091 第三十六話 葬送戦 03

091 第三十六話 葬送戦 03





「よし、それじゃ始めるか」


「はい!」



― バシュッ! バシュッ!



俺とアリサはそれぞれの標的ユキマサとタケヒサに向かって、弾かれるように突撃した!







「でやああああああああああああ!!!!!」



― ガキッ!



俺の斬撃に対し、ユキマサの聖剣がマトモに受けとめる!



― ガキッ! ギュルルルルルルルゥ……バシュッ!



そして軽く鍔迫り合いをしたのち、ユキマサが跳ねのけようとしたタイミングで受け流す。


絶妙な感じに力を抜かれ、ユキマサは転倒しそうになった。



「ぬぐっ!?きさま!」



ユキマサめ、俺の剣技が変化したことに戸惑いを感じてやがる。


さっきはこんな荒々しい剣の使い方をしなかったからな。



「おりゃっ!」



― ガキンッ!



剣技が変化した理由……それはもちろん俺の得物が変わったせいだ。


そう、ユリウスから譲り受けたラーズソード滅ぼしの剣は、ユキマサの聖剣とマトモにぶつかり合ってもビクともしない耐久性を誇っている!


先程までダマシダマシ使っていた魔法付与剣とは違い、これならマトモに聖剣とぶつかり合える!剣の駆け引きが出来るんだぜ!


なんせあの野郎、さっきはフェイント掛けても全然恐れずお構いなしだったからな。


だから剣の使い方も変わってくるのも当然というものだ!


しかもこの剣は軽い!いや、なんというか軽くて重い!


剣速が確実に向上してやがる。


このラーズソード滅ぼしの剣、長剣でありながら見た目と違い信じられないくらい軽く感じるぜ。


その癖、インパクトの瞬間にはズッシリと重みを持ち、敵に十分な打撃を与えるんだ。


さらには俺の魔力を高効率で(ラーズソード滅ぼしの剣に)伝達してくれる。


ユリウスが『人間が作り出した究極の一振り』と言うだけのことはあるぜ。



― キンッ!キンッ!ガキンッ!





「新しい剣の小手調べは終わりだ。シャロンの仇、覚悟しろ!」


「現地人の猿が……ちょっと良い剣を手にしたからと言って調子に乗るなよ!」



― ガキンッ!



ラーズソード滅ぼしの剣と聖剣が激しくぶつかり火花が飛ぶ!


しかし刃こぼれなんざ全くしねえ!


これなら遠慮なく戦える!



身体強化ブーストアップ3.5倍!縮地!」



― バシュッ!



先程と同じく超高速域での超近接戦闘!


戦いながら、俺はユキマサを問い詰めた。



そもそも――


「ユキマサ、なぜだ!なぜシャロンを襲いやがった!なぜ目を付けやがった!」


「ああ?俺達召喚勇者が女を襲うのに理由なんて必要ねぇ!いい女がいれば手に入れる!ただそれだけだ!」



― ガシュッ!



「それじゃたまたま目についたから襲ったってのか!?」


「そうだ!……いや、違うな。そういやなんか理由があったっけ」



― ザンッ!



「どんな理由だ!忘れる程どうでもいい理由なのか!?」



やつの曖昧さが癇に障る!



「ああ、そうそう。こりゃ仇討ちゲームだったっけ……なっ!」



― ブンッ!ザシュッ!



「仇討ちゲーム?じゃあシャロンがおまえ達の仲間に手を掛けたのか!?」


「シャロンじゃねえ、ケンツ、おまえだ!」



― キンッ、ガキンッ



俺?俺がユキマサにとって仇だというのか!?


俺がいつこいつらに……?



― ズバッ! ブシュッ!



不覚!


浅く袈裟切りにされ血が吹き出す!



「ぐぬぅ!」


「へっ、勇者様相手に何を考えこんでんだよ!」



いけね、思いもしなかったんで、一瞬集中力が甘くなっちまった。


だが浅く斬られたくらいなら、自前のヒールでも回復するぜ!



― ガッ!ギュリリリリリリィィィ……



「俺がテメーらに何をしたってんだ!顔を合わせるのも今日が初めてだったはずだぞ!」


「俺にじゃねぇ、俺の可愛い弟分達にだ!」


「弟分!?」



― キンッ!キンッ!キンッ!



なんだ?何を言っていやがる!?


こいつらの弟分??



「ああそうだ、弟分達がおまえにボコボコされたのさ。そこで俺達がゲームがてらに仇討ちに名乗り出たのさ。そしてまずシャロンを攫った。弟分達はシャロンにベタ惚れだったからなぁ、おらっ!」



― ガッキャーン!



俺がユキマサの弟分をボコボコにした?


弟分はシャロンにベタ惚れ?


いったい誰の事だ!?



「へっ、胸に手を当てて考えてみやがれ!」



俺は戦いながら考えた。


最近、ボコボコにした奴らって……


やばい、意外と多いぞ!


バークに挑戦状を叩きつけた時とか、結構な数の冒険者をボコして恫喝したからな。


超絶ダイナマイト覇王拳の使い手、ボーンズか!?

自称爆炎の魔術師、シュナイダークか!?

三位一体の剣士、ヤギ・サワ三兄弟か!?

そういや他にも魔術師が三人ほどいたぞ!


だが待て。


こいつらはシャロンに気は無かったはずだ。


俺がボコボコにして、しかもシャロンに気が有るヤツ……



「 ! 」



俺の脳裏に二人の男が浮かんだ。


まさか…………



「バロンとブルーノか!?だとしたら何故シャロンを汚そうとした!奴らに引き渡すつもりじゃないのか!?」



ユキマサはニヤリと唇を歪めた、



「まずは俺達への報酬ってやつさ。シャロンもアリサもキュイもキリスもな。そしておまえとバークもボコボコにした上で、女達が汚され堕ちる様を見せつけて嘲笑うつもりだったのさ。こりゃ俺達召喚勇者の様式美ってやつなんだよ」



「何が報酬だ!何が様式美だ!このクソ野郎!」



なんでこんな野郎が勇者なんだよ!


連邦はもっとマシな奴らを召喚できなかったのかよ!


この歪んだ性癖、反吐が出るぜ!



「へへへ、いい怒声だぜ。で、その後でシャロンは兄弟達バロンとブルーノにくれてやり、アリサは娼館送りにする予定だったんだがな」



本当にバロンとブルーノが噛んでいたのか!?


信じられねぇ。たかが冒険者が召喚勇者を動かしただと!?


いったいどんな繋がりがあるってんだ!?



「なのに揃いも揃って予想外に抵抗しやがって!現地人の猿のクセにウゼーんだよっ!」


「ウザくて悪かったな、この異世界のゲス野郎め!」



― ガキンッ!ギュリッ!



むかつく!本当にむかつく!胸がムカムカするぜ!


だがよし。


やつめ、身体強化ブーストアップ3.5倍の俺の動きに完全に目が慣れやがったな。


ここからギアを上げて一気に勝負を……むっ!?



「しっかしシャロンちゃんは残念だったなぁ……あのプルっとした弾力のある唇、艶めかしい舌使い、張りのある胸、最高だったのによう!」



ユキマサは俺を揺さぶるつもりなのか、ニヤニヤしながら聴きたくもない事をベラベラ話し出しやがった!



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本日12時~14時の間にもう一話配信です。


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