第11話激カワ美少女はご機嫌・ご機嫌・上機嫌?

下駄箱からクラスまでの道のり、来澤は終始ご機嫌だった。朝から達樹に会い言葉を交わした挙句、達樹との会話を盗聴・・・いや録音出来たのだから嬉しくて仕方ないのだろう。いつもは集中して授業を聞いている様子なのに今日は上の空であり、その様子に気づく俺も集中出来ていない証拠だ。


(まぁ、さすがに盗聴・・・録音は引いたけどな。)


ある意味録音してしまうくらい来澤は達樹の事が好きだと言うことが分かったが、今後を考えると背筋が凍りそうになる。


(いつか、「達樹くんの寝顔撮って来て?」・「達樹くんの持ち物何か持って来て?」なんてお願いされる日が来るかもしれない・・・。)


法律に触れるような事はしたくないので来澤の中の常識を1回確認しようと心に誓うが、すでに今日の放課後録音の鑑賞会に招かれている為片棒を担いだような感覚に襲われる。


(今度からは来澤の持ち物確認しとかねーと、達樹に迷惑かけちまう。)


達樹へ罪悪感を感じるものの来澤に逆らえない自分が恥ずかしくなり午前中は机に突っ伏し反省していたが、朝早く起きた代償なのかいつの間にか寝てしまい携帯の通知音に起こされた。


ピロロ、、、ピロロ、、、


「んーっ、誰だ、よ・・・。」


まだ眠い中、通知をタップしメッセージ画面を見た瞬間俺は飛び起きた。


ガタガタ、、、


昼休みの為ガヤガヤしていた教室内が一瞬静かになり、皆俺の事は見てないフリをして会話をし始める。俺も何事も無かったかのように静かに椅子に座り直したが、内心ヒヤヒヤしていた。


(寝起きでこんな文面はキツイだろ!?!?)


そう朝からご機嫌な来澤は意味不明なメッセージを送ってきた。


【朝はありがとうございました!!

お陰で達樹くんの声も無事撮れたので、お礼に私の親友を紹介します(*^^*)

今日の作戦会議は理科室で私と私の親友・岸川くんの3人で行うので絶対来てくださいね!】


来澤からお礼のメッセージが来るのはまだ分かるが、来澤の親友を紹介されるのは意味が分からなかった。考え方が常軌を逸しているとは思っていたが、ここまでとは誰も予想出来ないだろう。


(話が見えないし、もう強制参加じゃねーか。)


断る事も出来たが来澤の親友って奴も俺の様に振り回されて居るだけなら可哀想だと思い、参加を意味するメッセージを送る。


【いや、俺は何もしてない。

今回は遅れない様に行く。】


親友の正体が気になりメッセージを追加で送るか迷ったが、来澤の事でもう頭を使いたくは無かったので何もせずに過ごすことにした。


(もし来澤の親友って奴が来澤と同じタイプだったら・・・。類は友を呼ぶって言うし気をつけとくか。)


俺は再び机に突っ伏して寝る事を選択し、予鈴のチャイムが鳴るまで眠っていた。


キーンコーンカーンコーン、、、キーンコーンカーンコーン、、、

 

(はぁあああ、もう授業かよ。

寝足りねぇ。)


顔を上げ伸びをすると隣の席の来澤が横目に見え、来澤はニコニコしており機嫌が良さそうだった。


(お気楽だな、俺がどんだけ焦ったか・・・。)


心の中で愚痴りながらも午後の授業が始まっていく。あまり集中は出来ないものの、ずっと寝ていたら成績に関わるのでぼーっとしながら授業を受ける事にした。その間もたまに横目に入ってくる来澤はずっとご機嫌で、ある意味羨ましくなる。


(この頃俺は放課後が近づく度に憂鬱だってのに。)


悪癖をつきぼーっとしていたらあっという間に時間は過ぎていき、帰りのHRになった。担任が俺らに部活動案内を進める話をしていたが、俺は興味が無くスルーした。すぐ後に聞いていなかった事を後悔することになる。


「入学して1週間ちょっと経ったが、部活に入ってる奴は居るかー?まぁどっちでも良いが・・・、部活動見学は自由にやれ後部活を立ち上げるなら部員は3人必要で顧問も1人必要だから覚えておけよー。じゃ、解散!」


「「ありがとうございましたー。」」


挨拶をし終え、俺は早速鞄を持ち理科室に向かおうとしたが来澤に話しかけられた。


「お疲れ様です、岸川くん。

お昼に送った通り、親友を連れて来るので少し待たせてしまうかもしれません!」


「分かった、待っとくわ。」


「ありがとうございます!

あ、そういえば場所大丈夫ですか?

この前迷っ・・・。」


「前に行ったから流石に大丈夫だよ、ほらさっさと行ってこい。」


「じゃあ、また後で。」


親友を迎えに行く来澤を見送り俺も理科室に向かう事にした。この前の事もあり、今回は来澤達より早く着かなければいけない。


(いけるよな・・・?

まぁ少し曖昧だけど、何とかなるだろ。)


謎の自信で歩き始めたが方向音痴は中々治らないようで、、、


「楽勝って、だからなんで迷うんだよー!!」


学校中に響き渡る声を出し、今回も絶賛迷子中。

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