「ドント・ブリーズ 」(スリラー)

「ドント・ブリーズ 」(2016 アメリカ 88分)

監督、脚本 フェデ・アルバレス

脚本 ロド・サヤゲス

出演  ジェーン・レヴィ、 スティーヴン・ラング


 荒んだ街に住む主人公・ロッキー。彼女の家庭は崩壊しており、生活苦に陥っていた。

 そんな彼女にとって、幼い妹だけが心の支えであり、いつか妹と一緒にこの街から出て行くことが希望であった。

 だが、そのためには金が必要。


 ある日、ロッキーは不良仲間たちに誘われ、ある盲目の老人の家から大金を奪うという計画に参加する。

 この老人は車の事故で娘を亡くし、一匹の犬だけが家族の孤独な老人だった。

 そんな老人から金を奪うことに抵抗はあったものの、どうしてもロッキーには金が必要だった。


 真夜中になり、ロッキーと仲間たちは老人が眠っている間に金を盗み出そうとする。

 だが、途中で仲間の一人がミスをし、老人を起こしてしまう。

 ここから、悪夢のような惨劇が始まる。


 老人は元軍人だった。

 盲目ではあるが、聴覚や筋力などの身体能力が常人を超えており、銃などの武器の扱いに長け、躊躇なく人を殺すことが出来た。

 そして、なにより、この老人は「ある目的」のため、おぞましい行為を実行中のサイコキラーだったのだ……。


 目が不自由でありながらも常人を超えた身体能力、元軍人としての知識や経験を持った老人という新たなサイコキラー像を生み出した新感覚スリラー映画。



 この映画、この老人のサイコキラーっぷりに背筋を凍らされた。

 音や声を出したら、銃弾が跳び、気づいたら背後にいる老人の姿がとにかく怖い。老人は目が不自由でありながらも、自宅という地の利と元軍人というキャリアで主人公と視聴者を恐怖に陥れていく。

 また、灯りを消して主人公たちの視界を奪い、ハンデをなくすなど、この老人、頭脳戦においても主人公たちを上回っていた。

 まさに新感覚の殺人鬼だ。


 そして、後半から明らかになる真相がとんでもなくおぞましく、人によっては、かなり嫌悪感を感じるかもしれません。

 劇場公開時(2016年)、この映画を映画館で観ていましたが、あるシーンで場内から女性の悲鳴が聞こえました。



 元を辿ると、事情があったとはいえ、人の家に盗みに入った主人公たちの自業自得ではある。

 だが、盗みに入った家の老人が、想像を超えたとんでもないサイコキラーだったというのは、あまりにも皮肉である。


 ちなみに、この映画のテーマは「不平等」だ。

 貧困で妹のために盗みをやった主人公。娘を失い、目が不自由で孤独だが、残虐なサイコキラーだった老人。

 新感覚のスリラー映画ではあるものの、どこか矛盾と皮肉が込められているような気がしてならない映画だった。


 本当に怖いのは、主人公と老人を動かした「目には見えないなにか」なのかもしれない。

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