002 第二話 壊れ行く一番星 01
◆リットールの街、冒険者ギルド
俺達は命からがら逃げかえる事に成功し、重い足取りで冒険者ギルドに戻った。
「おかえりない、ケンツさん。早速ですが討伐部位の確認をさせてください」
受付のケイトがニコニコ顔で出迎えてくれたが――
「あ、いや今回は失敗したんだ」
モゴモゴと口重くクエストの失敗を告げた。
「そうですか、それでは討伐部位を……いまなんと?」
ケイトは聞き間違えたと思ったのか、それでも少し驚いた顔で聞き返してきやがった。
全くイライラするぜ。
俺の胸中を逆なでしてくれたケイトに、半ば怒鳴りかけるようにもう一度言おうとした。
が―
「何度も言わせるなよ!だから失敗…………」
「すみません、追い詰めて両目を潰したんですが、谷に落ちて流されてしまいました。時間もないし他の冒険者に譲ってあげることにしたのです」
俺がキレれそうなのを察して、シャロンが咄嗟に出まかせを言ってくれた。
「ああ、そういうことですか。両目を潰されたレッサーベヒーモスなら3級……もしかしたら4級冒険者でも倒せますものね。後輩に譲るなんてさすがです」
「ま、まあな!駆け出しにもチャンスをやりたいと思ってな!はははは!」
「ですが申し訳ございません。クエスト失敗扱いになりますのでペナルティ料の発生と、戦歴に傷が付いてしまいますが……」
「ん?ああ、いいってことよ。それくらい大したことないさ。ま、こんな事もたまにはあらーな!」
俺が見栄を張っている間、シャロンはペナルティー料を支払ってくれた。
その後、俺達はギルド内の飲食ブースで緊急ミーティングを行った。
―どん!
「いったいどうなってんだこりゃ?」
俺は不機嫌さを隠さずテーブルを強く叩きつけながら皆に問うた。
「わからない…でもヒールの効きは弱かったし、身体の動きもイメージと全然違って鈍かったわ」
シャロンが首を捻りながら報告した。
「アタイも同じだよ。
「私もだ。いままで軽々と振り回せた戦斧が、今日は持つだけで精一杯だった」
「あのレッサーベヒーモスがデバフを使ったて言うのか?そんなバカな!?」
そんな事有り得ない。
ベヒーモス系魔獣はバフを使う亜種はいても、デバフを使うものは存在しないはずだ。
「ケンツ、多分そうじゃない。私は今日出発したときから戦斧の重さに苦労していたんだ。原因はレッサーベヒーモスじゃないと思う」
「じゃあ、なんだと――」
「ケンツはどうだったの?あの
ああ、そうだよ!気が付いているよ!
あのヘボイ威力はシャロンの言うとおり3級冒険者時代の俺そのものだ。
「あのさ、ちょっと気になる事はあるんだけど……」
「キュイ、昨日のことを言うの?」
「昨日の事?」
「なんだよ、行ってみろ」
俺はキュイに問いただした。
「昨日解雇したバークが去り際に言っていたんだけどさ……
『今まで1級冒険者として力を振るえたのは、僕がパーティー全体に強烈なバフをかけていたからなんだ』
……そう言っていたの。だからこれから苦労するってね」
「なんだって!?」
キュイのとんでもない発言に驚き目を丸くした。
「負け惜しみかとも思ったんだけど……」
「バークはあんな事言うやつじゃないからね……」
キュイとキリスは目を伏せ項垂れた。
「じゃあ何か?俺達の快進撃はバークあっての事だってのか?バカバカしい」
「アタイもそう思いたいんだけどさ……わかるんだよ。昨日までの力はもう無いってのいうのが……」
キリスの意見にキュイも頷く。
シャロンはまだ半信半疑だ。
バカな!
そんな事があってたまるか!いや、あっちゃいけねえ!
今までの勝利は全て俺達の実力じゃなかったなんて絶対に認められねぇ!
あいつが防御結界とバフの使い手だと?
少なくともあいつを雇った当時には、そんなスキルは無かったはずだ。
だいたい俺達がメキメキと力を付け始めたのは、バークを雇い始めてから3か月くらいしてからだ。
時期的に合わねぇだろうが。
「とにかくだ、明日からのクエストで戦ってみりゃわかる事だ。みんな気合入れていくぞ!」
「「「はい……」」」
俺はパーティーメンバーの気持ちを奮い立たそう気合を入れてみたが、弱弱しい返事が返ってくるだけだった。
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