085 第三十四話 その頃~
*ワンクッション置きます。
今更ながら人物紹介。
覚えている人は、飛ばして下の本文へ!
【ミヤビ】
下半身が大蛇のラミア族女性。普段は二本足の人間形態。
アドレア連邦から
亜神を目指しており、いろいろと不思議な術を使う。
ユリウスと一緒にケンツパーティーに入った。
時々大賢者バンバラの霊に憑依されている節がある。
【アリサ】
想い人ユーシスを探してアドレア連邦入りしたスラヴ王国の冒険者。ジョブは
連邦の召喚勇者をあっさり肉塊にしてしまうほど強い。
【ユリウス】
同じくスラヴ王国生まれの冒険者でやはり魔法騎士らしい。
大賢者バンバラより邪竜アパーカレス討伐のため、ケンツの補佐を頼まれている。
信じられないくらい影が薄く、街ゆく他人などは存在に全く気が付かない。
究極のモブ特性の持ち主?
【バロン】【ブルーノ】
ケンツを一方的に逆恨み。シャロンに気がある二級冒険者達。
黒幕……とまでは言わないが、今回シャロンが誘拐されたのはだいたいコイツらのせい。
【キュイとキリス】
バークパーティーの女性冒険者で、バークとは相思相愛の仲。
召喚勇者ショーゴに魅了されてしまいバークに刃を向けた。
その後に解呪されたが心に大きな傷を負ってしまった。
【バーク】
ケンツのライバルで、近々シャロンを賭けて決闘する予定。
決して望んではいないが、チートハーレム=チーレム特性は高そうだ。
王道な追放もの小説なら、
------ここより本文------------------------------------------------
場面は一時変わり……
◆リットール周辺の頁岩地帯上空
Side 現人神ミヤビ
その頃ミヤビは、シャロンがリットールの街の外に連れ去られた可能性も考慮し、周辺の村を捜索していた。
「どの村にもいない。やはりリットールの街かなぁ……ん?」
ここは古代の堆積層からなる
その所々が赤黒く不気味に発光している。
ミヤビは村々の移動中に、このような怪現象にいくつも遭遇した。
「また化石の発光現象……今度は古代海竜の化石?まさか、これ全部復活竜化するんじゃ……!?」
頁岩の化石の保存度合いは驚くほど良い。
イクチオサウルス、モササウルス、フタバスズキリュウ……
それら古代海竜達が復活竜となり新たな産声を上げようとしている。
復活竜化した古代海竜は水の中だけではなく、瘴気や魔素の中を自在に泳ぎ、人間にとって大きな脅威となるのだ。
「もしや
ミヤビは頁岩地帯に結界を張り化石を
「早くこの事をケンツさんとユリウスさんに知らせないと……急いで残りの村を捜索してしまいましょう」
ミヤビは
*
◆東エリアにある再開発区域の廃教会堂
Side ユリウス&アリサ
アリサとユリウスは、まだ粉塵が残る半壊した廃教会に到着、残っていた召喚者達と交戦していた。
「ぎゃっ!」
「ぐぎゃっ!」
「ひぼっ!」
回復士タミヤ、剣士コージ、魔術師ヒロシは、突然乗り込んで来たアリサとユリウスの剣気圧を受け、教会堂内の壁に叩きつけられた!
辛うじて剣気圧に耐えた剣聖ムサシが二人と対峙する!
「ち、ちくしょう!なんなんだよ、おまえらは!?俺達召喚者にこんな事をしてタダで済むと……」
― バシッ!
「へぶらっ!?」
縮地で一瞬にして剣聖ムサシの懐に入り込むユリウス。そして平手打ちが炸裂!
ムサシは駒のように身体を回しながら張り倒された。
「敵対するとどうなるんだ?」
「クソ!俺達と敵対すれば連邦が黙って……」
― ゴッ! ベシュッ!
「ぎゃぶっ!ひでえ、また殴りやがった!」
ユリウスに顔面を容赦なくボコられ、ムサシはダラダラと流れる鼻血を手で押さえる。
「それで、ケンツとシャロンさんは何処だ?召喚勇者達は何処へ行った?」
「へっ、誰が話すもんかよ!」
ムサシは気合負けしないようユリウスをキッと睨んだ。
彼にも剣聖としてのプライドがあったようだ。
しかしそのプライドは呆気なく喪失する。
代わって湧き上がるのは圧倒的な恐怖。
「ユリウスさん代わって。私が尋問するわ」
そう言ってアリサがユリウスの前に出ると、途端にムサシの顔色が変わった!
「ひぃ!その女を近づけるな!わかった、何でも言う!だから酷い事しないでくれ!」
ムサシは、先の戦いでアリサに肉塊にされた事を思い出し、ガクガクと身体を震わせ激しく怯えた。
― ジュワワー……
股間から白い湯気が立ち昇る。
どうやら骨の髄までアリサに対する恐怖が沁み込んでしまったようだ。
だが、その様子にムスっとするアリサ。
「失礼な……私、そんなに怖がる事してないでしょ? ねえ、ユリウスさん?」
「……」
ユリウスは苦笑いをしてアリサを無視した。
「じゃあ改めて知っている事を話して貰おうか」
ユリウスに訊ねられ口を割るムサシだったが、その内容は何の参考にもならなかった。
「天井からケンツさんが突き破って来て、その時の衝撃波だか重力波でこの四人は気を失ったと」
「おまえら、召喚者にしては弱すぎないか?」
「ぐぐぐ……」
顔を真赤に、しかし目は伏せて悔しがるムサシ。
― ガタッ……
その時、奥に続くドアの向うから何か音がした。
「おい、誰かいるのか?」
「出てきなさい!でないと建物ごと吹き飛ばすわよ!」
アリサはバチバチ聖剣に雷を
「ま、待ってくれ!」
「すぐ出ていくから!」
ガチャリとドアのノブが回り、出てきたのは……
「へ、へへへ……」
「久しぶりだな……」
「あなた達!」
「おまえら!」
出てきたのは冒険者バロンとブルーノ。
まだ自分の身に危険が及ぶとは思っていないらしく、ヘラヘラとバツ悪そうな顔をしている。
「そういうこと……あなた達が関係していたのね。まさか召喚勇者を動かすとは思いもしなかったわ。それでケンツさんはどこに行ったの?」
「さあ」
「俺達は何も知らねえよ」
ヘタに喋って後からユキマサに咎められちゃたまったもんじゃない。二人は黙秘を決め込んだ。
しかし、大義名分を与えれば二人は簡単に吐く――ユリウスはそう読み……
「早く話せ!話さないならこいつらを一人ずつ殺していくぞ」
ユリウスは剣先をムサシに向けて脅した。
剣先を向けられたムサシは当然……
「ひぃ!お、おまえらいいから全部話せ!でないと俺が死ぬ!」
仲間の召喚者が話せと言う以上、黙秘を続ける理由はない。
「ケンツとシャロンさんは北へ逃げたみたいだぜ」
「ユキマサさん達は遅れてその後を追って行った。外に足跡も残っているだろう」
バロンとブルーノは素直に吐いた。
「北か!」
「急ぎましょう!」
アリサとユリウスは、瞬時にしてその場に居合わせた全員を峰内にして意識を刈り取った。
それから扉外側にバークへのメッセージを掘り残してから、北へ向かって駆けだした。
*
◆東エリア再開発区域の外れ。
Sideバーク
「どうやら落ち着いたみたいだね」
「バーク……」
「ごめんなさい……」
キュイとキリスは勇者の魅了の後遺症から立ち直り、どうにか落ち着きを取り戻した。
これならもう発作的に自殺に走る事はなさそうだ。
「じゃあ、行って来るよ」
「私達も連れてって!あの召喚勇者に一撃加えない事には気が済まないわ!」
「もう絶対に魅了されたりしないから!お願いバーク!」
― グイッ
バークは二人を抱き寄せた。
「すまない、それは無理だ。僕自身、召喚勇者の魅了を甘く見ていた。あれは回避不可能な外法だ。もう二度と二人を魅了させたくない!あんな目に合わせたくない!どうか分かってくれ!」
なんとも言えない悔しそうな、そして苦しそうな顔のバーク。
自分達の事を大切に想う気持ちをビンビンと感じ取り、キュイとキリスは諦めた。
「わかった。でもその代わり必ず無事に戻って来て!」
「シャロンを助けて!約束だよ!」
「もちろんだ、行って来る!」
バークはキュイとキリスの
(そう、それでよい。
「 ? 」
バークの胸中奥底から、またしても何かが聴こえたような気がした。
東の空からは輪のある月が昇りはじめる。
辺りは黄昏色に染まり始め、間もなく日が暮れようとしていた。
(次回は再びケンツ&シャロンsideより)
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