第2話 雪華、代表会議

 翌朝、代表会議が行われることを聞いてすでに数人が部屋に集まっていた。


「代表会議なんざ、珍しいもんもあんだな」


 そう言ったのはつり目の鋭い目つきの持ち主であり、スーツを上手く着崩した若い男───元、狂者の箱庭クレイジーガーデンの次期リーダー候補であり、雪華が最初に食らった組織で、現、雪華傘下となった狂者の箱庭クレイジーガーデンをまとめている上野うえの 咲也さくやである。

 先代のリーダーである向井むかい ごうを雪華が討ったことによりまとめ役として白羽の矢が立ったという訳だ。


「あら、あなたが何かやらかしたのではなくて?」


 そう返すのは、口元を豪華な扇子で隠した美女である。

 その斜め後ろには屈強な男が控えている。

 名を楠木くすのき 彩恵さえ

 表の面では普通の会社を装っているものの、裏ではカジノ営業で稼ぐ雪華の財源である。


「ははっ、さくやならありそー!」


 楠木の言葉に便乗した見た目子どもの男、七瀬 湊ななせ みなとだ。

 元はチームサイコパスという好戦的な人物ばかりいるチームを率いていたが、雪華に負け、傘下に着き、引き続きリーダーを務めている。


「だまれ愚図共。代表会議と言われてきているのに、あの方たちに情けない姿を見せるな」


 そんな辛口の女の名は、香玲シャンリンという中国人の女だ。

 日本にきて、一人で東京辺りで喧嘩三昧の日々を過ごしていたときに、偶然、夜に喧嘩を売ってしまい負けたことから自然と雪華の一員になり、幹部の座まで上りつめた人間である。


「あ? 喧嘩売ってんのかコラ」

「喧嘩! 僕も混ぜて混ぜてっ」

「てめぇは引っ込んでろばか」

「ばかっていった! ばかって言った方がばかなんだよ!」

「ふふ、この男に関してはあながち間違いでもないわね」

「……貴様ら二度も言わせ──」


 そのとき、見張りをしていた下っ端からの「最高幹部たちがお入りになります」という言葉が聞こえると同時に、部屋にいた全員がその場で立って頭を下げる。

 最高幹部たちが座ると、トップである小雪が口を開く。


「全員揃ったわね」

「てつが来てないよ〜」

「……あの男は」

「そーゆーやつだろ。話すすめよーぜ」


 その言葉で幹部たちはまた座る。


「はぁ。今回、代表会議を開いた理由を話すわ。先日、乱極会が雪華に対して喧嘩を売ってきた」


「「「「ッ!?」」」」


「混乱するのも無理はないわ。これに対して雪華は──全面戦争の方針でいく」


「……あはっ、楽しみだなぁ楽しみだなぁ。全面戦争、待ち遠しいなぁっ!」

「めんどくせぇ相手に喧嘩売られたもんだなまた」

「なぁるほどねぇ。そりゃ代表会議も開く訳だ」

「そういうこ……てつ、遅れてきて平然と話に加わらないでくれるかしら?」

「あれ、バレちった?」


 そうヤンチャっぽく答える男こそ、雪華創設メンバーの一人、天才"|宗 虎鉄(むね こてつ)"である。

 

「はぁ、まぁいいわ。これで全員そろったわね」


 困ったような顔をした小雪は、しかし、すぐに切りかえて裕太に視線を向ける。


「とりあえず乱極会の情報をみんなに共有しとくね」


 情報担当でもある裕太から送られた情報は、すべて無駄がなく、かつ的確な情報が載せられていた。


「それ、全部頭に入れといてね。あと、主導権も握っときたいから宣戦布告もこっちから仕掛ける。詳しい作戦はあとで言うとして……久しぶりの全面戦争だ、みんな頑張ってね」

「てめぇもがんばんだよチビ」

「は? チビじゃないし、あえてちっちゃくなったんだよ!」

「それをチビっつーんだよ」

「……うるさい」


 裕太と蓮の痴話喧嘩に耐えられなかったのか、力が小さく呟く。


「とにかく! 当日は五つのチームに分けて攻め込む。僕とゆきは喧嘩じゃ役に立たないから、いつも通り後方支援に徹する。まず、れん率いる狂者の箱庭、そしてりき率いる楠木グループ、てつ率いるサイコパス、よる率いる夜の月、攻め込むポイントと日程は追って端末に共有するから、見といてね」

「ありがとう。まず力になれない私を許して欲しい」


「なっ、頭さげないでください、そんなこと百も承知なんだ、だから顔あげてくれ」

「全くですわ。一人一人役目がある、今回はそれが雪様のお役目だったということ」

「心配しなくてもボッコボコにしてくるから安心してよ!」

「その通り。小雪様たちに仇なす者たち、ましてやあの猿どもはすべて消し去りますので、そう頭をお下げにならないでください」


「……ありがとう。みんな、期待してるわ」


「「「「はい」」」」





◇ ◇ ◇





「いやぁ、雪のカリスマ力には頭が上がらないね〜」

「てーつー……あんた遅れないようにって言ったわよね!? なんで遅れてきてさも最初からいましたー、みたいな感じで会話に混ざってるわけ!? てつじゃなかったら往復ビンタ一万回はしてたわよ!?」

「うひょー……すごい言葉の連撃」


 カリスマモードOFFの小雪は、相当ストレスが溜まっていたのか、言葉の猛攻撃を放つ。


「だいたいてつはいつもいつもそうやって──」

「雪、少し落ち着いて……」

「これで落ち着いてられるか!」

「まぁ、なんにせよすごいとこと当たるもんだね」

「実力至上主義なだけあって、やっぱアホみたく強ぇらしいしな」

「噂は所詮、噂だよ。実際、たぶん君たち四人に勝てる実力者はいないんじゃないかな。まぁ、ぎりぎりの戦いになることは明白ではあるけど……」

「まず数だろ。こちとら百五十人くらいしかいねぇのに、乱極会ときたら、数百人だろ?」

「正確には、六百三十七人だよ」

「オレらが一人、百五十人ちょいくらいやりゃあ勝てんな」

「現実的に無理すぎる」

「中でもボスの鬼崎はずば抜けてる。運良くてつとやり合ってくれたらいいんだけどね」

「なんでぇ、おれそんなめんどくさいことしたくないんだけど」

「まぁ、あとは待つだけだ」






────────────────────


 読んでいただきありがとうございます!


 ひっさびさに更新しましたどうも作者です。

 この作品はもうほとんど更新しないかなと思ってたけど、しましたね。


 次があるのか分かんないけど、次の話もお楽しみください。

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雪華 〜底辺から頂点まで成り上がるまで〜 たく @sheiku

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