102 第三十八話 悩めるバークと召喚勇者の末路 02(裏話あり)
「おら、おまえら起きろ!」
― ドカッ!
「うぎゃっ!?」
― ベキッ!
「あぐっ!?」
― ドスッ!
「うぶぅ!?」
俺は三人の召喚勇者を容赦なく蹴って目覚めさせた。
「おい、ゴチャゴチャ面倒くさい事は言わねえ。おまえら二度と俺達にチョッカイしないと誓え。そうすれば不本意だが生かして帰してやるぜ」
俺は縛られて転がっているユキマサ達の前にしゃがんで、ドスの効いた声で言った。
「へへへ、やはり俺達を生き返らせたか。そうすると思っていたぜ」
「結局命が惜しくなったんだろう?だがな、召喚勇者に手を掛けちまったんだ。ただで済む訳ねーよなぁ?」
「今更命乞いしたっておせーんだよ。殺してやるからこの縄を解け!」
しかし、ユキマサ達は強気な態度で解放を迫った。
この野郎……その上からの物言いにはいい加減反吐が出るぜ。
勇者法に守られ手出しできないと思っているようだがな、
「うるぁあああああああああああああ!!!」
― ガスッ!
「あぐっ!?」
― ボキャッ!
「げぼっ!?」
― ガンッ!
「ぶきぃ!?」
三人の顔面に俺の拳が突き刺さる!
「ひいいいい!テメー。勇者に向かってよくもこんな!」
「あつつ……許さねえ……絶対に許さねえ……もうただの殺し方じゃ済ませねえぜ!」
「謝っても遅いからな!後悔させてやるから早く縄を解け!」
あくまで強気な態度を崩さない三人の勇者達。
まだ自分の立場ってもんをわかっとらんようだな。
こいつらのふてぶてしさには、話していると怒りで頭の中が真っ白になってきやがるぜ。
「テメーらいつまで勘違いしてるんだ?生殺与奪の権利を持っているのはこっちなんだぜ。言う事を聞かないっていうなら話は終わりだ。今すぐ俺と同じ目に合わせてやるぜ!」
俺が死んでた時、斬り落とした俺の頭をグシャグシャにしてくれたらしいからな!
それ相応の仕返しをしてから引導を渡してやるぜ!
けっけっけっけっ!
「ケンツさんの言う通りだ。あれだけの事をしておいて許せるはずがない!僕達は貴様達を殺したくてウズウズしているんだからな!」
フーッ、フーッ、と、やや興奮気味のバーク。
ありゃりゃ。あいつも奴らの態度にキレたか。当然だな。
俺だって今すぐぶち殺したいのをぐっと堪えているんだ。
昨日まで人を殺そうなんて思った事なんか一度なかった俺だが、今はこいつらをこの世から消し去りたくて仕方がねえぜ!
ユキマサ達を相手に殺気を漲らせている俺とバーク。
だがそんな俺達では話し合いは無理だと思ったのか、ユリウスとミヤビが割り込んで来た。
「ケンツ、バーク、すまんが俺とミヤビに代わってくれるか」
そう言って俺達を少しだけ遠ざけた。
なんだ?なんの話をするつもりだ?
小声でよく聞こえねーぞ?
「おい、死にたくなければ言う通りにした方がいいぞ。気付いているだろうが俺には勇者法は通じない。この現人神ミヤビもな。それはわかるよな?」
「…………」
「…………」
「…………」
「つまり俺達はおまえ達を殺したとしても、連邦と多少は揉めるだろうが最終的には放免される。いざとなれば連邦相手に喧嘩だって辞さないさ。だがおまえ達には幸いなことに、今の俺は多少でも揉めることを良しとはしない。だからおまえ達がこれ以上俺達に干渉せず、そして今後悪事を重ねないのなら見逃してやる。だが断るのなら今すぐその首を刎ね落し、絶対に再生できないように豪炎で滅殺する!」
「態度を改めるか、今すぐ殺されるか、どうぞ好きな方を選んでください。私もユリウスさんもどちらでも構いませんよ。ああ、なんならダンジョンの可愛い
ミヤビはペロリと舌なめずりしてユキマサ達に選択を迫った。
「バカ野郎、そんな選択どれも飲めるか!」
「俺達は勇者だ。現地人の猿に屈するもんかよ!」
「いいから縄を解け!テメーら二人は見逃してやる。他は全殺しだ!」
ユリウスとミヤビに代っても、事態は好転しないようだ。
なんだよ、ユリウスのやつ自信ありそうに代われとか言っておいて、あいつも話し合いになってないみたいじゃん。
離れた所ではアリサも不満顔だ。
「すぐ話を纏めてくれると思って見ていたけど、ユリウスさんてば何をグズグズしているのかしら。あんなヘタレ勇者なんか手足の二~三本でも斬り落して、傷口を剣でグリグリすれば、すぐ言う事を聞くのに」
げっ!
アリサ、おまえコエ―よ!
剣でグリグリとか、十代の女の子なのに素でそんな発想するとか、今までどんな人生歩んできたんだよ!?
だいたい慈愛の象徴である聖女がそれでいいのか!?
「意義無し!」
「大賛成!」
こらこら、キリスとキュイもうんうんと頷いてんじゃねー!
女って集団になるとこえーよ!
いやまてよ……
そういやアリサは魅了を使う輩には、変なスイッチが入って病的に容赦しないとか言っていたな。それでか。
なんか深い闇を抱えてそーだなー。
(ちなみに過去に一度でも魅了被害に会うと、魅了を行使する輩に対して酷く残忍で残酷な性格に変貌します)
それからも
しまいには召喚勇者達がミヤビを魅了しようとしたようだが、ミヤビには全く効果がなかったようだ。
逆に魅了には魅了とばかりに、ミヤビは〈
ラミア族であるミヤビ。彼女は魅了に非常に長けているのだ。
だがこのミヤビの魅了は功を奏した。
ミヤビはすぐ魅了を解いたが、ユキマサ達にはこれがかなりの衝撃だったらしい。
これまで魅了を使い散々非道で外道な事を行ってきた彼らだからこそ、その魅了が自分達に向けられる恐怖は半端ないものだったようだ。
なにしろ魅了は人の尊厳を奪うのだから。
「わ、わかった降参する!」
「おまえ達にはもう干渉しねぇ!」
「今後の態度も改める!」
召喚勇者達は、最後は慌てて白旗を上げた。
「おーい、話がまとまったぞ。こいつらはもう俺達には一切干渉しないそうだ」
ユリウスは離れていた皆を呼んだ。
「小声で何を話してたんだ?」
「まあ、いろいろ取引をな……」
「ふーん。でもよう、こんな奴らの約束なんて信用できるのか?」
「まったく信用できませんね。だから保険にこれを使うです。
ミヤビは何やら聞きなれない魔法術を使った。
するとミヤビの手の平に【三匹のミミズ】がウネウネと……なんだこりゃ?
「ケンツさん、ミミズじゃありません!これは魔法の呪蛇ですよ。可愛いでしょ」
「ふーん?……うぇ!?」
色は肌色で長さは5センチ程度。小さなミミズと同程度の大きさだ。
だがよく見れば、その目は単眼で、“キャシャー!キュビビビビィィ”と不気味に鳴いて威嚇する。
なんだこれ、きっしょ!?
「オビデスネークだと!?やめろ!やめてくれ!」
突如、召喚勇者タケヒサが狂ったように叫び出した!
「おい、タケヒサ!」
「いったいどうしたってんだ!」
「聞いたことがあるんだ。ラミア族は魅了の他にも、相手を服従させるために魔法で作った呪蛇を頭に寄生させるって……その呪蛇の名前が確かオビデスネーク!」
「な、なんだと!?」
「う、嘘だろ!?」
「それで術者に逆らうような敵対行動をすれば、脳を喰いつくされて狂人になって死んじまうんだ!」
「「ひいいいいいいい!!!!」」
「説明ありがとうございます。それでは……」
「いやだああああああああああああああああああああ!」
「嘘でしょ!嘘でしょ!こんなことあっちゃいけねえ!」
「あひいいいい、耳が!耳がぁぁぁ!!!……ひぎぃ!」
ミヤビは粛々とオビデスネークを召喚勇者達の耳穴に注いで回った。
注ぎ込まれたオビデスネークは、ウネウネスルスルと耳の奥へと進んでいく。
そのあまりのゾワザワした感覚に、ユキマサ達は白目を剥いて失禁。
ついでビクンビクンと身体を痙攣させて気を失った。
「おおう、これはえぐいぜ……」
耳から蛇が入って頭の中を食い荒らすとか、マジでシャレにならん。
ひと思いに殺してやったほうが、まだマシなんじゃねーか?
「はい、これで完了しました。
「ごくろうさん。これで一応全て片付いた感じかな」
ユリウスはミヤビを労い、俺に確認を求めた。
「廃教会の召喚者達はもう放置でいいだろう。奴らにはこの三人を回収して貰わないとな。バロンとブルーノは明日にでも締め上げてやる!それより今はシャロンを休ませないと……」
本当ならシャロンを連れて帰りたいぜ!
それで添寝してゆっくり癒してやりたい!
エッチな意味じゃなくて、人肌ってのは最高の癒しの妙薬なんだぜ!
だけどそれはバークと決着を付けるまでは駄目だな。
だったら……
「今日は女性陣だけで大部屋を借りて、シャロンさんと泊まったらどうかな?」
俺が言わんとしていたことをバークに先を越されてしまったぜ。
考えている事は一緒だったか。
「それがいいぜ。今夜は女子会でもしながらゆっくりと休んでくれ」
「え? あ、うん……」
シャロン、そんな寂しそうな顔で見るなよ~~。
俺だって寂しいんだぜ!
でもシャロンが無事蘇って本当に良かった。
これも皆のおかげだな、感謝するぜ。
「…………」
「バーク、どうかしたか?そんなに思いつめた顔をしてよう」
「いや、何でもないんだ。今日はお疲れさま」
何か思い悩む様子のバーク。
間違いなくシャロンのことだろう。
だが、おまえが何を悩もうと、シャロンは絶対に渡さないぜ!
「さて、帰るか!」
縛られ気を失っているユキマサ達を放置して、俺達はその場から引き上げた。
だが
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