第7話 無理ゲー攻略には災難はニコイチ

バッカニアの国王から頼まれた依頼を達成するためにニアニス王国にやってきたが、その依頼の内容はなんとFOMの没データアイテムである「アムーダの花弁」を手に入れるというものだった。ゲーム内に存在しないアイテムの入手に頭を悩ませていると突如として「アムーダの花弁出現イベント」が発生した。


「なんだ、こんなイベント見たことないぞ・・・」このゲームの没データを漁っていた時もこんなイベントが作られたログは残っていなかった。バグが多いゲームなだけに事前にバグの種類や内容は全て把握していたつもりだった。しかしまた目の前の画面に完全初見のイベントが発生している。未曾有の出来事はこの世界に来てすっかり慣れてしまったがこの時間制限がどうしても気になる。

残り25分。もしかしてこの時間までに花弁を見つけ出さないと詰むってことか?

このゲームでの詰みは死を意味する。もちろん、主人公である俺自身とゲーム自体の死だ。初めならば多少のステータス値が下がるぐらいで済むが、今の俺はステータス最低値まで下がってしまっているためにこれ以上のやり直しは効かない。現にスキルの「不死者の肉体」で死ぬことはないが、ゲーム自体が進まなくなってしまえばバグを使ってもどうにもならない。まさにゲーム自体の死だ。

そんなわけにはいかない。ゲーマーとしてもゲームの主人公としてもここで終わるわけにはいかない。

俺は走り出した。どこに花弁があるかもわからないがなりふり構っていられなかった。


おそらくニアニス王国の国民に花弁のことを聞いても設定されたセリフしか返ってこないだろう。つまりバッカニアより広大な国土を持つニアニス王国の中からたった一輪の花弁を探し出す。残された20分弱というあまりにも短い時間の中で。

アムーダの花弁の出現場所については法則性がない。設定では魔力が多く集まる場所を好み、蓄えた魔力を放出するために花を咲かせる。花弁が出現したのならばこの国の中で一際魔力の反応が強く出ている場所があるはずだ。

一応「勇者」のカテゴリーにある俺でも魔力を感じることは出来るが、魔法使いより鋭敏に感じることは出来ない。だがアムーダの花弁ほどの強い魔力を放つものになれば嫌でも完治することは出来るはず。走る速度も一切落とさず魔力感知に神経を集中させ、国中を走り回った。だがスタミナに限り走り続けても花弁は愚か魔力をつよう感じる場所すらも見つけられなかった。

「はぁ・・・一体どこにあるんだよ・・・」この時、既に時間は15分を経過していた。俺は近場にあった噴水の縁に腰を下ろし未だ花弁の気配すら感じられないことの焦りと橋回ったことによる疲労で頭が回らなくなっていた。一体どうすれば花弁をみうt蹴られるのか?当時から入手方法が不明なアイテムを一体どうやって見つけらればいいんだ。やがて焦りは苛立ちに変わり、思わず噴水の縁に向かって拳をぶつける。八つ当たりが良くないことなのはよくわかっているつもりだが後でもしないと自分が保てないところまできていた。拳に一瞬だけ残った鈍い痛みを噛み締めながら俺はふと心を落ち着かせるために噴水に目を向けた。ゲームのデザイナー、こっちの世界では職人が1から石を削って仕上げた噴水は実際に間近で見てみると細部にまでこだわった作りで装飾には綺麗な花が所狭しに彫られている。どんなゲームでも始めはそのゲームの特徴を掴むためにキャラや風景にいちいち感動を覚えていたものだが、いざエンディングまで行き集会プレイに入ると正直性能や効率だけに目が行き、しまいには飽きて違うゲームをまた始める。俺もいろんなゲームをやってきたクリアまで区とまたすぐに違うゲームの攻略に入る。もはや病気とも言える生活を送っていたが改めて間近で体感してみるとクソゲーでもバグが多くても目を奪われてしまうことはあるのだと気づかせれた。


あれ?そんなことに思いを馳せながら噴水を見ているとあることに気がついた。噴水の模様、そしてかなり微弱だが噴水の水が湧き出している箇所から魔力を感じる。

もしかして・・・。そう思った俺は噴水の他の模様も調べてみた。すると思った通り装飾だと思っていた細かな彫りは言葉になっていた


[汝、また花弁を必要とするものあれば水舞う空に大輪の花を咲かせよ。さすれば花弁は現れん]


