第8話激カワ美少女と帰り道

すっかり暗くなり街灯が眩しく感じる中、俺はまだ興奮が冷めていない来澤と帰路に就く。たわいもない話でもしながら帰るのかと思っていたが、来澤の頭や心の中は明日の事でいっぱいらしい。


「はぁ~、明日が楽しみだなぁ。

岸川くん、明日は頑張りましょうね!!」


満面の笑みでこちらを見てくる来澤の言葉が重くのしかかる。俺は仕方なくこの作戦に参加しているだけなので来澤のテンションに中々着いていけない。


(明日からもっと憂鬱だ、、、。

こんなはずじゃなかったのに。)


返事もせずにぼーっと歩く俺を心配したのか落ち着き始めた来澤が話しかけてくる。


「あの、岸川くん大丈夫ですか??

やっぱり協力なんてしたくないですよね。」


(まぁ、協力するのはめんどくさいし。

でも、、、。)


暗がりの中横並びで歩く来澤の顔を街灯の明かりに照らされた来澤の顔はやはり悲しそうだったので俺はなるべく明るく答えることにした。


(そんな顔されたら協力するしかないだろ。)


「いや、俺から協力するって言ったんだし大丈夫だ!まぁ明日から作戦実行なのに驚いてるだけだから心配すんな。」


「あっ、ありがとうございます!

やっぱり岸川くんって優しいですね。」


「えっ、いや、そんな事ねーから、、、。

そっ、 そういえば何でそんなに達樹の事が好きなんだ?ずっと不思議だったんだ。」


来澤から褒められ変にドキッとした俺は話題を変えようと不思議に思っていた事を伝えた。俺の質問を聞いて来澤は徐々に顔が赤くなっていき、恥ずかしそうに答える。


「えっ、その、小さい頃に1度だけ会った事があって。その時に優しくしてくれてお嫁さんになるならこの人しかいないって思ったのが達樹くんなんです。」


「なるほどな、達樹はずっと優しいからなぁ。でも俺と達樹は産まれた時からほぼほぼ一緒だけど来澤とは高校からだからどこで接点があったのか分からなくて不思議だったんだ。」


「そうですよね、岸川くんと達樹くんは産まれた病院からずっと一緒だから不思議に思いますよね。」


「あぁ、そうなんだよ病院からって。

なんでそんな事まで知ってんだ??」


「いや、その、たまたまですよ~!!」


「流石に病院まで知ってんのたまたまじゃないだろ。そういえば俺の家がどこかも把握してるみたいだし、色々と調べてるのか?」


「えっと、たっ、達樹くんには言わないで下さい!!初めて会ったあの日から忘れられなくて、学校も違うしで色々個人的に調べるしか無かったんですぅ、、、。」


泣きそうな顔でこちらを見ながら懇願する来澤をこれ以上責めることなど出来無かった。


「誰にも言わないから。

だから泣きそうな顔をするな、、、。」


「うっ、ほ、ほんとですか??」


「あー、もうほんとだよ。

俺しかその事知らないなら、秘密にしておけば良いだけだろ?」


「う~、ありがとうございます!!

達樹くんの事ずっと陰で見てたことバレたら嫌がられると思って・・・、岸川くんを仲間に入れて正解でした~。」


「えっ、ずっと見てたのか??

だから俺の家も知ってたのか、、、。」


「はい、すみません。

でもこれからは堂々と達樹くんにアピール出来るので、なるべく陰から見るのは止めるようにします!!」


「そうだな、俺も無駄にドキドキするから止めてくれ。」


来澤は今まで達樹の後を着いていた事や、達樹に関する情報収集をしていた事を暴露するとすっきりしたのか笑顔になっていた。


(今までずっと後つけてたとかこえーけど、凄いやつに好かれたもんだな達樹も。)


俺は隣を笑顔で歩く来澤に恐怖を感じると共にもう逆らえないと心の底から思った。しばらく無言のまま歩いていると俺の家が見えて来たので安心する。


(やっと家に着く、今日は色々ありすぎて疲れた・・・。)


「あ、岸川くんの家見えてきましたね!

今日は色々とありがとうございました。」


「お、おー、やっぱり俺の家知ってるんだ。いや大したことして無いし、大変なのは明日からだろ?」


「はい、明日から頑張りましょうね!!

あ、そういえば連絡先交換しませんか?その方が今後楽だと思うので。」


「そうだな、交換した方が楽だな。」


俺達は鞄の中からスマホを取り出し、お互いの連絡先を交換する。何も知らない時に連絡先を交換していたら喜んだだろうが今はもう恐怖でしかない。


(はぁ、来澤との関係が強固になってきた気がする。)


「じゃあ、また後ほど連絡しますね!

おやすみなさい、岸川くん。」


連絡先を交換し満足したのか俺が返答する間も無く来澤は笑顔で歩いって行った。


(台風みたいなやつだな・・・。

もう今日はさっさと寝よ。)


一気に疲れがやってきた俺は家のドアを力なく開ける。


「ただいまー。」


「おかえり~、今日は遅かったじゃない?

早くご飯食べてお風呂入っちゃいなさい。」


家に入って早々に母親がまくし立ててくる。反抗する気もない俺はそのままリビングに行き、飯を食べることにした。


「あら、今日は素直なのね~。

さぁ沢山食べなさい!!」


「んー、いつも素直だろ。

いやそんな腹減ってないしすぐ寝るわ。」


「もうじゃあオカズだけでも食べなさいよ~!!」


ピロピロ、、、ピロピロ、、、


茶化してくる母親の相手を適当にしていると、スマホに通知が来た。


(誰だよ、疲れてんのに。)


飯を食べながら名前も確認せずに通知をタップする。表れたトークの相手は来澤だった。


「ぶーーーーっ、、、はぁ、、はぁ、、。」


「もう、汚い!!どうしたのよ?」


「ごめん、何でもない。」


まさか来澤からこんな早く連絡が来ると思って無かった為、驚き思わず食べていたオカズを吹き出してしまう。


(えっ、早くないか?母親の前で恥ずかしい、、、。)


母親の視線を感じながらトーク内容を確認する。


【今日はお疲れ様でした!

明日の事で確認してなかった事があったので連絡しました。】


もう既読した事が相手に伝わっているため早く返そうと部屋に向かおうと思い、さっさと飯を食べることに。


「いつもはそんながっつかないのに、、。

ほんと、今日はどうしたのよ?」


「別に、、じゃあ食い終わったから部屋戻るわ。」


「はいはい、なんか変だからちゃっちゃと寝ちゃいなさい!」


「へいへい。」


階段を駆け足で上り、部屋に入ると直ぐに来澤へ返信した。


【お疲れ。確認することってなんだ?】


(はぁ、もう疲れたから寝てーよ。)


まだ返信は来ないと思っていたが直ぐに返ってくる。きっとスマホの前で待機していたのだろう。


【明日の朝って何時くらいにそっち行けば良いのかなって思って。】


【そうだな、いつも8時くらいには集まってるけど達樹は早く来るからな。】


【じゃあ7時40分くらいに岸川くんのお家に着くようにしておくね!】


【なら、俺もそのくらいには玄関前に居るようにするわ。】


【ありがとう!!じゃあ、それだけだからまた明日ね。】


【おう。】


さくさくと話は進み今日はもう来澤と関わる事は無さそうだ。


(やっと、終わった。

明日早いし朝風呂はいってもう寝よ。)


もう眠気がピークに来ており、最後の力を振り絞り部屋着に着替えベットにダイブする。もう何も考えれなくなり瞼が落ちてきて眠りに着いた。

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