066 第二十七話 ミヤビとバンバラ(裏話有り)
今から3000年程前の話。
水の女神アクアリウスの眷属である水蛇の化身ラミアは、自身も神を目指すべく日々神となる修行に励んでいた。
やがてラミアは眷属から亜神へと昇格した。
その1000年後、
その大異変は、
さらに350年後(1600年程前)、亜神ラミアは突然
強制召喚を
セフィースは主神が残した【勇者】を欲しく思い、自前の勇者を作るべくその素材として二つの並行世界から無作為に生命体を呼び寄せては実験していた。
ところがセフィースの手違いで、亜神ラミアを実験の被検体として召喚してしまったのだ。
すでにリアース世界で亜神ながら主神としての地位にあったラミアは帰還することを望んだが、面倒くさがり屋の
しかしラミアは350年ぶりに再会した【水の女神アクアリウス】と【山の女神エリシューム】の協力を得て、200年の歳月をかけてリアース世界への帰還システムを完成させた。
そして
それらを管理する者・守護する者として、自身と酷似した【ラミア族】と【魔物レッサーラミア】を創り残し、亜神ラミアは
それからさらに1600年もの歳月が流れ、亜神ラミアに憧れたラミア族の一人の美少女が、新たな亜神になるべく修行を積んでいた。
それが現人神ミヤビである。
「とまあ、これが私達ラミア族のルーツです」
クッソ真面目な顔して解説していたミヤビは一転、“ふんす“と鼻息を荒くふかしてドヤ顔を向けた。
いやいやミヤビさん、あんた今の説明でドヤ顔するポイントなんてないし?
それに自分の事を“美少女”なんていうあたり、なんというか大変痛々しいんだが。
ていうか、年齢的には“少女”ではなく“オバチャン”とか“オバアチャン”なのでは……
でもまあ興味深い話ではあるぜ。
「へー、ミヤビの先祖にそんな秘密があったとはなぁ。なかなか驚いたぜ、なあアリサ、ユリウス」
初めて聞くラミア族の話に興味津々の俺だったが、アリサとユリウスはと言うと、
「実はラミア族の話は知っている。以前仲間だった
「ユリウスさんも?私も親友のリアース人からその話を聞いたことがありますよ」
なんだこいつら?
リアース人の仲間?親友?こいつらの交友関係っていったい……
いや、王国の連中には普通なことなのか???
「ちなみにその亜神ラミアと邪竜アパーカレスにどんな関係・秘密があるんだ?」
ラミア族であり亜神を目指しているミヤビがかんでいるんだ。
何かとんでもない秘密があるに違いねぇぜ!
「いいえ?全然全くの無関係ですよ。秘密なんてありません。邪竜アパーカレスの件は、私も巻き込まれたようなものですので」
ぶっ、関係無いのかよ。
「ケンツさん、実は私とユリウスさんは……」
ミヤビの話によると――
ある晩、ミヤビの夢枕に【古の大賢者バンバラ】が立ち、次の言葉を残したそうだ。
『いつかユリウスなるものが現れる。その時が来たらミヤビは彼と行動を共にするのです』
やがてミヤビの村に本当にユリウスが現れ、ミヤビはそれから行動を共にした。
ミヤビとユリウスは、政都、マハパワー、フェレングと巡り、そして南方の【バンバラの村】に到着したとき、バンバラの慰霊碑の前で二度目の五百年を過ごした
バンバラは、昨今のアパーカレスの眷属である復活竜の活発な活動を疑問に思い、ユリウスとミヤビの力を借りて、【アパーカレスのダンジョン】へ調査へと向かった。
そこでアパーカレスの亡骸を確認したあと、死因を確かめるために位相を変えて過去へと向かったのだ。
そこで見たものは、『アパーカレスが二人組の女に倒され、さらにはアパーカレスの生命エネルギーを黒き魔石へと凝縮し、冒険者と思われる男に埋め込んだ』というものだった。(第五話01参照)
いや、厳密には見たのではない。この二人組の女は、信じられない事に絶対に察知できないハズの位相を変えたバンバラ達に気付き、強烈な
ユリウスはノイズだらけの時空の中で、なんとか彼らの会話を端的に拾い上げ、アパーカレスから創り出された黒き魔石は途中で現れた冒険者?と融合したと断定したのだった。
(ただし、黒魔石が冒険者と一体化したからと言って、アパーカレスが復活するのかというと、それはまた微妙なところらしい)
「二人組の女に黒魔石?……冒険者?……」
どうやらアリサはその二人の女に心当たりがあるらしい。
そう言えば、前にユリウスが黒魔石の話をしたときもアリサは驚いていたな。
気になって訊いてみたところ、アリサは「全世界規模で破壊工作しているテロリスト」とである可能性が高く、しかも二人はすでに死亡していると説明した。
またミヤビもその二人の事は既知だったらしく、死亡していると聞いて大変驚いていた。
「ねえ、その冒険者ってもしかするとバークさんじゃないのかな?」
アリサは俺と同じ疑惑を口にした。
俺もその冒険者はバークではないかと思ったぜ。
普通の文学青年で普通のポーターであるバークが、いったいどうやってあんな力を付けた?もしや邪竜の力を授かったせい?……と。
しかしよくよく考えればその冒険者がバークであるはずがないんだぜ。
何故なら……
「アリサ、俺もそうかと思ったがバークじゃないぜ。時期的にその頃のバークはまだ冒険者じゃない。力の無いポーターだった。だから常に俺達と一緒に行動していたんだぜ」
確かにバークを怪しいとは思った。
それにあいつは邪竜アパーカレスのダンジョンで隠し通路を見つけたことがある。
しかし俺達はそれを無視して通り過ぎた。足を踏み入れていないんだ。
その後、弱っちいあいつが一人でダンジョンに入るとは思えねえ。
「あれ、そうでしたか。ではバークさんの能力は普通に
「たぶんな、しかし誰と融合したんだろう。真っ先に思い当たるのは、やはりバロンかブルーノあたり……あいつらいかにも〈邪竜の邪〉って感じだしな」
いや、バロンとブルーノだけじゃない。
この一年程を振り返れば【イジメ返しリスト】に載っている冒険者はみんな怪しいぜ!
いっそあいつら全員容疑者扱いにして討伐してやろうか。
そうすりゃ一石二鳥だ。我ながら名案だぜ!
なんて真面目に思案していたら――
「でも〈邪〉ならケンツさんの方が上ですよ」
「そうかケンツ、やはりおまえだったのか!」
アリサとユリウス、こいつら二人してニヤニヤしながら俺を指さし
「テメーら本気で怒るぞ!こっちは真面目に考えてるのに!」
「ふひひ♪」
「ふへへ♪」
イラッ!
こいつら特訓で野次るのも、人をおちょくるのも、腹立つくらい息が合いやがるぜ。
まあでも、事情を知らないヤツなら俺が怪しいと思うかもな。
三週間前までゴミムシだった俺が、一気にV字回復してんだから。
本当、短期間のうちに随分と力を付けたもんだぜ。
ユリウスとミヤビの言う『力を持つ者の責任』だっけ。そんな大層なもん
「よーし、休憩は終わりだ。特訓を再開するぜ!」
俺は
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