第2話 魔法とギフト
この後授業もなく、すぐに帰宅となるわけだが桐山は、疑問に思ってしょうがなかった。
何故、自分が摸擬戦に出場になっているのか。それを問いただすまで、この会長を野放しにするわけにはいかない。
「氷華。なんで俺が摸擬戦に出るんだ」
「何か不満か。一年生の代表になれたのだぞ。もっと喜んでもいいものだが」
「いや、不満大ありだ」
「大丈夫だ。私に任せろ」
「何が大丈夫なんだ」
「相手校には、雷撃の舞姫と呼ばれる、プラチナのやつがいるらしい。私と同じダイヤになれる逸材らしいのだ」
桐山はその子を想像してみる、少し身震いが起きた。
「それがどうしたんだ」
「だから、捨て駒だ。どうせ大将で出てくるからな。葵なら死なないからな。たぶん」
「なんだ、捨て駒か・・。って、ふざけんな。死ぬかもしれないだろ」
桐山は怒りをあらわにする。この心まで凍っちまった冷血女に一言。しかし、思わぬ奴が返した。
「骨は僕が拾ってあげるよ」
金城をぶっ飛ばそうと画策する桐山の拳は、あっさり空をつくことになった。
「チッ」
「ひどいな。いきなり殴らないでよ」
「おい、お前らよそでやれ」
会長の一喝を受けた桐山と金城は変えることにした。金城とは、学生寮は真逆であるため校門で別れた後、桐山はというと。本屋にでも寄っておこうと思い至った。それがまさかあんなことになるなんて・・・。
何でこんな世界になってしまったのだろう。
そんなことを思ったことはないだろうか。
そんなことを思いながら、桐山葵は、走っていた。
「うわぁー。何でこんなことに」
そう叫びながら、いわゆる不良どもに追われてた。振り向いたところで、やはり追ってきている。ここで、止まって立ち向かっても、桐山が勝てる見込みはない。十人程度だ。さすがに無理であろう。
何でこんなことになったのかは、十分前にさかのぼる。
月明かりに照らされている街を歩いていた。ただ帰ってるだけだったのに、桐山はたまたま人にぶつかってしまった。その時、相手に少しだけ強い静電気が流れてしまった。
それにお怒りになったぶつかった人、もとい、ぶつかった不良に追っかけられるはめになってしまった。時間がたつごとに仲間を呼び、さらに追っかけてくる。地獄の果てまで追ってきそうな勢いだった。さすがに家に逃げ込もうものなら、桐山の家がばれてしまって、後々終わってしまう。
それで、こういう状況である。
「まだ追ってくるのか」
ちらっと後ろを向いた桐山は、不良が来てないのに驚いた。
「まいたのか。ふぅーこれで安心」
「はい。私のおかげですね」
なんだろう。幻聴が聞こえてしまってるのだろうか。桐山は、後ろを向いてみた。すると、そこには見知らぬ人が立っていた。黒いフード付きの修道服のようなものから、金色の髪の毛が見えていた。胸のふくらみ的にも女の子であることは、確かである。桐山は、状況を把握しがたかった。この女の子が、不良を一網打尽にしたとは考えにくい限りである。
「あの・・。誰でしょうか」
桐山は、顔の見えない女の子にとりあえず聞いてみることにした。
「俺は、桐山葵だけど」
「私は、サーシャです」
かぶっていたフードを取ると、その顔が露になった。名前の通り外国人であることは確かだった。
「不良さん方を退けたのですか。その、サーシャが?」
「はい。そうですよ。あなたが追いかけられてるところを見たので。少し不憫に思ったので」
笑顔でサーシャは、言ってるが。自分より明らかに体格の大きい不良たちを倒すことは至難の業であるだろうに。まさかとは、思うが強力な『ギフト』を持つのだろうか。
「『ギフト』を持ってるのか」
「いえ、私には、そういった異能を持ち合わしていません」
ギフトを持っていないのか。じゃあ、どうやって。
俺は、深く考えてみた。嘘をついているのかついてないのか。サーシャの顔は、ウソをついているようには思えていなかった。
でも、サーシャは、それを持ち合わせていないという。では、どうやって倒すことができたのだろう。まさか、なんかの武術の達人とか。
「何を考えているのですか」
「いや、サーシャはどうやって追い払ったのかなって思いまして」
「私魔法使いだからです」
サーシャの口から思いもよらない言葉が出てきてしまった。
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