076 第三十話 ファーストコンタクト02 ~ユリウスvsバーク(邪)



流星斬りゅうせいざん!」



謎の斬撃波が男の背を襲った!



― ザシューン!



『ぐぼっ!?なんだ、この熱気を含んだ斬撃は……うっ!?』



俺に構っていたこともあって、謎の斬撃波が男にクリーンヒット!


手が緩み、俺は放り出された!



「ケンツ、無事か!」


「ゲホゲホッ……ユリウスか!大丈夫、なんとも無いぜ」



斬撃を飛ばしたのはユリウス!


それから少し遅れてアリサも到着した。



「なにこれ?一体どういう状況!?」



アリサはとりあえず瀕死の重傷を負っているキリス、キュイにセイクリッドヒール完全回復をかけて回る。




俺はユリウスとアリサの姿を見て目を細めた。


そうかそうか、ふっふっふっ……


どうやら立場が逆転したようだなぁ?


いくらてめぇが屈強な男でも、アリサとユリウス脳筋コンビの二人がかりには勝てまい!


覚悟せいやぁ!



「さあ、ユリウス、アリサ、やってしまええええ!」



他力本願上等!


俺はビシッと男に向かって指さした!


ところがユリウスは神妙な顔をして思いがけない事を訊いてきた。



「おいケンツ、アレにタイマンで勝てそうか?」



へ?


何言ってんだこいつ?


俺の手には負えないから君達に振ったんでしょ?



「いやいやいやいや、無理無理無理!たった今一勝負して負けかけたところだぜ?」


「だよなぁ……わかった、あいつの相手は俺がする。ケンツとアリサさんはシャロンさんを探しに行ってくれ」



そう言うと、ユリウスはラーズソード滅ぼしの剣を握り、謎の男と対峙した。



「私も協力するわ!」


「ダメだ、多分あいつはアリサさんにとって天敵だ。絶対に戦っちゃいけない!」


「天敵?」


「二人はキュイとキリスを連れて、早くこの場から去ってくれ!」



なんだ?


『あの男はアリサにとっても天敵』と言ったな?


ユリウスはあの男の事を知っているのか?



「おい、俺とアリサがこの場にいるのは足手まといか?」


「悪いがその通りだ」



けっ、ハッキリ言いやがる。


だったら尚の事ここから離れるわけにはいかねぇぜ!


全振りしといてなんだが、俺にも意地ってもんがある!


せめて見届けるくらい!


と、言ってやりたいところだが……



「ケンツ、妙な事は考えるなよ?優先すべきはシャロンさんの救出だ!」



その通りだ。今は変な人情に流されている場合じゃねえ!


だがそれでもユリウス一人は心配だぜ。



「おまえ一人で大丈夫か?」


「大丈夫、いざとなったら逃げる」



逃げる?


ユリウスが逃げる事も視野に入れているだと!?


こりゃただ事じゃねえな。



「わかった、絶対に無理するなよ!」



俺はユリウスにこの場を任せ、アリサと共にこの場を離れようとしたのだが……



「なんだ?召喚勇者がいなくなっているぞ?」



どうやら俺とあの男が戦っている間、召喚勇者は息を吹き返し遁走したようだ。



「ちくしょう、シャロンの手がかりが消えちまった!」


「ケンツさん、ここに来る直前、東に向かって走り去る男の姿を見たわ!」


「東か!」



俺とアリサはそれぞれキュイとキリスを担ぎ、召喚勇者の追撃に入ろうとした!


刹那!



ドラゴンパペット竜族の傀儡!』



 ― ギパァッ!



 爬虫類のような男の目が大きく見開かれ、怪光線がアリサとユリウスに降り注ぐ!?



「むおっ!?」

「きゃっ!いったい何!?」



うぉっ!なんだ、今のは!?



