雪華 〜底辺から頂点まで成り上がるまで〜

たく

第1話 始まり

『おれたちは"雪華"だ!6人ぜーいんでてっぺんになる!』







◇ ◇ ◇





「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」


目の前には壁。

ドクン、ドクン、と心拍音が上がっていく。


「やっと追い詰めたぜぇ?真白小雪ぃ」


口元を歪めながら一歩、一歩と近づいていく。

そんな嫌悪感を抱きながら、真白小雪は呟いた。


「遅い、わよ!」

「あァ?」


瞬間、後ろをついてきていた二人の男が倒れる音が響く。

そこには、一本の刀を添えた男がいた。


「文句は後で聞くよ」


そして、一変した声でこう続ける。


───おぃ、誰に手を出そうとしてるのか分かってるのか?


その場が凍りつくような低い声が響く。


「だ、だれだテメェ!」

「"雪華"幹部の───月乃つきの よるだ」

「ッ……、ざっけんじゃねぇぞコラァァァァァァッ!!!」


ボトッ……


「だまれ」

「あ?え、ぁ、がぁぁぁぁぁ俺の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


そこには、先程まではたしかに繋がっていた右腕が地面に転がっていた。


「いくつか質問する。大人しく答えた方が身のためだぞ」

「ぁ、が、はぁ、はぁ、はぁ」

「一つ。お前たちはどこの人間だ?」

「はぁ、はぁ、はぁ、ら、乱獄会、だ、はぁ、はぁ」

「一つ。これは俺たちに潰されても文句はないです、ってことでいいよな?」

「て、てめぇらがどんだけ強かろうが、乱獄会には勝てねぇに決まってんだろうがァ!」


ボトッ……


「いくつか、とか言っといて二つしかしてないじゃない」

「うるさいなぁ、そこはスルーしてよ!」

「………はぁ、やっぱりごめんね?私の"体質"のせいでこんなことになって」

「謝んないで」


包み込むような優しい声が耳に届く。

そう言ってポン、と真白小雪の頭に手をおく。


「僕たち"雪華"は、6人の内の誰かが困ってたら他の全員で全力で支える。そういう掟でしょ。だから謝んないで、僕たちを頼ること!」

「はは、ありがとね。やっぱり雪華のみんなはかっこいいよ」


舞台は現代日本。

表社会とは逆に裏社会というのが存在する。

殺し、強盗、詐欺、暴行、強姦、脅し……。

いろんな犯罪を犯しながら世の中を渡り歩いている組織がある。

ヤクザや暴力団、などとよく呼ばれるものだ。

そんな中、突如頭角を現す者たちがいた。


その名も"雪華"。

東京を拠点に構える新興勢力である雪華は、たった6人という人数で東京の一部を荒らしていた。

そして、たった1ヶ月という時間で100人規模にまで成長させた天才たちである。


そして、この真白小雪こそ雪華のトップであった。





◇ ◇ ◇





「ただいまー」

「……ん、あ、おかえり…」

「はいこれ、お菓子買ってきたか───」

「ほんと!?なんのお菓子!?ありがとー」

「はは、やっぱりお菓子好きだね、ゆうた」


手に持っていたお菓子の入った袋をかっさらっていく。

ソファに寝転がっていたのにお菓子と聞いて飛び起きるあたり、やはりお菓子好きなのだろう。

そして、この男も雪華幹部、創設メンバーの一人であった。


「他のみんなはどうしたの?」

「んー、りきはトレーニングルーム、てつはナンパにでも行ったんじゃない?蓮は最近できたチームをつぶしにいってる」

「はぁ………夜なら寝ろって話だよね」

「だねー、……で、なにかあった?」

「……俺、なんも言ってないけど?」

「やっぱり裕太には嘘はつけないよねー」

「嘘つくつもりもないんだけどね……」


そう、苦笑混じりに呟く。


「で、本題なんだけど」


そういって夜も座り、話し始める。


「乱獄会が喧嘩うってきたから次の標的にすることにした」

「ふーん?めんどくさいところに喧嘩うられたね」

「ここまで強力な組織とやり合うのは、これが初めてだ」


乱獄会。

裏社会の象徴ともいうべき組織で、実力主義を掲げた極悪組織である。

ありとあらゆる犯罪に手を染め、他の組織すらも煙たがるような存在である。


「そんなところのトップとか………考えるだけでめんどくさ…」


そう言いながらため息をする姿は様になっていた。


「じゃ代表会議、しよっか。めんどくさいのは早めに片付けるに限る」

「てつが来るか心配なんだけど……」

「だいじょぶだいじょぶ〜」


小雪の肩に手を置いてこう続ける。


「雪を使えば簡単なのだ!」

「「…………」」


二人の内心は合致していた。


───やはりてつは、ちょろい……。




〜乱獄会side〜




「鬼崎さん、報告があります」


タバコの煙と酒の匂いが充満した部屋に声が響く。

真ん中のソファには、両腕に女をはべらせた男がいた。


「あ?なんだ」

「どうやらうちの下っ端が殺られたようで……」

「知るか、んなもん。雑魚は勝手に死んでろ」

「その相手が最近話題となっている"雪華"のやつにやられたようで……」


雪華という単語が出てきた瞬間、反応したことに気づいた者はいないだろう。


「つまりなんだ、結局クソアマ一人連れてこれずにその場でくたばったってか?」

「………はい」


ガシャァァァァァァン


目の前にあったテーブルを蹴り飛ばしたその男は、立ち上がりこう言った。


「俺が直々に潰してやるよ。おいテメェ、次やったらテメェも殺す。二度とヘマすんじゃねぇぞ」

「肝に銘じておきます」


チッ、と舌打ちした後、部屋をでていった。







────────────────────


読んでいただきありがとうございました!


新作の"雪華"は、初めてだれかをモデルとしてつくった作品です。

まだまだ拙い文章力ですが大目に見てくれると助かります。🙏


次の話もお楽しみください。

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