044 第十八話  告白 01


Side シャロン



「はぁはぁ、思ったよりミーティングが長くかかっちゃった。ケンツはまだいるかしら」



飲食ブースでバークパーティーとミーティングの後、私は時間を貰い皆と別行動をとった。




ケンツとアリサさんは、ギルド裏の広場で特訓中とのこと。


もう少しだけ――



「ケンツ……もう一目だけ姿を見てから……」



ドキドキしながら広場に向かい、角を曲がりかけた時――



「ケ、ケンツさん。もう堪忍して……私もう……」


「ふははは、誰が堪忍するものか!さあ大人しく言う事を聞け!」


「いやぁ!」



何か許しを乞うているアリサさんの悲鳴!


そして何かを強要させようとする無慈悲なケンツ!?


まさかケンツが性的な強要を!?


そんな!だってケイトさんは二人は男女の仲には絶対にならないって……


頭をハンマーで殴られたような衝撃が走り、一瞬気が遠くなる。



「ケンツ!」



私は角を曲がり、ケンツ達の行いを目の当たりにした!



「 え? 」



しかし私の目に写ったのは、想像とはまるで違う状況だった。





ペタボルト上級広範囲雷撃!」



― カッ!ガラガラガラ!



アリサさんの超極大の雷撃魔法!それがゼロ距離でケンツに炸裂!



「なんで!?ケンツが死んじゃう!!   えっ!?」



― ガラガラガラ……ひゅるるるん、ぽん!



「おほ、きたきた!雷撃魔法またゲット♪」



なんとアリサさんの雷撃魔法は、ケンツを殺傷する前にケンツの体内に取り込まれて消滅した!


ヘロヘロのアリサさんの横で、小躍りするケンツ!?



「ケンツさん、お願い……少し休ませて。さっきから何百回魔法を使ったと思ってるの!」


「アリサ、おまえ疲れはしているものの、魔力は全く切れそうにないじゃん。全然余裕だって。休ませろなんて甘えだ.!さあ次々!」


「酷い!か弱い女の子をぞんざいに扱って!ケンツさんサイテー!」


「か弱い女の子?どこに?そんなのどこにもいないぞ?さあ、次いくぞ!」


「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」



なにこの奇妙な行動……状況がまるで掴めない。


とりあえず、ケンツがアリサさんを手籠めにしようとしたワケじゃない事はわかったけど……



「はぁ、はぁ……あれ?ケンツさん、どうやらお客さんみたいですよ」


「なに?あ、シャロン!」



二人に見つかった!ど、どうしよう!!!


一瞬どうしていいかわからなくなり逃げそうになる。


逃げれば今以上に関係が悪くなることは無いわ。だから逃げなきゃ!


そんな破綻した論理が頭を支配しかける。



「(駄目、逃げちゃ!少しでも歩まなきゃ!)」



しかしどうしても恐怖がつきまとう。


過去のように何かを間違えれば、今度こそ永遠にケンツの傍に立てなくなるよう気がして足が竦むのだ。


それ以前に、ケンツはまた無視をするかもしれない。


あの“プイ”とソッポを向かれた時の悲しさと絶望感がフラッシュバックして、身体の動きがフリーズしてしまう。


そしてやはりケンツに対する罪悪感が……



「あ……う…………」



そんな固まる私に対して、アリサさんとケンツからの予想外の一言!



「シャ、シャロンさん、見てないで助けて下さい!ケンツさんが酷いんですよ!か弱い私に対して無理やり!」


「バ……バカ!そんな言い方したらシャロンが誤解するだろう!違うぞシャロン!俺は潔白だからな!如何わしい事は何もしちゃいねぇ!あとアリサは全くか弱くないからな!こいつは別名ゴリサと呼ばれる程の……」


「酷い、またゴリサって言った!」



私に助けるアリサさんと、全力で言い訳するケンツ。


必死すぎる二人。これ、どんな状況?


なんだかさっきまでの良くない緊張が一気に霧散してしまった。



「シャロン、こっち来てくれ!説明するから!おまえのせいだぞアリサ!誤解を招く様な助けを求めるから!」


「誰のせいだと思っているんですか!人をこき使い倒して!」


「わー!」


「ぎゃー!」



言い争うケンツとアリサさん。結構いいコンビかもしれない。


でもそこに男女の関係を臭わせるものは全く無かった。



「シャロン、聞いてくれ!今のはエロい事をしようとしてたワケじゃなくてだな……」


「それくらい見ればわかるわ。でも何をしていたの?」



ケンツと話せた!普通に話せた!嬉しい!嬉し過ぎる!



「ふふふ、聞いて驚け!今のは俺の新しい能力だ。その名も無限魔法貯蔵ソーサリーストック!」


無限魔法貯蔵ソーサリーストック?」


「どんな魔法でも吸収して回数分だけ放てることが出来る凄いスキルです。おかげでさっきからずっと魔法を掛けさせられてて……シャロンさんが来てくれて助かりました。もう疲れておなかペコペコです」



うんざり顔のアリサさん。


なるほど、さっきの奇妙な行いはそういう事なのね。


それにしてもケンツ、いつの間にそんな凄い能力を……



「コホン……あー、ところでアリサ、きみはお花を摘みに行きたくなったんじゃないか?」


「へ?いきなり何を…… ……あ、はい!ちょっと花摘みに行って来ます」



ケンツの意図を察したのか、アリサさんは、“ほほほ”と口に手を当てながら何処かに去ってしまった。


そしてこの広場には私とケンツだけ。二人になって空気がガラリと変わる。







「シャロン、やっと二人きりになれたな。大事な話があるんだ。今いいか?」


「え?あ、うん!いいよ!」



ケンツからの大事な話と言われ、とたんに足元がふわふわしはじめた。


ケンツ、期待していいの?それともまた絶望させられるの?


期待と不安――


私は緊張しながらケンツの言葉を待った。



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