036 第十三話 邪竜アパーカレスのダンジョン 03
とつぜん積層型立体魔法陣が現れ、それが俺達を遥かな過去へと引きずり込んだ!
「うぎゃああああああああああ!!!!」
「きゃあああああああああああ!!!!」
『わはははははははははははは!!!!』
…………
…………
…………
…………
『ケンツさん、大丈夫ですか?』
カナリアのような心地よい女性の声で名を呼ばれ、俺はうっすらと目を開けた。
そこには、古めかしいローブを羽織った色白で金髪碧眼の女性がいた。
年の頃は20歳くらいだろうか?絶世の美女といっていい程の美貌を放っている。
「う、なんだ……どうなった……あんた一体……」
「ケンツさん……何がどうなって……」
良かった、アリサも無事のようだ。
『お二人とも無事なようですね、よかった……御覧なさい、ここは500年前のアパーカレスのダンジョンです。そしてあそこで戦っているのは500年前の邪竜アパーカレスと私です』
指さす方向を見ると、なるほどアパーカレスと思わしき邪竜と、目の前の女と同じ姿の女が戦っている。
ふむ、どうやら向こうは俺達のことが見えないようだ。
むう、中々おっかねえ容姿をしているな、まあ俺には関係ないからどーでもいいけど。
『もうすぐアパーカレスは封印され、あそこの私もこの地に括り付けられてしまいます。そして私の封印の力が失われる500年後にアパーカレスは確実に蘇ります』
ん?今なんかひっかかる事を言わなかったか?
『そちらの方、アリサさんでしたか。本当は彼女を後継者にしたかったのですが……残念ですが、それは叶わないようです』
え、あれ?まさか?
『ですのでケンツさん、ケンツさんに私の力の一部を授けます。戦闘職のケンツさんならきっとうまく使いこなしてくれるものと信じています。どうか私の力を受け入れて貰えませんか?』
「えっと、その前に……あんた誰?」
あんた誰とは聞いたものの、誰かはおよそ察している。おそらくこの女は……
『私は500年前に存在した古の大賢者バンバラ、邪竜を封ずる者です。ケンツさん、先程はすみません、あなたの寿命を少し頂きました。おかげで一瞬ではありますが力が戻りました』
「ええええええええ!!!???」
「やはり大賢者バンバラ!……信じられん、あの性別不能なオッサン声のゴーストが、こんな美人だったとは!
いや、そんなことより寿命ってどういうことだ!俺はどれくらい寿命を失った!」
この女、なに人の許可なく勝手に寿命を削ってくれっちゃってんの!?
返せ!返してくれ!俺の寿命を返せーーー!!!
『すみません、過去に戻り力を取り戻すのに、どうしても必要だったのです。500秒ほどですが頂戴させて頂きました』
「ご、500秒???」
「8分33秒ってところかしら?」
おおアリサ、計算早いな!?
8分33秒か……許すか許さないか微妙なラインだな……どうしよう。
そうだ、力がどうのこうのって言っていたな、その内容で許すか許さないか決めてやる!
「で、力とは?」
『はい、ほとんどの魔法を取り込み溜める事ができるエディションスキル、《
「それは凄いな!ブレスや爪撃も耐えられるのか!?」
「いえ、物理攻撃はストックできませんので……」
なんだよ、全然確実じゃねーじゃん。
「邪竜以外の魔法もストックすることもできのか?」
『はい、それはもちろんです!』
おお、いいねー!使い方によっては俺もチートの仲間入りってか?
これなら8分33秒分の寿命を代価にするのも有りだな。
『この《
「よしわかった、その力を貰い受けよう!そして元の時代に戻ったら邪竜アパーカレスとやらを屠ってやんぜ!」
『おお、ありがとうございます!これでリットールの民が救われます!ううう……』
バンバラのやつ号泣しやがった、本当にリットールの事を愛しているんだな。
大した賢者だぜ。
バンバラは俺の胸に手を置いた。
― バシュウッ!シュルルルルルルルル……
途端にエディションスキル
「おお、おおおおお!?」
『はい、終わりましたよ。ではすぐ元の時空に戻します。戻ったら通路をそのまま奥に進んで下さい。最奥に邪竜アパーカレスはいます!』
「おう、まかしておけ!」
俺はグイとふんぞり返って了承した。
その時――
『ゲギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
邪竜アパーカレスの断末魔のような咆哮!
どうやらこの時代のバンバラが、無事アパーカレスの封印に成功したようだ。
よーし、邪竜アパーカレスとやら、貴様の醜悪な容姿はしかと覚えた!
500年後の世界で必ず屠ってくれようぞ!
『私はもう一緒に戻ることはできません、どうかリットールを!世界をお助け下さい!宜しくお願いします!』
― キュイイイイイイイイイイイン……
頭を下げる大賢者バンバラの前で、来た時と同じような立体魔法陣が展開し、俺とアリサは元の時空へと旅立った。
まああれだ、ヤバイ相手だったらアリサに全部押し付けるか。こいつならどんな相手でも余裕でなんとかするだろう。
― キュイイイイイイイイイイイン……
「ふう、無事戻ってこれたようだな」
俺は辺りを見回した。
バンバラのゴーストが居なくなっている以外は時間逆行前と何もかわらない。
いや、バンバラがいないということは、消えかかっていた結界が完全に消失したってことか。
たぶん何年も前から結界自体弱まっていたんだろうな。
「じゃあケンツさん、チャチャッと邪竜退治しましょ。時間がもったいないわ」
「おう、そうだな。行くか!」
俺達はバンバラの言った通り、奥へ向かって進み始めた。
「ケンツさん、この先みたいよ!」
「よし、やるぞ!アリサ、例の奴頼む!」
「了解、身体強化2倍!」
―ギュウウウウウウン!!!
「うほっ、きたきた漲ってきた!」
ミチミチと力が漲るこの感覚!身体パラメーターが二倍に上昇する!
「ふっふっふっ、まるで負ける気がせん!いくぜ!おりゃああああああ!」
「あ、ケンツさん待って!」
俺とアリサは邪竜アパーカレスが巣くっている最奥のホールへ突撃した!
「先手必勝!おりゃああああああああああああああああ!!!」
「はあああああああああああああああああ!!!」
二人して抜剣して邪竜アパーカレス討伐へ!
しかし――
「…………」
「…………」
邪竜アパーカレスは確かにいた。
そう、確かにいることはいたのだ。
ただし……
「「邪竜アパーカレス、もう死んでんじゃん!!!」」
俺達の目の前には、ミイラ化したアパーカレスの骸が横たわっていた。
どうやら邪竜アパーカレスは、だいぶ前に死んでいたようだ。
俺は500年前に目撃したアパーカレスを思い出し脳内で比べた。
うん、間違いない。完全にアパーカレスだ。
俺とアリサはどっと疲れが出てその場にへたり込んだ。
「はああああ、こんなえげつない脱力感は初めてだぜ……」
「こんなに長い前振りで、この肩透かしはないわ……」
いったい、俺達の時間旅行はなんだったのか?
でも、レアスキルぽい《
まあ、いっか。
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