073 第二十九話 召喚勇者の戯れ 06 ~兆しのバーク



いったい何がおきた!?



「今のはキュイとキリスがやったのか!?なぜだ!」



バークはヨロヨロと立ち上がり、困惑しながらキュイとキリスを問い詰めた。



「何故って言われてもねー」

「アタイ達はショーゴ様の付属物おんなだもんねー」



キュイとキリスはニヤニヤしながらショーゴの両脇から身体を絡めた。



「まさか……二人とも魅了されているのか!?」



バークはキッとしてショーゴを睨みつける!



「何を言っているんだバーク、おまえは男として俺に完敗してんだよ。なあ?二人とも」


「そうそう、あんたバークなんかよりもショーゴ様の方が何倍も素敵なの♡」

「アタイ、どうかしてたわ。あんたみたいなダサい真面目君なんかもう用済みよ♪」



キュイとキリスはうっとりとした目でショーゴを見つめ、ショーゴはそれに応えるように二人にキスをした。


「あふぅ……」

「んくぅ……」



そんな三人の痴態を見せつけられ、バークは激昂する!



「ふざけるな、何が完敗だ!全部〈勇者の魅了チャームアイ〉とか言う外法の仕業だろ!キュイ、キリス、しっかりしろ!その想いは全てマヤカシだ!戻って来てくれ!」



バークは悲痛な想いでキュイとキリスに訴えかけた。



「だ、そうだが、おまえ達どうする?」



ショーゴはキュイとキリスの胸を弄りながら二人に問うた。



「んくっ……アタイ達はショーゴ様の付属物」

「誰があんなゴミの元へなんか……んはぁっ」


「そんな!うわああああああああああああああああ!」



二人は艶めかしく悶え喜びながらバークにノーを叩きつけた。


愛するキュイとキリスからの確かな拒絶にバークは激しく狼狽し、精神メンタルは大ダメージを負った。


そしてショーゴはキュイとキリスの返事に満足すると、二人に非情な命令を下した。



「んー、二人ともいい返事だ。さてそれじゃ、次はおまえ達の愛を試させてもらうぞ。あいつバークを殺せ!そうしたら朝までタップリと可愛がってやる!」


「「イエス、ブレーブ!はい、勇者様!」」



ショーゴが二人の胸から手を離すと、憎悪に満ちた目をギラギラさせて、キュイとキリスがバークに襲い掛かった!



「二人ともよせ!」



向かって来る二人にバークは狼狽して躊躇う。


しかしその躊躇いは、格下の相手とはいえ命とりになりかねない!



ソルデグラス!氷の大地!



― カチーン



「っ……!?」



キリスの冷凍魔法!


大地が氷で覆われ、バークの動きを制限!



覇号大地斬!はごうだいちざん!



― ドッシャーン!



「うぉっ!?」



大ジャンプからのキュイ渾身の斧撃!


バークは辛うじて避けるも、キュイの斧撃が氷った大地をズタズタにして、足元をさらに悪くした。



「はは、やるねぇ、お嬢ちゃん達!」



ショーゴは手を叩きながら高見の見物。もちろんここぞという場面で介入するべく力を溜める!



チェイス追跡型ファイヤーボール大火炎球!」

烈灰怒号れつかいどごう殲滅破せんめつは!」



全く手を緩めないキュイとキリス!


ショーゴに背中を晒さないようにしながら必死で躱すバーク!



「やめろ、正気に戻ってくれ!」



バークは必死で呼びかけるが二人には全く響かない。


むしろバークの声が聞こえる度に、キュイとキリスはイライラして憎悪が高まってしまう。



「うるさいな!」

「あんたの声を聞くとイライラして仕方ないんだよ!」


「くっ………!」



二人は全く魅了から解ける様子は無く、バークは諦めてキュイとキリスの意識を刈り取る決断をした。



「許せ、キリス、キュイ、少しの間眠っていてくれ!」



そしてキュイとキリスをミ峰打ちしようと攻撃に転じ、一瞬ショーゴに背を向けた瞬間!



「やっと背を向けたか、ジゴブレイク勇者の雷斬!」



勇者必殺の剣技、マックスパワーのジゴブレイク勇者の雷斬


大閃光とともに、雷斬波がバークを、さらにはバークに襲いかかろうとするキュイとキリスに向かって放たれた。



「ぐっ、あいつキュイとキリスを巻き込む気か!サンダーブレイク破壊の雷斬!」



全力には程遠いバークのサンダーブレイク破壊の雷斬


黒き雷斬波がショーゴの雷斬波にぶつかるが……



「うわああああああああああああああ!!!」


「「きゃああああああああああああああ!!!」」



ショーゴの放ったジゴブレイク勇者の雷斬は黒き雷斬波を飲み込み、バーク、キュイ、キリスに大ダメージを与えた。



「ぐぐっ……」


「…………」

「…………」



バークの放ったサンダーブレイク切り返しにより、三人は辛うじて命だけは助かった。


しかし三人とも瀕死の重傷であり、キュイとキリスは意識を失っている。


バークも地に張り付き意識が途切れる寸前だ。



「へえー、あれで死なないとは流石に驚いたぜ」


「ショーゴ……きさま……」



もはやバークは指一本動かせない。勝敗は確定した。





「お嬢ちゃん達、死なないとは運が良かったな。あとで回復させてやろう。だがバーク、テメーは殺す。ユキマサが生かして連れてこいと言っていたが、勇者と互角に戦うような冒険者を生かしておくわけにはいかねぇ!」



― バチッ!バチバチッ!



ショーゴの持つ聖剣に力がこもり、刃の上で雷が踊る!



「くそ……無念だ……キリス、キュイ……そしてシャロンさん……すまない……僕は誰も助けられなかった……」


「ん?くたばったのか?」



ショーゴにトドメを刺される前に、バークは気絶して意識は闇に沈んだ。




しかし同時に浮上する〈別の意識〉がバークの身体を支配し始めた!



(バークめ、意識を手放したか、ふふふ……)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る