一体何のことだ?水舞う空、大輪の花、

「雨でも振らせてなんかの花を咲かせろっていうのか?」

謎が謎が呼ぶ。ならば答えもまた答えを呼び寄せる。


噴水・・・水が舞う・・・大輪の花・・・


なにか頭の片隅に引っかかた俺はステータス画面からニアニス王国の地図を開いた。


この時、俺の謎解き脳に電流が走った。何度試しても揃わなかったパズルのピースがたまたま重なった偶然により奇跡を起こした瞬間だった。

「そうか!水舞う空、大輪の花とはこの噴水のことか!」ニアニス王国にはこの噴水と全く同じ作りのものがあと4つ存在し、台形状に出来ているニアニスの頂点にそれぞれ設置にされている。つまりこの言葉の意味は

「花が描かれている噴水をそれぞれ同時に起動させ、上から見た時まるで空に花が咲いているようする。それが花弁が出現方法っていうわけか!」

謎は解けた。だが、問題はこれからである。ここから後残り8分程度でニアニスの端にある噴水をそれぞれ放水し、花弁の形にするなど不可能に近い。ましてや今回始めて訪れたニアニス王国にはバッカニアのように頼れる人間はいない。一体どうすれば・・・。考えている暇は残されていない。俺はひとまず目の前にある噴水を水圧を低級魔法で一時的に堰き止め次の噴水がある場所まで突っ走る。しかし、いくらrベルが上がりステータスが上がっている俺でも端まで行くのには最低でも三分はかかる。次の噴水を制御できたとしてもその次の場所に向かうまでには制限時間が来てしまう。何か、、、なにか手はないか?

その時、俺の脳裏にある記憶が呼び起こされる。


[やっぱりFOMは裏世界から遠出するに限る]


この記憶は、俺がFOMの集会を初めて3週目の記憶。確かこの時はFOMを最速で半時間でクリアできるかのタイムアタックをしてたんだっけ?

どんなゲーム世界にも裏世界は存在し、それに入れるかどうかでバグとして機能するかが決まる。FOMの世界はどこからでも裏世界に入れるが一歩でも進む方向を間違えると一生なにもない裏世界を彷徨う羽目になる。俺は裏世界に閉じ込められる度に最初からやり直し何千回と試行を重ね、世界の全ての行き先を調べ上げた。

今その記憶が全て蘇った!

俺はひたすら走っていた街中を抜け路地裏へ。

「確かニアニス王国の端にいくにはここから行くと早いはず」

路地裏に点在している飲み屋の裏口の扉に飛び入る。そこはゲームの構成上ただの廃液として書かれてある場所で、そこに飛び入ることで裏世界に入る事ができる。

裏世界は先程も言った通り、真っ暗闇に包まれ方向感覚を失いやすい。自分が進むべき方向を見失わないよう進む必要がある。幸いなことに裏世界に入るとゲーム時間は停止する。理屈はわからないが、時間に追われている今、ゲーム時間が停止することはありがたいことこの上ない。しっかり歩数と裏世界に入る前に確認しておいた方角から見極め、長い移動距離をショートカットする。

ゲームだ東西南北で進む距離が決められている。棒有名ゲームでも同じような移動バグがあるがFOMものバグもそれにかなり酷似している。

東へ西へ、北から南へ。記憶のとおりに歩みを進め、最後の一歩を踏み込んだ瞬間、目の前に眩い光が現れ、俺はその光の中に飛び込んだ。すると眼前には背景は全く違えど確かにあの噴水が目の前に設置されていた。

「時間は、、、?」ステータス画面からミッションの残り時間を確認。かなりの距離を歩いたはずだが時間あ先のどの場所から離れてまだ一分ほどしか経っていなかった。

「よし、うまういった!これで残りの噴水も、、、」

2個目の噴水も低級魔法で抑え込み、次の噴水へ向かうべく再び裏世界へ入る。


残り時間は4分と噴水は3個。間に合うかはもはや掛に近かった。


裏世界を移動しつつ逸る気持ちと一歩でも間違えたら終わりだという相反する感情を入り混じ合わせながら噴水を放水させていく。そして、、、



「これで最後だ・・・・花弁よ、姿を見せよ!」

残り時間30秒。最後の噴水を放水し、一斉にこれまで堰き止めていた魔法を解除した時だった。

国の端々から噴水の水が空へ勢いよく放たれ、ニアニス王国に巨大な虹がかかり、噴水の透明な水をまるで色鮮やかな花びらのように色づかせる。虹色の雨が国中に降り注ぎ、公民したその時、足元に見たこともない花が突如して花を咲かせた。

花びらは光を当てると七色に光る性質をもち、それを手にすれば一度魔法使いは大賢人ほどの魔力を得て、魔法を使えない人間が持つとその身に魔力が宿るらしい。

他にも様々な噂はあるがこの際どうでもいい。これでとりあえずバッカニアの国王からのミッションは達成した。あとはこれを持って帰るだけなのだが・・・。

ここで俺はふと違和感に気がつく。

「あれ・・・?」先程まで目の前に広がっていたアムーダの花弁が・・・ない!



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