011 第五話 バークの回想 01


Sideバーク



全ての始まり――

それは一年以上前に、ラミアの森の、とあるダンジョンに潜った事から始まった。

 

その頃の俺は、まだケンツさんに雇われて三か月目の新米

ポーターだった。




「ケンツさん、ほらここ!隠し通路がありますよ!」



そして俺は偶然にも巧妙に隠された通路を発見した。



「ああん?どこだよ?わかんねーぞ?おまえら、わかるか?」


「ん~、そんなものある?」


「無いよね?」


「ごめん、ちょっと分からない」



どういうことだ?彼らにはこの隠し通路が見えないのか?


結局彼らは隠し通路を攻略することはなく、また目ぼしいものも無さそうなのでダンジョン途中で帰った。





しかし俺はどうにも隠し通路が気になり、一番星(ファーストスター)の名を借りて、後日ひとりでラミアの森のダンジョンへ行くことにした。



「たしかここだ……あった!」



やはり隠し通路は存在していた。


どうやらカモフラージュの特殊な結界が張られているらしく、並の人間には簡単にはわからないようだ。



「うっ!?」



隠し通路を進むと白骨化した遺体が放置されていた。



「服のデザインが古いな、何百年も前に命を落としたようだ……うん?」



よく見れば遺体と一緒に霊(ゴースト)の姿も。


ダンジョンのゴーストと言えば、ほとんどが悪霊の類だ。


俺はゴーストに気付かれないようにスルーしてさらに奥に進む。



さらに奥へ進むと広いホールになっており、入り口には結界が張られていた。


元々は強力な結界だったのだろうが、かなり昔に張られたものらしく、経年劣化により弱体化しているようだ。この様子では、あと一年ほどしか結界は持たないだろう。


その結界の一部が壊され、人が通れるほどの穴が開いていた。



「…………」

「…………」


「…………!!!」



何やら話し声が聞こえる。一体誰だ、こんな所で何をしている?


俺は結界の穴から入りホールを覗った。



「では、どうあっても我々に下る気はないのですね?」


「クドイ、人間ゴトキノ軍門ニクダルホド我ハ落チブレテハオラヌワ!」



なんとそこには、一匹の禍々しい巨大なドラゴンと、対峙する怪しい二人の女の姿が!



「ならば仕方ありません。死病を司る邪竜アパーカレス、せめて我々の糧となっていただきましょう!」


「舐メルナ、人間ドモ!」




いきなり戦闘が始まった!


そしていきなり戦闘が終わった。


いや、戦闘にすらなっていない!?



「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」



ただ女性が何かをして、邪竜アパーカレスが断末魔を上げながらどんどん精気?を吸われ、ミイラ化し崩れ落ちた。


そして精気は一つの黒い魔石となった……ことはわかった。


女の一人がその黒い魔石をマジマジと調べる。



「同志ブリジット、これは駄目ですね。濁りが多くて使い物になりません」


「本当ですね、それにアパーカレスの意思も残ったままのようです。使い道も無さそうですし捨てますか……おや?」



ブリジットという女がこっちを向いた!



「そこの者、こちらに出てきなさい。出てこないと今すぐ殺しますよ」



バレてる!?


俺は腹を括り二人の前に姿を晒した。



「何者です?」


「冒険者パーティー〔一番星ファーストスター〕ポーターのバークだ。あんたらこそ何者だ?ここで何をしてい……ぐふっ!?」



一瞬にして間合を詰められ顔面を鷲ヅカミにされた!?



「ポーター?ポーターがなんでこんな所に一人で……」


「ほう、この者はどうやらアパーカレスの血を引いているようです。物凄く薄いですが」



ブリジットとかいう女の顔がニヤリと歪んだ。



「バークさんでしたか、あなたは実に運がいい」



そう言って先程の黒い魔石を胸に押し付けて来た!



― じゅうううぅぅうぅぅう……



「ぎゃあああ、熱い!苦しい!」



胸元から焼けるような苦しみが襲い、それが全身に広がる!


俺は苦しさから胸元を掻きむしった。


爪の間に皮膚と血がこびりつく。



「邪竜アパーカレスの血を引くものなら、その《出来損ないの黒魔石》の力を引き出す事も出来ましょう。さすれば勇者を超える英雄になれるかもしれませんよ」


「覚えていれば、また様子を見に来ます。ふふふ、せいぜいアパーカレスに身体を乗っ取られないよう気を付けなさい」


「あががが……うぅ……」



俺は気を失い、意識を手放した。





― ぴちょん


洞窟の天井から滴り落ちる水滴……それが額を濡らし、俺は目を覚ました。


もしかすると外は雨なのかもしれない。



「うっ……」



どれくらい時間が経ったのか。女達の姿はなかった。



「夢だったのか?……いや違う!」



― バッ!



俺は胸に違和感を覚え手で探った。


俺の胸には黒々とした魔石が埋め込まれていた。



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