037 第十四話 無限魔法貯蔵・ソーサリーストック


「ふぅー、食った食った!」


「ごちそうさまでした」



俺達は邪竜アパーカレスのダンジョンを後にして、地上に出て湖の畔で昼食を済ました。



「それじゃ早速次のダンジョンに向かいましょうか」



アリサは一刻も早く次のダンジョンを調べたいらしく、俺を急かして来る。



「ちょ、ちょっと待ってくれ。5分でいいから」


「なんです?」


「さっきバンバラから貰った力、無限魔法貯蔵ソーサリーストックとやらを試しておきたいんだよ。ちょっと俺に何か魔法を使ってくれねえか?」



この無限魔法貯蔵ソーサリーストックは、どんな魔法でも受けた回数分ストックしておくことができるそうだ。


アリサの雷撃魔法や回復魔法もストックできるはず……



「じゃあ、いきますよ?クリエイトウォーター飲料水生成!」



キラキラと金色の粒子が舞いながら、アリサの両の手からコンコンと清らかな水が溢れ出た。



「おお、うまそうな水だな!……て、そうじゃない!おまえの手から水を流してちゃだめだろ!」


「あ、そうか。じゃあもう一度、クリエイトウォーター飲料水生成!」



― バシュッ!



今度は砲弾のような水の塊が、俺にめがけて飛んで来た!



― ヒュルン!



ところがアリサの放った水の塊は、俺にぶつかる直前に吸い込まれるようにして消えた!



「おお、濡れずに吸い込まれたぜ!」


「これでストックされたの?」


「多分……ちょっと見てみようか。魔法目録カタログ!」



― ポン!



目の前に召喚勇者が使うステータスウインドウみたいなやつが開いた。


何をどうすればいいのか自然にわかる。便利なもんだぜ。


その目録の中に〈クリエイトウォーター×1 byアリサ・リースティン〉と、ちゃんと表記されてある!



「どうやらちゃんとストックされたらしい。アリサ、すまんがおまえの魔法をストックさせてくれ。いろいろ試してみたい」


「いいよ」



特に嫌がるそぶりも無くアリサは協力してくれた。


こいつ自身興味があるのかもしれないな。



ボルト生活電撃キロボルト初級電撃ギガボルト中級雷撃テラボルト上級雷撃ペタボルト上級広範囲雷撃テンタクルローズ鋳薔薇の触手プリズンローズ鋳薔薇の牢獄ローズウイック鋳薔薇の鞭身体強化ブーストアップストライバー絶対障壁ホーリーウォッシング聖なる強力洗浄!ヒール(回復)!セイクリッドヒール完全回復ホーリーライトボール聖光球体…………」



え、何この種類の多さ!?



「…………セイクリッド聖水ウォーター生成リサステーション蘇生! 」


「ストップ、とりあえずはこれだけでいい。全くアリサはどれだけの魔法を使えるんだ?」



俺は改めて魔法目録カタログを見た。


おお、あるわあるわ、こうしてみると雷属性と聖属性が目立つな。あとはエルフなんかが得意とするプラントマジック植物魔法の類か。


ん、色が薄い文字のはなんだ?……なるほど、取り込みはしたが使う事は出来ない魔法もあるのか。


蘇生リサステーションリザレクション復活なんてのもあるが、こいつは使えないようだ。


それにこの手の魔法は無許可で使う事は禁止されているはずだしな。


…………いや、こんな魔法まで使えるって、アリサってマジで何者だよ?



「とりあえず何か使ってみよう、あそこの大岩を目標に……キロボルト初級電撃!」



― ビリビリバキュン!



俺の放ったキロボルト初級電撃は小さな雷光を放ちながら大岩に見事命中した!



「で、出た……本当に出たぞ!?次は…… ギガボルト中級雷撃!!」



― ガラガラドシャーン!



今度はより強力なギガボルト中級雷撃を放ちまたもや命中!


大岩が少し砕けた!



「スゲー!これで俺も魔術師の仲間入りか!?今度はこれだ!テラボルト上級雷撃



― カッ!ガラガラガラガラ!バリバリバリ!ドシャーン!!!!!ゴゴゴゴゥゥッゥ……



うぉ、あの大岩が完全に砕け散った!こんなもん食らったら絶対に死ぬぞ!?



「こいつはスゲー!マジスゲー!見たかよアリサ、俺の雷撃魔法を!」


「よかったですね。でもそれ私の魔法ですけどね」



小躍りする俺をアリサが冷ややかな目を向ける。



「さあもういいでしょ。次のダンジョンに行きますよ」


「いや、ちょっと待ってくれ。一つ試したい事がある」


「え?」



― きゅっ



言うが早いか俺はアリサの手を握った。



「ケ、ケンツさん!何するんですか!!警察呼びますよ!!!」



― ゴッ!



「おわっ、あぶねえ!」



アリサは警察を呼ぶと言いながら、ぶん殴ろうとしてきた!なんてヤツだ!



「落ち着け、手をつないだままこれを見てみろ」


「え?」



そう言って俺は魔法目録カタログを指さした。



「あれ?使えないはずの魔法が使えるようになってますね???」


「ほんの思いつきだったんだがな。どうやら俺一人では使用不可能な魔法でも、アリサと一緒なら使えるようだ」


「そうなんですね。でも私と手を繋ぐより、私が自分で魔法を放てば済む話だし、あんまり意味は無いですね」



そう言いながらアリサはつないだ手を振りほどいた。


ちぇっ。それにしても可愛い顔に似合わず、手は剣ダコで少しゴツゴツしてやがるな。



「そうなんだよな。何か鋭い使い道ないかな?」


「無いと思いますよ。そもそもそう遠くないうちに、私自身リットールから去りますし」



あー、やっぱりリットールから去る気満々かぁ。


何とかアリサを繋ぎとめる方法はないものか……



「さあもういいでしょう?早く行きましょう!」


「おう、行こうぜ!どんな魔物が出てきても俺の魔法でやっつけてやるから安心しな!」


「だからそれ、私の魔法……もういいわ」



早く魔法を使いたくてウズウズしていた俺は、早足はやあしで次のダンジョンに向かったのだった。


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