048 第十九話 誘導拉致!?バロンとブルーノ 02
◆ギルド裏広場
Side ケンツ
「えっと、もういいですかー?」
アリサがニヤニヤと気持ちの悪い目つきで戻って来やがった。
「あ、はい。じゃあケンツ、私そろそろ行くね」
「ええ!?」
「わ、びっくりした。そんなに驚かなくても」
「だってよう、久しぶりにじっくり話せたのに……アリサ、飴玉やるからもう少し向うに行ってなさい」
「わーい!おじちゃん、ありがとう♪……って、何やらせるんですか。もうすぐ日暮れですし、召喚勇者と出くわしたら大変ですよ」
おおう、今日のアリサはノリがいいな。想い人の無事を確認できて、気分が良いのかな?
て、そうだった。リットールには三組の召喚勇者とその仲間が徘徊しているんだった。
奴ら
これからよりを戻そうって時に、シャロンが魅了されちゃたまらんぜ。
「わかったよ。じゃあシャロン、途中まで送って行こう」
「大丈夫よ。それにバークさん達三人と合流することになっているから。その……冷静でいられないでしょ?」
シャロンは申し訳なさそうに目を伏せて言った。
う……確かに、今バークと顔を合わせて冷静でいられる自信はねえ。
頭の中真っ白になって殴り掛かりそうだ。
だったら……
「なあ、今日くらいは無理に戻らなくてもいいんじゃねーか?」
やはりバークの元にシャロンを戻すのには抵抗がある。
自分からシャロンに【今はまだ一緒にいられない】と言っておきながら我儘なものだ。
シャロンと強く抱き合いキスしてから、俺の理性は七割がた崩壊しちまったぜ。
はぁ~~
シャロンの温もり、柔らかさ、香り、唇……
シャロンが俺をダメにするぅ……
だめだ、俺、完全にシャロンに魅了されちまったぜ!
いっそバークとの対決なんぞほっぽって、プランBを発動するか……
よし、シャロンが今日は帰りたくないと言ったらプランBに変更しよう、そうしよう!
しかしシャロンは――
「大丈夫よ、半年前のあの日から、私はバークさんとは仕事絡みでしか会わないから。大事な話があると言って来た時も、もう二人っきりになったことはないもの」
シャロンは心配かけまいと笑顔で言った。
シャーローンー!
俺を信じて健気に気丈に振舞ってくれるのはめっちゃ嬉しいんだが、今だけ甘えてくれたっていいんだぜ!
それに――
「でもよう、もし帰りに召喚勇者と出くわしたら……」
召喚勇者はマジでやべーし。
「大丈夫よ、今の私はまだバークさんの傘にいるから一級相当の武闘家の力を出せるわ。勝つのは無理としても逃げおおせるくらいは余裕よ」
確かに今のシャロンなら召喚勇者に逃げるくらいは出来るかもしれないけど。
いや待てよ、シャロンのこの
「なあ、シャロン。もしかして俺と一緒にいるところを誰かに見られるのを恐れているんじゃないか?」
「うっ……うん……大事の前に妙な噂が立ってイレギュラーな事が起きて欲しくないから……」
シャロンは少し不安そうな声で返した。
やはりそうか。万が一にもこれからの事に支障が出ないための配慮なんだな。
バロンとブルーノに見られでもしたらやっかいなことになりそうだ。アイツらはまだ俺を格下扱いしてイジメにくるからな。
それにベラに見られた日にゃ翌日にはギルド中に広まってしまう。
今の俺とシャロンは、思春期男女の秘密で純朴な関係みたいなんだぜ!
「わかったよ。だが気を付けて帰るんだぜ」
「うん。じゃあね、ケンツ!」
シャロンは何度もこちらを振り向きながら去って行った。
くー!シャロン、なんて可愛いやつなんだ!
必ず迎えに行くからな!
しかしシャロンを一人で帰した事に対し、アリサは眉間にシワを寄せ不満のようだ。
「いいんですか、一人で戻して」
「そんなワケないだろう、こっそり後を付けて見守るぞ」
召喚勇者がうろついているのにシャロンを一人に出来る訳がない。
「そうですよね!早く追いましょう!」
俺とアリサは、シャロンとかなり距離を置いて後を付けた。
ところが――
シャロンは召喚勇者と会わないように、大通りを避け路地裏を歩いていたが、それが仇となり見失ってしまった。
「まずいなぁ、見失っちまったぞ」
「困りましたね」
俺とアリサは慌ててシャロンを探したが見つからなかった。
*
視点変更~♪
一方シャロンは召喚勇者と遭遇することもなく、順調に進んでいた。
「この角を曲がれば待ち合わせのレストランまですぐだわ……えっ!?」
ところがシャロンが角を曲がろうとする前に、男が二人角から出てきた。
「やあ、シャロンさん」
「聞いたぜ、バークから離れるんだって?」
それはもちろんバロンとブルーノ!
「ど、どうしてそれを?」
「さっき広場を通りかかった時に耳に入ったんだよ」
「それよりシャロンさん、バークの元を離れるなんて本当に出来るのかい?そんなことしたら、またイジメに遭うぜ」
シャロンは、さっきの話がバークの次に聞かれたくない男達に漏れていたことに動揺した。
しかし動揺を表に出さず平然と答える。
「あなた達には関係ありません。そこを通して下さい」
「そんなに邪けんしないでよ。コロコロ」
「俺達はこう見えてもシャロンさんの
そう言いながらバロンとブルーノはシャロンの前に立ちはだかった。
二人して飴玉でも舐めているのか少し活舌が不安定だ。
「で、ケンツがバークに挑むんだって?」
「それでケンツが勝ってシャロンさんを奪い返すって?」
「(まさか、全部聞かれていた!?)」
「自分からバークに押し付けて置いて身勝手なヤツだぜ。だがそこはまあいい」
「でも、ケンツ如きがバークに勝てるのかねぇ?」
「それは……でもケンツは勝つ気です。私はそれを信じるだけです!」
ケンツを侮辱され、シャロンはキッとバロンとブルーノを睨んだ。
しかし睨まれた二人はクックックッと小さく笑う。
「な、なにが可笑しいのですか!」
「ククク……いやすまん」
「ケンツの妄言を信じるシャロンさんが気の毒でつい」
「俺達よりも数段弱いケンツがバークに勝てるワケないぜ」
「シャロンさん、現実を見なよ。あいつじゃバークに勝てない」
「勝負を挑むと言った割りには勝てる根拠を言わなかったじゃねーか」
「きっとケンツはバークに殺されるぜ。それでもいいのかい?」
「っ…………!」
ケンツがバロンとブルーノよりも弱いという言葉を浴びせられて、シャロンは返事に詰まった。
「そんなハズありません!私はケンツとバークさんが試験試合で戦っている所を見たんです!ケンツは復活を……」
「それでどうなった?」
「俺達は見ていないから詳しくは知らないけれど、バークにフルボッコにされたそうじゃないか」
「っ…………」
あの時、試験会場でケンツがボロボロにされたことをフラッシュバックしてしまい、シャロンは怯む。
「でも、ケンツだってあれから力を付けて……」
「ははははは、シャロンさん、もう一度言うけど現実を見ましょうや」
「ケンツがバークにフルボッコにされてからまだ四日だぜ?その間にどれだけの力が付いたって言うのさ」
「うぐっ……」
シャロン自身、凄く気になっている点を突かれ、言葉に詰まってしまった。
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