行!試合続行です!」
主審は試合終了のコールを言いかけて慌てて訂正する。
俺が振り下ろした剣先にも、バークの姿は無かったのだ。
「はぁはぁ、今のは危なかった……まさかあの体勢から縮地で脱出し、そのうえ反撃してくるとは……」
主審を挟んだ反対側で、バークは神妙な顔をして俺を睨んでいた。
「お互い様だ、俺だってあの
この野郎、腹正しいが、こちょこちょした小技は俺と同格みたいだな。
ちょっと意外だったぜ。
ルール上、拳や蹴りは認められてはいるが、せいぜい近づきすぎた間合を離すために蹴りを使うくらいだ。しかも拳と蹴りはポイントにはならず、誰も積極的には活用しないんだがな。
真面目に身体と剣技を集中して鍛えてくると思ったが、徒手空拳もキッチリ対応して来やがる。
ちょっと驚いたぜ。
なら、このままコチョコチョと勝負しているわけにはいかないな。
小手先の小技が同等だとしたら、イレギュラーで負ける事だって大いに有り得る。
相手の力量を計りながら戦うのは危険かもしれねーな。
やはりこの勝負、圧倒的身体強化を持って相手をねじ伏せる以外、勝負はつかないみたいだぜ。
*
◆選手用観覧席
Sideアリサ&ユリウス&ミヤビ
「あっぶなー!ケンツさん、何やってんのよ!」
「あのバカ、様子見していて負けそうになるとか!」
「でもバークさんも凄いですよ!縮地のアドバンテージがなくなっちゃった」
アリサ、ユリウス、ミヤビは、ケンツが危機を脱出した事に胸をなでおろしていた。
「それにしても、今のは一体何なんだ?」
「今のケンツさんには似合わない戦術でしたよね?」
ユリウスとミヤビはコテリと首をひねる。
「あれは前回ぶつかった時の再現ね。あの二人、今だけ遊んでいたんだわ」
アリサは目を瞑り、ひとりウンウンと納得している。
「ふーん、そうなのか。まあ負けなきゃそれでいいけどさ。それにしてもバークの技は妙だな。噴出しているオーラも人のものとは思えないぞ?」
「あの“部分強化”は、魔法剣士が鍛えてマスターできる技じゃないですよね?」
「条件が揃えば会得可能な
三人が揃って首を捻っていると、空から召喚勇者ヒロキと召喚聖女アカリが降りてきた。
「二人とも今まで何処にいたの?」
「外で復活竜が湧いてな」
「ここへ向かって来る感じだったから屠って来たのよ」
聞けば土中から複数の復活竜が現れ、その全てがコロシアムに向かおうとしたそうだ。
ユリウスは何かがひっかかり、ヒロキに訊いた。
「なあヒロキ、復活竜が現れだしたのはいつ頃だ?」
「三時間ほど前かな」
「三時間前?」
「総合剣技の部が始まった頃じゃない?」
「まさか力の放出による呼応か?」
「ユリウスさん、アリサさん、なんだかすっごく嫌な予感がしてきたんですけど……」
「「…………」」
ミヤビの嫌な予感は、ユリウスとアリサの頭にも
「もしかすると、俺は重大な過ちを犯したのかもしれない……」
ユリウスはそう呟いて、闘場のバークを厳しい目で見つめた。
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