第10話激カワ美少女と親友と俺

先程まで揉めていた俺らに救世主として来てくれた事を達樹に願っていたが早々に気まずい雰囲気になっている為、俺はとてつもなく焦っていた。


(おいおい、来澤が頑張って話すみたいな感じだったから集まったのに何で一言も話さねーんだよ・・・。)


集まった時に交わした挨拶しか言葉を発していない来澤といつもなら誰とでも話す達樹も言葉を交わしていなかった。


(さすがにこんな状況になるとは思って無かったんだけど、てかこの配置はどういう事だよ!?)


俺は元々話す気が無かったので来澤・達樹・俺の横並びで歩き空気の様に過ごしていようと思っていたが、照れてしまい何も話せそうにない来澤からの視線と真ん中に行けと無言の圧力をかける親友のおかげで来澤・俺・達樹の順になってしまった。

居心地が悪いのは分かっていたが視線や圧力が怖いので従う事にする。だが俺には会話を回すコミュ力も無ければ3人共通の話題も無い為、朝から頭をフル回転させ話題を見つけようとする。


(別に来澤と達樹の事はどうでもいいけど、3人にて沈黙なのは息が詰まる。なんか話題ねーかな、それかどっちかが話し出してくれたら。)



「・・・・・・。」


「・・・・・・。」


(まぁ、そうだよな。)


3人で話す事は無いかも知れないと半分諦めモードに入った瞬間、何かを思い出した様な顔をして達樹が急に話し始めた。


「あっ!来澤さんってこないだ俺とぶつかった子だよね??」


「第一声がそれかよ!!

って、もしかして今まで黙ってたのは思い出すのに集中してたからか・・・?」


「えっ、まぁ、そうだよ。

見た事あるなって思ってたけど中々思い出せなくてさ~、困っちゃった!あはは。」


「あはは、じゃなくて困ったのは俺な。」


「何で万里が困ってんの?

変な奴だな~、あはは。」


「はぁ、もう良いわ・・・。」


俺らがコントの様な掛け合いをしていると来澤が意を決して話しに交わって来た。


「そうです!私がぶつかった人です・・・。

岸川くんから話を聞いてたんですけど忘れられたのかと思いました。」


(何その言い方、お笑い番組の誰もが知ってるフレーズのやつじゃん。)


来澤の言い方に違和感を覚えながらもどんどん会話は進んでいく。


「やっぱり、そうだよね!

えっ、万里と俺なんか話したっけ??」


「あーもう、お前から聞いてきたんだろ。

来澤の名前教えろってちゃんと覚えとけよ。」


「あぁ、そうだった。

めちゃくちゃ可愛かったし、万里の友達って言ってたから名前知りたくなったんだよね~。」


「かっ、可愛い・・・。

そ、そうなんです、岸川くんには良くしてもらってて!」


達樹に可愛いと言われ顔がタコの様に赤くなる来澤、焦っているのか早口で俺に話のターンをまわしてくる。


「隣の席なだけだし、俺は何もしてねーよ。」


「でも、万里が女子の友達作るなんて珍しいよな。だから来澤さんの事印象に残ってるんだよ、来澤さんこれからも万里と仲良くしてやってね!」


「はっ、はい!!」


「お前は親か!?

来澤も返事すんなよ・・・。」


登校し始めは中々気まずい雰囲気だったが、達樹が来澤の事を思い出した事もあり後半は盛り上がっていた。

きっと来澤も達樹に可愛いと言って貰えたんだから大満足していると願いながら、校門をくぐり下駄箱に向かうと。


「来澤さん、おはよ~!!」


「ましろちゃん、おは~。」


「ましろちゃん今日も可愛いね!!」


「あっ、皆さんおはようございます。ニコッ」


来澤は何人かの生徒に話しかけられ対応している為、俺と達樹は上履きに履き替え廊下で来澤の事を待つことにした。

特に会話もせず待っているとまたもや達樹が沈黙を破る。



「なぁ、今日何で来澤さんも居たん?」


「・・・えっ。」


落ち着いたトーンで話してくるのがまた怖く、俺は理由を言えず黙ってしまう。


(個人的には言っても良いんだよな、でも来澤もこえーし。)


悩んでいると達樹はそんなに気にしていないと言うようなテンションで話しかけてくれた。


「いきなり女の子居て、ビビっちゃったんだよ。まぁ次からはちゃんと言えよ~、オシャレしてくるからよ!」


「ごめん、、、。

分かった、ちゃんと言うけどオシャレはせんでいい。」


「あはは!冷たいこと言うなよ~。」


達樹はいつもさらっと俺の事を助けてくれる。めちゃくちゃ良い奴だなと改めて感じるものの、隠し事をしているのが少し後ろめたく思えた。


(さすがに俺だけの判断で言えねーよ。)


話し終えたのかこちらに向かって来る、来澤を見ながらなんとも言えない気持ちになった。


「ご、ごめんなさい。

お待たせしちゃって・・・。」


「んー、大丈夫だよ!

それにしても来澤さんって人気者なんだね。話せて良かったよ、また一緒に学校行こうね!」


「へっ・・・。そ、そんなことないです。

また行きたいです!!」


「よし、万里もだぞ~。

じゃあ俺クラスあっちだから、またね!」


「あっ、ちょっ。

はぁ、台風みたいな奴だな。」


達樹はクラスに向かって走り去って行き、俺と2人になった来澤は俺にだけ聞こえる声で感想を伝えてきた。


「岸川くん・・・。

サイッコーでした、達樹くんから発せられた言葉全部録音出来てるか後で確認しないと。」


「はっ、録音?」


「はい!!

岸川くんももちろん参加で一緒に鑑賞会しましょ。」


「マジかー。」


達樹の前ではあんなにも可愛らしく振舞っていた、来澤だが録音しているのは衝撃的だった。そして、一緒に鑑賞会するとはもう何も考えられないままクラスに向かったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る