第三話 円柱が巨木のように聳え立っていた
二人は深い森の中を歩いていた。
木々の地肌は荒々しく、幹は二人が手をつないでも到底届かないほどに太かった。
柔らかな落ち葉に覆われた地面は歩いていて心地よかった。近くに川が流れているのか、かすかに水のにおいがした。
唐突に少女が「あっ」と言ってしゃがみこんだ。男性が振り返ると、太ももからふくらはぎに掛けて赤い血が一筋流れていた。
心配する男性をなだめ、少女は川で水浴びがしたいと言い残して一人で小川に向かって歩き始めた。いつの間にか腰まで伸びた銀髪が木間に揺れて消えていった。
手持無沙汰になった男は大きな木の幹に背を預け、柔らかな
やがて少女は水を浴びてさっぱりした顔で戻ってきた。どこで
「あなたも同じ髪の色だから似合うはずよ」そういって少女は男性の髪にもやや小ぶりの花を挿してくれた。
その日はそれ以上の歩みは重ねず、その場で眠る事にした。そのような事が月に数回続くようになり、やがて男性も慣れて気にする事もなくなっていった。
森が途切れ、平原が続くようになるころ、いつしか男性の心に旅の終わりが近いという予感が芽生え始めていた。
周囲の植物は再び丈の低いものばかりになっていた。
その頃から天候が崩れ始め、大雨の日が多くなってきた。たたきつけるような大粒の雨に雷が重なり、身を隠す事のできない二人は地面のくぼみに身をかがめ、嵐が収まるのを待たなければならなかった。
下草がコケ類になり、やがて植物の生えない
身を隠す場所を探す二人は、前方の丘の上に雷光でわずかに光る建物を見た。
「あそこに避難しよう」。男性は風に負けないよう大声で怒鳴ると嵐を突いて歩き始めた。雨は地面に
二人は互いを支えながら、這うようにして丘の
建物は遠くから見たよりもはるかに巨大だった。
建物へと続く階段の両脇には、巨木の森のような石の円柱が2列に並んで天を
建物へと駆け込む二人を襲う様に近くで立て続けに雷が
目も
扉は二人の背丈の数倍もある金属製で容易には動かなかったが、力を合わせると
扉が音を立てて閉まると、二人は先ほどの雷鳴が嘘のような静けさと暗闇の中に取り残された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます