064 第二十六話 トレーニング 01



― キンッ! キンッ! ドカッ!



バークに挑戦状を叩きつけた翌日から、アリサ、ユリウス、ミヤビの三人を相手に俺の猛特訓が始まった。



「ブハッ! ぜー……ぜー……きっつい!」



「おいケンツ、これぐらいでスタミナが切れるようじゃバークには勝てないぜ?」


「ユリウスさんの言う通りです。真剣勝負は最初の30秒以内で決まらなければ長期戦必至ですよ!」


「ケンツさんにはリットールの運命が掛かっているのです。これくらいでへばっていてはアパーカレスには勝てません!」



おまえら好き放題言いやがって!スパルタにも程があるだろう!



「おまえら全員人外級じゃねーか!ちょっとは手加減しろっての!このクソッタレ共め!」



― ガキンッ!



アリサとユリウス、この二人やはりと言うか当然と言うか、人外級の強さだった。


しかしこいつらと来たら……



「人外級?いえいえケンツさん、私はただの二級冒険者だから」

「俺も二級冒険者だから手加減なんてとんでもない。本気で相手しないと特訓にならないだろ」



はぁ?


なんでこいつら二級冒険者で登録してんだよ!おかしいだろ!


スラヴ王国では二級登録で頭打ちなのか!?


し か も だ !


まさかミヤビまでもが【えげつない強さ】だったとは!?


この現人神、まさかのダークホースだったぜ!



「じゃあケンツさん、次は私がお相手しますよー!」



― どろん!



「 !? 」



なんとミヤビは人型の変身を解いて、オッパイ丸出しのラミア形態になった!


この現人神、実は下半身が大蛇のラミア族で、ラミアの祠の管理人であるレイミアの妹なのだ。


人里に暮らしているので普段は可愛らしい美少女姿だが、ラミア形態の方が本当の姿らしい。


またミヤビはアドレア連邦からは現人神扱いされているが、実際は亜神一歩手前の高位な存在だそうだ。


その為だろう、ミヤビは独自の不思議な魔法を使う。



シャフン創造、魔槍グングニール!」



ミヤビの手の周りに不思議な粒子が集まり、それが長槍の形へと集束してく。


錬金術のようで錬金術じゃない。


この世界の女神達の系統ではなく、『この世界から異世界に渡った亜神ラミアの【破壊と創造】を司る魔法です』とか本人は言っていたが、俺にはよくわからない。



― ブオッ!ブオッ!ブオッー!



ミヤビは巨大な生乳おっぱいをバインバインさせながら、魔槍を振り回してきた!


うわっ、ちょっ、おまえ!危ないから!あと羞恥心とかないのか!?


ハッキリ言って、目のやり場に困るぞ!



― ブオッ!ブオッ! バインッ!バイーンッ!



ミヤビが魔槍を振り回すたび、ガンツフィールド英雄空間内にソニックブーム衝撃波生乳おっぱいが荒れ狂う!



「うふふふふ♪そーれ、それそれ♪♪」



やめろ、死ぬ!バークと勝負する前に死んでしまう!



「し、身体強化!しゅ、縮地法!……うげっ!?」



堪らず身体強化と縮地法で距離を取ろうとしたが、後頭部に突然“スパーン!”と快音が響き衝撃が走った!


何事かと振り向けば、なんとアリサがハリセンを持って仁王立ちしているではないか!?


そのハリセン、どこから出した!?



「ダメです!身体強化と縮地で逃げたら自力がつかないでしょ!」

「そうだぞケンツ、これくらい素の力だけで避けなきゃダメだ!」



おまえら、ソニックブーム衝撃波が発生してるんだぞ!音速を超えてるんだぞ!縮地と身体強化無しで避け続けられるわけねーだろ!


俺は常識知らずどもに反論した!


しかしアリサは反論の反論をする!



「ケンツさん、忘れたんですか?バークさんの斬撃も、ソニックブームを発生させていましたよ」


「 ! 」



そうだった、うっかりしてたぜ!


バークの野郎の斬撃も、たしかにソニックブームが発生してたんだった!


ミヤビのソニックブームで怯んでる場合じゃないぜ!



「ちくしょう、やってやらぁ!だりゃああああああ!!!」



俺は何度も何度もミヤビに向かっては玉砕を繰り返す!



「ケンツさん、その意気です!気合と根性があればどんな困難な事だって乗り越えられます!」


「そうだケンツ、おまえの力はそんなモノじゃないはずだ!もっと根性見せてみろ!気合だ気合!」



うるせー!外野でわーわーヤジるな!


こいつら、揃いも揃って脳筋かよ!


さっきから根性論・精神論ばかりじゃねーか!!


もう少しマシなアドバイスとかないのかよ!?



「うふふふふ♪おほほほほほ♪うひゃひゃひゃひゃ♪」



ミヤビはミヤビで、なんか妖怪蛇女化してるし!?


なまじ可愛くておっぱいがデカいだけに余計怖いぞ!



― ブオッ! ブオッ! ブオッー!

― ブルンッ! ブルンッ! バイーンッ!



「ひええええええ!!!!」



冒険者達のイジメの方がよっぽどマシだぜ!


ほんと油断したら死ぬ!



「ケンツ、下がるな前に出ろ!」

「ケンツさん、気持ちが負けていますよ!」



おまえら息が合い過ぎるだろ!もう付き合っちまえよ!


しかしこいつらの無茶な特訓は、一人稽古では絶対に鍛えられない部分を確実に伸ばしてくれた。


動体視力と肉体の反応速度、さらには元々得意としていた相手の動きに対する未来予測、わずかな魔力の流れまで……相手の動きに対しての反応速度がどんどん発達したのだ。



「いける……この調子で力を付ければ、身体強化無しでもバークといい勝負できそうだぜ!」



もう自力の伸びしろは見込めないと思っていたが、まだまだ全然いけるじゃねーか。


さすがに“人外級二人と妖怪現人神一匹”を相手に特訓すると伸びが違うぜ。


俺は正直、身体強化の倍率が今回の勝負のキモだと思っていた。


だがそれは間違いではないにしろ、少し浅はかだったかもしれねぇ。



しかしなぁ……



「な、なあ……もっとこう精神論・根性論ばかりじゃなく技術的なアドバイスもしてもらえると有難いんだけど……」



不満があるってわけじゃないんだけど、技巧派(?)の俺としてはやっぱり物足りないんだよ!



「技術的なアドバイス?だったらケンツ、俺の作った栄養ドリンクを飲め!効果は軍用ポーション並だ!これを飲んで特訓すれば理想的な筋肉が付いてスタミナも増大するぞ!」


「技術的なアドバイスですね?わかりました。ケンツさん、とにかく徹底的に身体をイジメ抜きましょう!大丈夫、死んでも五分以内なら私のヒールでなんとかなります!……たぶん」


「ふふふ、このさい鍛え抜かれたケンツさんの“種”で手を打つのも有りですね……ジュルリ……」



相談した俺が間違いだった。


なんかユリウスは“緑色のスライムみたいなタプンとした謎液体”を飲まそうと迫りやがるし。

しかも妙に生臭い!それ、絶対毒物だろ!


アリサはアリサで本気で殺すつもりで斬りかかって来るし。実際何度も斬られたし!

てか、身体をイジメ抜くってそれ技術じゃねーし!


ミヤビは変身を解いたせいか、なんかラミアの性本能がチラチラ見え隠れするし!

それに“種”って一体なんのことだー!?



こんなので俺、無事に武闘会を迎えられるのだろうか?


シャロン頼む!俺の無事を祈ってくれ!!!


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