第3話 魔術師の存在
この人にもう関わるのは、やめたほうがよさそうだ。桐山は心の奥底で決めた。
「・・・。まぁ、ありがとう。それじゃあ」
桐山が、速やかにその場を立ち去ろうと思ったが、何かに引っ張られた。チラッと見たところ俺の上着の端を引っ張っているサーシャの手があった。
「えっと、どうしたのですか。サーシャさん」
「感謝の気持ちはないのですか」
「はぁ、そりゃあるに決まってるだろ。なんせ地獄の果てまで追っかけられる勢いだったからな」
「では、私に何かしてあげたいと思ってるに違いないですよね」
あれ、この人先ほどの不良様ご一行よりめんどくさいやつに目を付けられてしまった。
桐山は、鬱をかますように頭に手を当てた。
「はぁー。で、何をしてほしいんだ」
「住むところがないのです」
「はい?」
「だから、住むところがないんです」
「もしかして、家に来ようと思ってるのか」
「駄目でしょうか」
「いや、俺は一人暮らしだ」
「では、好都合じゃありませんか」
「はぁー。お前がいいんだったらいいぞ」
「ありがとうございます」
こうやって、この恩着せがましい外国人を家に連れ込むという所業になったのだが、これは、果たして倫理的に良いものなのか。今も疑問に思う。だが、サーシャの方は別にどうってことないように桐山の後を付いて来ているだけだった。先が思いやられる。
そうして、家に着いた御一行はワンルームのベット近くのテーブルにお茶を出し、座っているのであった。
「それで、どこから来たんだ」
桐山はこの外国人の素性をとりあえず聞くことにした。
「私は、イギリスから来ました」
「イギリス・・・。何のために」
「魔術師を追ってきました」
「魔術師ってなんだ。さっきも魔法使いって言ってたけど」
「魔術師は、マジシャンですよ。こっちでは、手品師って意味らしいですけど」
「魔術師なんて存在するわけないだろ」
「ここにいますよ」
「ギフトとは、違うんだよな」
「はい。ギフトっていうものは、本当は、昔からあるのはご存知ですか」
「ああ。知ってる。霊媒師とかそんな感じの奴だろ」
「まぁ、そうですね。魔術っていうのは、昔のギフトを持つ人たちが、後世に自分のギフトを残すために作ったのです作ったのです。持たざる者が使えるようにと」
「まぁ、ギフトは、何でもありみたいの感じだからな。そういうこともできるのか。」
「それより、葵さんはなぜあの方たちに追われてたのですか」
「いや、俺のギフトってこの通り、電気なんだけど・・・」
自分の力を見せるように手を広げると、そこではバチバチと電気が火花をあげていた。
「私は、助ける相手を間違えたのでしょうか」
なぜか頭を抱えるサーシャの姿がそこにはあった。
「いや、勘違いだ。俺は、ぶつかったのにびっくりして、その体の表面に電気がバチッっとなっただけだ」
「ああ、そうなんですか。それより、お腹すきました」
「・・・・。お前もはや尊敬するよ」
桐山は、重い腰を上げるとキッチンに行き、有り合わせで作ることにした。いい匂いがしたのか、桐島から見れるサーシャは鼻をクンクンとさせていた。
「はいよ」
桐山はできた料理を持ってきた。それをすごい勢いで食べ始めているサーシャに今更だけど疑問がおきた。
「・・・。お前もその追っている魔術師もどうやって入ってきた」
「えっと・・・。それは・・・」
「不法入国なんだな」
「・・・・・はい」
いつの間にか食べ終わってる食器を前にうつむいているサーシャであった。
「じゃあ、民警にと」
桐山はズボンのポケットから携帯を取り出すと、民警に電話を掛けるために番号を押していた。
「そんな。やめてください。私捕まると国際問題じゃないですか」
そういうと、泣き目のサーシャは、服を引っ張ってくる。その反応を心の中で楽しんでから携帯をそっと閉じた。
「で、お前はいつまでここにいるんだ」
「はい?そりゃ、捕まえるまでです」
「おいおい、じゃあずっとここにいることになるかもしれないのか」
「はい。そうですよ」
ずっとここにいられてるのが困るからな。
桐山はこの状況を打破する唯一の方法を提案した。
「それ俺も手伝うぞ」
器より大きな才は出ぬ 虎野離人 @KONO_rihito
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。器より大きな才は出ぬの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます