111 第四十一話 武闘大会 02
リットール冒険者ギルド主催 武闘大会
主催 冒険者ギルド・リットール支部
後援 リットール街会
リットール中央観光協会
協力 ハンターギルド・リットール支部
リットール連合青年会
テラリューム教団リットール教会
セフィース教団リットール教会
コロシアム概要
直径約120メートルの円形試合場を多階層観客席が囲むアリーナ。
この世界としては中規模クラスの闘技場。
ギルド主催の武闘大会程度に、この規模の闘技場を利用することはまずないのだが、本大会においては例年リットール街会と観光協会が後援している為コロシアムを利用することができる。
バックアップ
テラリューム教及びセフィース教の教会神官団の協力により、観客席回りには結界で保護されており観客の安全は保証されている。
なお【剣技の部】ならびに【総合剣技の部】においては、首より上に対する即殺級の攻撃は寸止めとし、行えば即失格となる(救護班・教会神官団の治癒能力限界を超えているため)。
各部門別トーナメント方式それぞれ16名
大会初日
午前・魔法戦の部
午後・総合剣技の部
Etc……
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「ケンツさん、いよいよ決勝戦ですよ!」
「そうだな。でも勝負は見えているな」
「やっぱり茶髪の女魔術師が勝ちますかね?」
「ああ、あの子の方が頭二つくらい抜けているぜ」
本来はトーナメント前に予選があるのだが、俺のエントリーした【総合剣技の部】は予定定員16名丁度の参加者だったため予選が無い。
おかげでとんでもなく時間が空いてしまい、控室もまだ使えない為、仕方なくミヤビとともに【魔法戦の部】を観戦していた。いよいよこれから決勝戦が始まる。
闘場に立つ二人の魔術師。
一人は四十代男の魔術師で、リットールの冒険者だ。
もう一人はまだ十代半ばくらいのチンチクリンな女の子だが、全く顔に見覚えが無い。
どうやらビジター参加のようだな。
この二人が決勝を争うのだが、男の方は少しやりづらそうだ。
なんせ自分の娘くらい歳の離れた女の子が相手じゃなぁ……
「それでは決勝戦、二級
― バーン!
審判の声と試合開始の銅鑼の音が響く。
同時に魔法を発動させる二人の魔術師!
「
― ゴウウウウウウウウウウウ!
おおう、先に男魔術師が火炎魔法を放つか!
あいつ、相手が可愛らしい女の子でも全く容赦ねーな。
さっきのやりづらそうな顔はなんだったんだ?
「
― グビュウ……ブオオオオオオオオオオオオオオオオ!
即座にカンターマジックを放つ少女魔術師!
空間がグニャリと曲がり、火炎放射は明後日の方向へ飛んで行く!
その直後に放たれる極凍の猛吹雪!
「ぐわあああああああああああああ!!!参った、降参する!」
「それまで、勝者ミレル!」
男の魔術師は下半身を氷漬けにされアッサリとギブアップ。
【魔法戦の部】は、ミレルという少女が優勝を決めた。
同時に場内に地割れのような罵声が響く。
「うわああああ、ゲランのオッサン何やってんだよ!」
「『キリスが出ないなら優勝は貰った!』とか豪語していたくせに!」
「秒で負けてんじゃねーか!賭けた金返せー!!!!!」
場内は賭けに負けた観客が阿鼻叫喚の図と化した。
武闘大会あるあるだが、この武闘大会も選手の勝敗を対象にした賭けがある。
ミレルはこれまで地味な戦い方で勝ち上がってきており、対戦者のゲランも観客達もミレルをラッキーで決勝に来れたと勘違いしていた。
もちろん俺とミヤビはそんな見かけには騙されないぜ。
あのミレルって女の子は魔力の濃さからして違い過ぎる。
「リットールにはキリスって言う凄腕の魔術師がいると聞いて来たけど、まさか不参加とはね。残念だけど仕方ないわ」
ミレルは物足りなさそうにしながらも、
「あのミレルって子、なかなかの逸材ですよ。
ミヤビは真面目な顔で進言してきた。
詳しい事は知らねえが、最初から多属性に恵まれたハイスペック魔術師や賢者とは違い、とんでもなく努力と苦労して属性を獲得するらしい。
しかもこの子は【
もしかしたら【
けどなぁ……
今は他所事に気を回す余裕なんてないな。
バークと決着を付け終わってから、覚えていたら考えてみるか。
それはとにかく、【魔法戦の部】は終わったし、これで控室が使えるぜ。
トーナメントの組み合わせも発表されているはずだ。
俺とミヤビは控室に向かおうと席から腰を上げた。
「ケンツさん」
「ケンツ」
同時に空からアリサとユリウスが下りてきた。
こいつらずっと空から
「どうだった?」
「ダメ、見つけられなかった」
「まだ来てないんじゃねーか?武闘大会そのものは明日もあるんだし」
「そうかもしれないけど……」
アリサは話ながらも観客席を見回している。
「とりあえず俺達の控室に行こうぜ。トーナメント表も発表されてるはずだし、昼食も用意されているはずだぜ」
俺達は用意されているトーナーメンター控室に移動した。
*
「お、あそこに張り出されているぜ」
学校教室程の広さの控室の壁にトーナメント表が大きく張り出されている。
参加者16名で五回勝ちぬけば優勝か。
「ふーん、そこそこいい感じにバラけてやがるな。つーかバークとは決勝まで行かないと当たれないのか」
出来れば早く当たりたいと思っていたが仕方ねえな。
「私とユリウスさんは三回戦で当たりますね。本気出しちゃおうかなぁ~♪」
「ははは、お手柔らかにお願いしますよ」
アリサの挑発的な眼差し。
しかしユリウスはどこか嬉しそうに軽く流した。
ほう、こいつら準々決勝でぶつかるのか。
これはちょっと見ものだな。
あれ?ちょっと待て。
よく見りゃその勝者は俺と当たる事になるのか。
バラけてると思ったけど、回が進めば身内で潰し合いじゃねーかよ!
ほんと、どっちが俺と当たるかわかんねーけど、ちゃんと約束は守ってくれよ!
*
そして時間は流れ、いよいよ【総合剣技の部】が始まった。
―キンッ、キンッ、バシュッ!
俺達三人は順調に勝ち進む。
バークも順調に勝ちを拾っていく。
一回戦、二回戦、そしてこれから三回戦!
「ふう、ここまでは大したヤツはいなかったな。だが次は見覚えの無いやつだ。注意するか……」
これまでの相手は顔見知りの冒険者達であり、剣の腕前もだいたい把握していたが、
三回戦の相手は総合剣技の部唯一のビジター参加者だ。
「それでは三勝戦、二級魔法剣士ケンツ対三級魔法剣士アレル。試合開始!」
三級冒険者の若い茶髪の男で名はアレル。こいつが案外手を焼かされた。
等倍ではあるが、俺の動きに辛うじてついて来ている。
そして何度か剣を交えている内に――
「魔法剣、
― ガラガラドッシャーン!
「うぉっと!?」
こいつ、魔法剣士のS級剣技、サンダーブレイクが使えるのか!
「やるじゃねえか、だがまだ雷の練りと乗りが甘いな。
特別に見せてやるから勉強しやがれ、
― ガラガラガラ!ドッシャーーーーーーーン!!!!!!
轟音が場内に響き、俺が放った
「ま、まいった!さすが召喚勇者相手に勝ったと噂される男……」
「おまえも凄く強かったぜ。ま、今回は相手が悪かったな」
アレルは格の違いを認めて降参、俺の勝利が確定した。
ふぅ、それにしても思わぬ伏兵がいたもんだな。驚いたぜ。
だけど万が一にもこんな所で試合を落とすわけには行かねえんだ。
不戦勝でバークにシャロンを持って行かれるとかシャレにならねえからな。
「ケンツさんお疲れ様でした」
「おうミヤビか、ありがとよ。でもここは選手用の席だけど、勝手に入ってきていいのか?」
「そこはそれ、現人神特権ってやつですよ」
「ふーん、ミヤビも色々と優遇されているんだな」
「さあ、次は注目のカードですね」
「そうだな、どんな結果になるか楽しみだぜ」
次は三回戦最後のカード。
いよいよアリサとユリウスの戦いが始まる。
今までこの二人に特訓付けて貰ったが、正直二人の強さの底が見えた事など一度も無かった。
この戦いでアリサとユリウスの全力が見られるかもしれねえな。
どうやらアリサの方はやる気満々みたいだし、妙な忖度で軽く流すって事にはないだろう。
これは楽しみなカードだぜ。
俺は選手観覧席からアリサとユリウスの登場を今か今かと待つ。
『それでは二級魔法騎士アリサ選手、並びに二級魔法騎士ユリウス選手の登場です!』
― バーン!バンバンバンバン!バーン!
アナウンスが流れ、次いで銅鑼の音が鳴り響き、闘場ゲートからアリサとユリウスが姿を現した。
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