004 第二話 壊れ行く一番星 03
その日は久々にギルドに向かった。
シャロンは最近
なぜソロで稼ごうとしないか不思議だったのだが、その理由はすぐにわかった。
「ケンツさん、申し訳ないのですがあなたに回せる仕事は無いのです」
受付嬢のケイトが申し訳なさそうに断りを入れる。
「仕事が無いってどういうこったい!掲示板には三級相当の討伐依頼(クエスト)がいっぱい残っているじゃないか!」
「あなたとあなたのパーティー仲間には虚偽登録の容疑がかかっているのですよ。申し訳ありませんが五級相当の仕事までしか回せません」
「虚偽ってどういう意味だ!」
「三級程度の実力しかないのに一級として登録していたからですよ。疑いが晴れるまでは申し訳ないのですが……」
くそ、そういう事か!だからシャロンはソロで仕事を受けられなかったんだ。
「わかったよ、じゃあこの草むしりの仕事をやらせてくれ。五級相当の依頼だから可能なんだろう?」
俺は低賃金の草むしりの作業を受けた。
朝8時から夕方6時まで、10時間作業してたったの5000ルブル(日本円で5000円相当)。
それでも久しぶりに稼いだ金に嬉しくなって、俺は昔なじみのバーに行った。
「1000ルブルだけだ。他はシャロンに渡すぞ!」
そう思っていたが俺はすぐに酒に飲まれてしまい、いつしか俺はカウンターの隅で寝てしまった。
どれくらい眠っていたのか……俺は聞き覚えのある声に気付き目を覚ました。
ヒトリはシャロン。
最初は俺を迎えに来たのかと思ったがそうではなかった。
シャロンは俺とは違う男と会っていた。
もうヒトリはバークの野郎だ。
俺はシャロンに裏切られた……いや、見捨てられたのかと思い、全身の血が凍ったような感覚に襲われた。
が、話を聞いているとどうも違うようだ。
「バークさん。私になんの御用ですか」
「シャロンさん、随分やつれちゃったね。実は今日は君をスカウトに来たんだよ」
「スカウトですって?」
「そうだ、ケンツさんはもうダメだ。どうやっても浮かぶ事はもうない。だが君まで一緒に沈んでいくのは見てられないんだ。だからどうだろう、僕のパーティーに入らないかい?もちろん身体が目当てとかじゃないよ。純粋に君の力を貸してほしいんだ」
― ドクン
俺の心臓が跳ねあがった。
あろうことかバークが俺のシャロンを引き抜きにかかってやがる!
シャロン、頼む、断ってくれ!シャロン!シャロン!
俺を裏切らないでくれ!見捨てないでくれ!お願いだ、シャロン!
両の拳(こぶし)を額の前で握りしめ、俺は必死で祈り願う!
「……」
いや待て、何で俺は自分の口でバークを追い払わねーんだ?
なんでそうしない!
ちくしょう、なぜ俺は自信を持ってシャロンを守ろうと出来ねーんだ!
シャロン!シャロン!シャロン!
「お気遣いは有難いのですが、この話は聞かなかった事にして下さい……」
断った!シャロンが断ってくれた!
良かった!本当に良かった!
本当に!!!
本当に……
…………
……
……
本当にシャロンにとって良かったのか?
「なぜだ?あんな男と一緒にいて君に何のメリットがあるんだい?」
「メリットとか関係ありません。ケンツは私の特別なんです。苦しい時だからこそお互いに支え合わないと」
「それは幻想だよ、君の頬を見ればわかる。ヒールで治したようだが治りきってないからね」
「っ……」
「毎日がほぼDVなんだろう?シャロンさん、いつかケンツに殺されるぞ」
シャロンはカタカタと震え黙り込んでしまった。
「シャロン!」
俺は二人の間に乱入した!
「ケンツ!」
「ケンツさん?」
「シャロン、おまえはパーティーをクビだ、バークの元で可愛がってもらいやがれ!」
俺は心を鬼にしてシャロンに冷たく言い放った!
「ケンツ、違うの!誤解よ!私がバークと会っていたのは……」
「関係ない!おまえは俺に内緒でバークと会っていたんだ。それだけで別れるには十分な理由だ!」
「そんな、嘘でしょ!私はケンツだけを想って……」
弁明などさせない!させるものか!
させれば俺の決心が鈍る……
俺はシャロンとの話を強引に打ち切って、今度はバークを睨みつける!
「おいバーク!」
「ケンツさん、彼女の言うことは本当だ。誤解なんだよ」
「そんな事はもうどうでもいい。シャロンの事を頼む……」
俺はシャロンには聞こえないよう、小さな声でバークに耳打ちした。
「さよなら、シャロン……元気でな」
俺は泣き叫ぶシャロンから踵を返し、逃げるようにバーを後にした。
この日、シャロンと共に築いてきた【
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