「おいアリサ、ユリウス、大丈夫か?」


「特になんともないみたい?さあケンツさん、早く」



アリサは驚きはしたものの、特に問題は無いようだ。ユリウスも変化は無い。



「何もないみたいだな、じゃあ行くぜ!」



俺とアリサは今度こそ西に向かって駆けだした。





*





Side ユリウス



『むぅ、効果が見られんか。耐性があるのか、何かアイテムでも持っているのか……』



なんだ、今の怪光線は?



「いま何をした!?」


『さてな。それよりそっちは、もうよいのか?』


「ああ、待たせたな」



改めて対峙。


目の前の男は訝しげな目で俺を見ている。



『その希薄な気配……うぬはいったい何者だ?それに先程の斬撃には、僅かに聖属の魔力が混じっておったようだが?』


「…………いくぞ!」



― バシュッ!



俺は奴の問いを無視して斬撃を飛ばす!


魔力も何も込めていない、純粋な斬撃飛ばし。



『なんだ、この斬撃は?』



― バシッ!



男は斬撃波を片手を振って粉砕し、つまらなそうな顔で俺を侮蔑した。



『気合以外何も込められていない斬撃……先程の熱い斬撃は我の勘違いか。どうやら取るに足らない人間であったようだな』


「期待に沿えず悪かったな。だが取るに足らない人間かどうかは試してみろ!」



俺は自分の正体を悟られないように、魔力を抑えつつ近接戦闘に移る!


男もどこから取り出したのか、黒々とした長剣で向かって来た!



― ガキッ!ガキッ!ガキンッ!



『スピードだけはまあまあだが、そんな魔力の込められていない斬撃ではな』



ちっ、この禍々しい異質な感覚……


恐らくこいつは【邪竜族】か、もしくは冒険者に憑りついた【邪竜アパーカレス本体】だ。


邪竜族なら全力で叩けばいいが、もしアパーカレスなら俺の全力はこいつにとって極上の糧になってしまう。


残念だが、聖属の力を糧にする・・・・・・・・・ような相手では、俺には倒す事ができない。


どうする、「おまえは邪竜アパーカレスか?」と問いつめて正体を確かめるか?


少考するも、問い詰めるのはやめた。


俺が問い詰めれば、『アパーカレスを知る者が存在している』ことがバレる事になるからだ。


初撃の流星斬に僅かに聖属の力を混ぜてみたが、吸引されたようにも感じた。


こいつが邪竜アパーカレスである可能性はかなり高い!




「ケンツが奥の手を使えば何とか勝てそうだがな。今は俺が戦って時間を稼ぐしかない!」



― ガキンッ!ガキッ!ガキッ!



『ぬぅ、しつこい奴め!』



― ピクンッ……



『う?』



俺は力をセーブしたまま乱撃を繰り返したが、そのうち男に変化が現れだした。


どうやら勝負を切り上げようとしているみたいだ。



『まずいな。バークの意識が戻りかけている……おい 勝負はお預けだ!』


「何を勝手に!」



俺は飛び去ろうとする男を追おうとしたのだが、直上からいきなり!



― ドゴゴゴゴーーーーーーン!



「うおっ!?」



突然、邪悪な魔力波の直撃をくらい、押しつぶされた!


その間に謎の男は姿をくらましてしまった。



「くそ、協力者がいたらしいな。バンバラ様が言っていた邪竜族の方か?」



慌てて空に舞い上がり周囲を見回す。


が、男も協力者の姿も見当たらなかった。


その代わり、少し離れた場所で倒れている男を見つけた。



「おい、大丈夫か?」


「うう……シャロンさん……」


「 !? 」



この男、ケンツのライバルか!


名は確か……



「おまえ、バークだな。」



俺はバークに〈ラミア族の薬草〉を与え回復させた。



「あんたはケンツさんと一緒にいた……」


「ユリウスだ。いったい何があった?」


「実は……」



バークの話を聞いて、俺は顔をしかめた。



「さっきの召喚勇者にやられたのか。それが本当なら少し面倒だな」



先に救助されたキュイとキリス……


俺はバークの身に何が起きたのかを聞いた後、二人そろって東へと向かった。


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