第4話 結ばれたリボンはやがて解ける
彼は「嘘が嫌いなんだ」「嘘をつかないって約束してくれる?」とはじめてのデートで私に言った。
「過去にトラウマでもあるの?」と私は彼の深刻そうな表情と遊園地という場所の不釣り合わなさに笑いながら、差し出された彼の右手の小指に、私の右手の小指を絡めた。
誠実な人なのだろうとこの時は思っていた。私も彼に釣り合うように同じように誠実に向き合っていこうと決意までしていた。阿保らしいと思うかもしれないが、私は彼を信じていた。彼を疑う必要なんて全くなかったからだ。それに、信じるということなんて考えもしないくらい、よく言えば純粋無垢であった。
彼はとても良い人だった。マメな人で、時間にしっかりしていて、家族思いで、気遣いができて、何より優しかった。もちろん弱いところもたくさんあったけど、それすらも受け入れられた。嫌いなところなんてなかった。
嘘をつかれたと知った今でも、彼のことを許せないとは思っていない。騙されたとも思っていない。仕方のない嘘だったのだと思っている。嘘を許そうと思っている。
しかし、嘘をなかったことにして付き合い続けることに対して限界が訪れた。疑心が身体を蝕んでいった。信じたくもなかったが、彼の言動に訝しげな私がいることが、だんだんと確かな感触になっていく。
私は散々ひとり部屋で泣き喚いた後、彼に「話がしたい」と一言連絡をした。すぐに電話がかかってきた。
彼とわたしと嘘 まりも @marmo
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