010 第四話 魔法騎士(マジックナイト)アリサの事情 02(裏話有り)


ケイトから【ラミアの森・フォレストラビットの討伐】を詳しく聞いてみたところ、討伐は週四日のみの仕事で、それ以外は受け付けていないらしい。


つまり週のうち三日は空き日である。そして今日、明日、明後日と空き日が続く。


それを知ってアリサがケイトに訊ねた。



「ケイトさん、私達でも受けることが出来る高額案件はないですか?塩漬け案件でもかまいません」



へ? 塩漬け案件?



「え?塩漬けですか?そりゃ幾らでもありますけど……」


「紹介して下さい。どんな案件でも解決して見せます!」


「いやおまえ、いきなり何言ってん……」


「ケンツさん、そんな汚い姿で何が出来るの?なんでそんなに酸っぱい悪臭を漂わせたままで平気なの?穴の開いた靴で森の中を歩けるの?そんな姿じゃ不審がられて森林保安官に追い払われちゃう。剣の手入れもしていないみたいだし……ねえ、ケンツさん、お金ないんでしょ?だったら稼がなきゃ!冒険者なんでしょ!」



ぐぅ、言いにくい事をズバズバ言う子だな!


年長者にはもっと敬意を払ってだな……



「それに塩漬け案件なら、他の冒険者と依頼の奪い合いになることもないでしょ?」



塩漬け案件ってのは全部訳ありの難物件なんだよ!


わかってんのか、この娘?



「えっと、これなんか如何です?【レッサーワイバーンとサラマンダーの討伐 要三級以上 討伐料金40万ルブルから】」


「まてまてまて、レッサーワイバーンとサラマンダーの討伐で40万ルブルって安すぎるだろう!?そもそもなんで三級からなんだよ?完全に一級以上の案件じゃねーか!」


「だから塩漬け案件なんですよ、どうされます?というか当然断りますよね?」


「当たり前だ!こんなもん受けて――」


「受けます!ケンツさん今すぐ行きましょう!今ならさっさと倒して日暮れまでに戻ってこれますよ!」


「嘘だろう!?」



俺はアリサに引きずられてギルドを後にした。







4時間後――





― シャアアアアアア



結論から言おう、いま俺はいつもの安宿や公園ではなく、一泊三万ルブル(日本円で三万円)のそれなりに格調高いホテルでシャワーを浴びている。



「あんな人間ほんとにいるんだな……」



シャワーを浴びながら今日一日の事を回想する。


アリサという美少女は、いつの間にか白銀の鎧とマントに身を包み、どこから出したのか立派な聖剣を腰に下げ、これまたどこから現れたのか美しい白馬に跨り、俺を後ろに乗せ全速力でレッサーワイバーンが湧いたという村へ向かったのだ。


そして複数のレッサーワイバーンの前に着くなり空に舞い、雷を乗せた剣で纏めて一刀両断!


実にあっさりとレッサーワイバーンを屠り去った。


その上、これまた桁違いの雷撃魔法でサラマンダーどもを一瞬で殲滅!


あんなの見た事ねぇ!



俺か?俺だってもちろん活躍したぜ!


雷撃を受けてなお辛うじて生き残ったサラマンダーを、こう……プチプチと刺してトドメを……


いやぁ、討伐部位を持ち帰った時の驚いたケイトの顔を思い出すと笑いが止まらん!


それ以上に驚愕している冒険者どもの表情といったら……こんなに愉快な思いは久しぶりだ!



おまけに――



「ケンツさん、この剣は素晴らしい剣ですが、今のケンツさんには合っていませんよ。思い切って買い替えましょう!」



だとよ。


なんでおまえにそこまで世話を焼かれなきゃならんのだ!……とも思ったが、実質稼いだのはあいつ一人みたいなモンだし文句は言えねぇ。


そして買い替えた剣が俺と相性バッチリときたもんだ。


なんでも想い人が武器の鍛冶屋だったらしく、アリサもそれなりに目利きが効くとか。


マジなにもんだよ!?




そんな混乱する俺だが、確実な事が一つある。


俺はアリサというとんでもない宝を手に入れたってことだ!



最初は強力なヒール回復と強力な雷撃魔法と植物魔法に惚れこんだ。


しかし、アリサの凄さは魔法ではなく、もはや人外級とも言える身体能力と剣技にあったのだ!



「むぅ……」



アリサと一緒にいられる期間は【ラミアの森】の探索が終了するまでだ。


それまでに俺は、なんとしてでもアリサから技や知識を得て力を付けてやる!


そして俺は躍進し、やがてはシャロンをこの手に!


さらにはアリサも側室だか愛人だか、とにかくハーレムの一員として正式に迎えてやるぜ!


広いベッドで一糸纏わぬシャロンとアリサを両脇に抱え、そんでもってオッパイもみもみ……



「うぇひひひひひ!」



そんな夢想しながら、その夜はフカフカのベッドにもぐりこみ、ダニに噛まれる心配もなく熟睡したのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る