101 第三十八話 悩めるバークと召喚勇者の末路 01
「えっと、和んでいる所を申し訳ないのだけど、そろそろアレの処分方法を考えてくれます?」
現人神ミヤビが両の人差指で一方向を刺した。
その指先にあるもの――
それは氷漬けにされている召喚勇者の肉片だった。
「そんなもん焼却処分に決まっているだろう!」
「復活できないくらい細切れにしてやる!」
「さらに低温にして原子分解するわ!」
「私の戦斧で爆殺してくれる!」
俺、バーク、キリス、キュイは、手法は違えど殺処分一択だ。
こんな奴ら、一刻も早く滅殺しないと!
「別に止めるつもりはないけどさ……でも、殺せば必ずアドレア連邦から指名手配されるわ。今日からお尋ね者になっちゃうけど大丈夫?」
「「「「 うっ…… 」」」」
怒り昂って処分一択のツモリだったけど、その問題があるんだよな。
ここは感情に流されず、一度冷静になるべきか。
怒りに支配され衝動的に行動するなど愚の骨頂だぜ!
よしよし、一旦落ち着こう。
まずは呼吸だ!呼吸を整えろ!
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー
いいぞ、落ち着いて来たぜ。
さあ、ここから思案だ。
どうすれば最適解を得られるか考えろ!
考えて考えて、よーーーーーーーーーーーーく考えて……
しかし、それでも!やっぱり!どうしても!
「俺を殺し、シャロンの唇を汚し自殺に追いやったこいつらを、俺はどーーーーしても許せん!」
「ケンツさんの言う通りだ!よくもシャロンさんを、そしてキュイとキリスにもあんなことを!」
「コイツらのせいでアタイ達は汚された!絶対許せない!」
「コイツらのせいで私達はバークを裏切ってしまった!許せるはずがない!」
決定!滅殺処分一択だぜ!
ん、なんだよ、アリサ、ユリウス、ミヤビ。そのドン引きするような目で見るのはやめなさい。
「なんだよ、冷静に考えた結果がこれだぜ」
「はぁ……さっきも言った通りですが、別に止めたりしませんよ。でもその後はどうするんです?連邦が動き出す前にここを離れないとヤバイですよ」
「おう、こいつらを処分したら今すぐにでも……」
「今すぐ何処に向かうの?運の悪い事に、今は内戦が近いこともあって連邦の外には出れませんよ。罪の無い連邦の国境警備隊員を殺して国外に脱出しますか?ケンツさんにそれが出来ますか?」
「うっ……」
「それに、そうなると廃教会に残して来た他の召喚者も処分しないと」
「ううっ……」
「ケンツさん、逃亡生活は厳しいですよ。私もユーシスもヒロキもアカリも逃亡生活の経験ありますけど、何度危ない目にあったことか……ケンツさん達も絶対に無事では済まないわ」
「うううっ……」
「でもね、今なら召喚勇者達と
アリサの言うことは
というか、そんな事は俺でも分かっているんだよ!
でも今は理性よりも感情が勝ち過ぎているんだぜ。
無事に生き返ったとは言え、シャロンの心を弄び、唇を汚し、自殺に追いやったこいつらを、いったいどうして許せる事ができようか!
やっぱり処分一択だぜ!でないと留飲が下がらねえ!
「なあ、この肉片を処分したあと、このままコソっと解散すればバレないんじゃねーか?」
「甘い!廃教会にはまだ他の召喚者がいるのよ。それにバロンとブルーノだって……仮に彼らの口も封じたとしても、連邦国家保安委員会は国家に仇成すものを絶対に許さない。それが召喚勇者殺しともなれば全力で見つけ出し必ず始末するわ。私達の強さなんて関係ない。手に負えないと判断すれば、潜伏している村の村人ごと毒殺するわね。これから先、生きている限りはずっと水や食べ物に気を使い、寝ている最中もずっと襲撃に怯え、心が休まる日は無いわ。これはかなり辛いわよ。どこまで精神が待つかしらね」
うう、やはりそうだよな……
「シャロンさんはどう思う?」
俺達四人では話し合いにならないと思ったのか、ユリウスがシャロンに話しを振った。
そうだ、シャロンは今回最大の被害者だ。シャロンが望むことに俺は従うぜ!
「私は……私はバークさんやキリスとキュイを苦しめ、そしてケンツを無残に殺した召喚勇者達の事をどうしても許せない。慈悲はありません、このまま滅殺を望みます!」
シャロン、よく言った!
その意見、全面的に賛成だぜ!
奴らには慈悲など必要なし!
それじゃ、シャロンのお許しも頂いたところで、早速滅殺してくれる!
凍った肉片に言っても伝わらないだろうけど――……
「テメーら、覚悟しやがれーーー!」
俺は召喚勇者の冷凍肉に向かって咆えた!
「でもね……それ以上に、ケンツが、
シャロン~~!
やはりシャロンは優しいぜ!
だよな、ここは皆で生き残る事を考えないと!
俺はアッサリと手のひらを返した。
結局、シャロンのこの一言が決定打となった。
俺達は留飲が下がる事の無いままで、方向性としては召喚勇者達を回復させ話し合いによる解決に進んだ。
「
「
キリスとアリサが、嫌そうな顔しながら召喚勇者達を解凍・治癒回復させた。
そして即行で勇者をも拘束する
さらに何も出来ないとは思うが、奴らの魅了を懸念して現人神ミヤビ以外の女性は、念のため離れた所に移動させた。ヒロキも女性達の守護に回った。
残っているのは俺、バーク、ユリウス、ミヤビ。
そんじゃ、始めるか。
「おら、おまえら起きろ!」
― ドカッ!
「うぎゃっ!?」
― ベキッ!
「あぐっ!?」
― ドスッ!
「うぶぅ!?」
俺は三人の召喚勇者を容赦なく蹴って目覚めさせた。
-------------------------
―─お知らせ――
第100部分、少しだけ改稿しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます