092 第三十六話 葬送戦 04


「しっかしシャロンちゃんは残念だったなぁ……あのプルっとした弾力のある唇、艶めかしい舌使い、張りのある胸、最高だったのによう!」



ユキマサは俺を揺さぶるつもりなのか、ニヤニヤしながら聴きたくもない事をベラベラ話し出しやがった!




思い出したくもないシャロンとユキマサのキスシーンが、俺の脳裏に強烈にフラッシュバックする。



「な、言うな!やめろ!」


「いいや、やめねえ。報告はちゃんとしないとな。シャロンちゃんの唇に強引に舌を入れるとよ、健気に自分の舌を絡ませてきたんだぜ。別の生物みたいにぐにゅぐにゅってな」



― ブツッ……



「そんで俺の頭に腕を絡ませてよ、思いっきり吸ってくるんだ。シャロンちゃんの口内の暖かさ、感触、そして唾液の交換、最高だったぜ!」



― ブチッ!



「なのに勝手に死にやがって。自殺とか頭悪すぎだわ。美人でも現地人の猿はやっぱ駄目だな。ぎゃははははは!」



― ブッチーン!



この野郎、死してなおシャロンを冒涜しやがって!


俺のシャロンを汚しやがって!


完全にキレたぜ!ブチキレだ!



「絶対に許さねぇ!許さねぇぞ!!!!!!!!!」



動揺はしてねえ。ただ純粋に怒りが脳を身体を支配する!



テラボルト上級雷撃ギガディーン勇者の大雷!」



― ガラガラドッシャーン!ズゴゴゴゴオオオオオオオオオン!



アリサの雷撃魔法、さらにはさっき吸引した勇者の雷撃魔法を炸裂!


雷の荒れ狂う中での斬撃連打!



― バシュッ! ズザッ!



「ぐおおおおお!?やろう、急に動きが激しくなりやがった!煽ったのは失敗だったか!」



― ザンッ!ズバッ!ズギュンッ!



「ぬお、うぬぬぬ!ぎゃがっ!?」



効いてる!確実に効いている!届いている!


ラーズソード滅ぼしの剣の斬撃は、結界を突き抜け聖闘衣を斬り裂いた!


ユキマサは雷まじりの高速斬撃を防ぎきれない!


徐々になます斬りにされていく!



「倒せる!今度こそ倒せるぞ! 身体強化ブーストアップ4.25倍!縮地!縮地!縮地!縮地!縮地!」



― バシュッ! バシュッ! バシュッ! ザンッ! ザンッ! ザンッ!



完全に防戦一方のユキマサ!



「ぐおおおおお、やつを捉えきれねえ!?」


「いける!やつに勝てる!」



ラーズソードを得たことで、俺の剣速は格段に上がっている!


これなら召喚勇者であっても、俺の剣を捉えることなんて絶対できやしねえはずだ!


この勝負、俺の勝ちだぜ!


俺の大切なシャロンを死に追いやりやがって!


シャロン、見ていてくれ!


おまえの仇、今こそ!今こそ!今こそおおおおおおおおお!



「てめぇ、猿のクセに!猿のクセにイイイイイイイイイイイイイイ!!!」


「だあああああああああありゃああああああああああああああああ!!!」



― ザンッ!



「はぐぅっ!?」



聖剣を握った腕がユキマサの目の前で舞う!


怒りと魔力を込めた一撃が、ユキマサの右腕を聖闘衣ごと斬り飛ばした!




「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!

俺の腕がああああああああああああああああああああああ!!!」



やった、ついに致命傷を与えてやったぞ!


さあ覚悟しやがれ、今すぐトドメをさしてやる!


それがシャロンへの葬送曲レクイエムだ!



「ま、待ってくれ!殺さないでくれ!」


「今更なに言ってやがる!」


「違う、誤解なんだ!ケンツ君もシャロンちゃんも殺す気なんて全く無かったんだ!」



― ピキッ!



「はぁ?シャロンを辱め自殺に追いやり、俺の首を刎ねて殺したテメエが殺す気が無かっただと!?」


「そうなんだ!悲しい行き違いってやつさ!だから……な?腕一本で勘弁してくれ!」



俺の足元でユキマサは土下座をして必死で頼み込んだ。


なんだ?


こいつは何を言っているんだ?


シャロンを死路に送っておいて腕一本で勘弁しろだと!?




「な、この通りだ!」


「ふざけるな……」


「頼む!」


「ふざけるな……」


「この通り!」


「ふざけるな……」


「謝る、ごめん!」


「ふざけるな……」


「復讐なんて無意味な行為だよ。君の為にならない」


「ふざけるな……」


「ちょっとした勘違いだったんだ!」


「ふざけるな……」


「冗談だったんだ。本気じゃなかったんだよ!」


「ふざけるな……」


「シャロンちゃんが死んだのは俺のせいじゃ無いんだ。ただうっかり死んじゃっただけなんだよ!」


「ふざけるなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


「うひぃ!」



何が勘違いだ!間違っただ!冗談だっただ!本気じゃ無かっただ!


そんな舐めた言訳が1ミリでも通じるとでも思ってんのか!


そんな下らねえ言訳で、シャロンを死に追いやった罪を帳消しになんて出来るかよ!


ふざけてんじゃねーぞ!



「テメエに慈悲はねえ、今すぐ殺す!!!」



俺は土下座するユキマサの前で、剣を高く大きく振りかぶった!



「死ねっ!」


「ああそうかよ!」


「 !? 」



しかしユキマサはこの土壇場で不敵な態度を取った。


だがそれがどうした、もうこいつに出来る事は何もねえ!


冥土でシャロンに詫びてこい!



― ザンッ! ボガッ!!!!!


― ドガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!



ラーズソードが振り下ろされ衝撃波で土埃が濛々と立った!


だがおかしい!?



「手応えが無い!?」



振り下ろした場所にユキマサの姿は無かった。



「くっ、どこだ! むっ!?」



ユキマサは信じられない早さで、さっきぶった斬ったヤツの腕近くに移動していた。


なんだ、今のユキマサの動きは!?



「あっぶねー、紙一重だったぜ」


「……その素早さはいったいなんだ?」


「へっへー、こんなこともあろうかと……てやつさ」



ユキマサは左手に持っている空の小瓶を見せつけた。



それは、薬瓶?





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長くひっぱりましたが次回で決着です!

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