第7話激カワ美少女と契約

覚悟を持って挑んだ話し合いだったが来澤の熱意に押し負け、流れに身を任せ協力することになった俺。反抗する方が面倒だと諦め半分な気持ちになりながら、未だ浮かれている来澤を見て思うことがある。


(全然話した事無いって感じだけど、こんなに人を好きになれるもんなのか?

俺は無理だけど、なんか来澤って不思議な奴だな・・・。)


単に激カワ美少女なだけかと思っていた来澤の印象が変わっていく。策士でありつつ強引で度胸もある、きっとこんな事に巻き込まれなければ気づかなかった1面だ。


(まぁ、激カワって事しか知らない時に戻りたいけどな。)


来澤の新たな1面を知った所で面倒な事に巻き込まれたのは間違いない。短時間で色々考えたからか疲れてしまい、窓の外を見る。夕空になりつつある景色をぼーっと見ていると、ようやく落ち着いた来澤が俺の隣に来て話しかけてくる。


「さっきはごめんね?引いた、よね?

それに強引に話まとめちゃったし。」


目を伏せながら、反省した雰囲気で話す来澤と夕焼けが合わさりいい雰囲気で許してしまいそうになる。だが断じて流されないと心に決め返答した。


「まぁ強引だったし、嫌だったけどな。それに、、、。」


色々と言いたいことが募り口にしたが、来澤の悲しそうな顔が横目に入り口を噤む。

いきなり話さなくなった俺に気づいたのか、来澤は苦笑いでこちらを見る。


「嫌だよね~、それなのに協力してくれる岸川くんって優しいね!ありがとう。」


俺は嫌味な事を言っていたのに来澤は感謝の言葉を伝えてくれた。俺はなんだか情けなくなり来澤に申し訳ない気持ちが溢れ、ある覚悟を決める。


「さっきの言葉はごめん!

来澤を嫌な気持ちにさせちまったし、人として男とし申し訳ない。

だから、来澤と達樹が近づけるようちゃんと協力する。」


結果的には流されてしまったのかも知れない、でもこれが俺に出来る精一杯の誠意だと思った。


(あんな悲しそうな顔、女の子にさせちゃダメだよな、、、。)


来澤は俺の誠意を受け取ってくれたのか嬉しそうな顔で突拍子も無いことを言い出した。


「ありがとう!!すごい嬉しい!

なら、私と岸川くんは達樹くん攻略作戦のパートナーになる訳だし約束事は決めた方が良いと思うの。」


「えっ、達樹のこうりゃく?

パートナー?約束事?ごめん、追いつけてないや。」


確かにちゃんと協力するとは言ったが来澤がこんなにも考えているなんて思ってもいなかった。


(あの悲しそうな顔はなんだったんだ??

選択間違えたな・・・。)


諦めと吹っ切れた気持ちで来澤に全て任せることにする。


「約束事?とかは来澤が決めてくれ。

決めてくれたら従うし、守るようにするから。」


すると来澤の顔がパァーっと明るくなり生き生きし始めた。きっと考えていた案があるのだろう。


「じゃあ、約束事としては3つかな。

それで1つ目は達樹くんと話した内容を共有すること!2つ目は幼い頃の達樹の写真をゲットすること(岸川くんが)」


最初は静かに聞いていたが中々な内容だ。もう、従える気も守れる気も無くなってきた。


「あとは最後の約束、達樹くんには私達の関係がバレないようにすること。この3つだけです、これからよろしくお願いします!」


「あっ、えっ、よろしく。」


来澤の勢いに負け小さく返事を返す。


(やっぱり協力しない方が良かったかもな。)


心の中で早速後悔しているとウズウズしている来澤が近寄ってきた。


「あの、早速なんですが明日から作戦実行したいので打ち合わせをしませんか??」


「あー、まぁ良いけど。実行するの早くないか?」


「全然早くないです、むしろちょっと遅いくらいですよ!岸川くんは知らないかもですけど、達樹くん結構モテるんです。だから早め早めに行動しないと他の女達に取られちゃいます。」


来澤の真剣な口調に俺は驚きを隠せず唖然としてしまう。


(てか、達樹ってそんなモテんの?

全然知らなかったんだけど。)


「という事で作戦会議始めます!

まずは改めて岸川くんから達樹くんに私の事を紹介して欲しいので、その時間をいつにするか。そこが大事なポイントなんです!!」


(うわ、強引に始めた。

俺も色々言わないとかよ。)


「おっ、おー、まぁそうだな?

でも学校に来れば時間なんて沢山あるんじゃないか?」


「いえ、そこを岸川くんは全然分かってないんです!!達樹くんは友達との時間を大切にするタイプなのでまず女の子が近寄ってきてもそんなに時間を省いてくれません、なので学校内では無く外の方が時間を貰えると考えています。」


「外の方が人目もあんま気になんないからなぁ、達樹案外そういうの気にするから。」


「そうなんです、流石達樹くんの親友です!でも外で時間を貰うとすると私1人では不自然過ぎて無理なんです。だからこそ岸川くんの出番です!」


「ありがとよ。って、えっ、俺かよ。

でもどうすればいいんだよ?」


「んー、それを一緒に考えるんですよ!!

でも外で会話するチャンスとしては登下校くらいしか思いつかないです。」


「そうだなー、っても帰りは俺達樹と一緒に帰ってないし。登校くらいしか時間作れないぞ?」


「全然構いません!!じゃあ早速明日の登校時に作戦実行です!」


「はぁ、急だな、、、。

てか俺の家知ってるか?そこでいつも待ち合わせなんだけど。」


「あっ、そこは知ってるので問題無しです。」


「あー、それなら良いけど。

明日の作戦も決まったし、そろそろ帰るか?外も大分暗いし。」


「えっ、もうそんな時間でしたか。

そうですね、じゃあ帰りましょう!」


意見を却下されたり褒めりたりと忙しく長い長い話し合いが終わり、俺と来澤の謎の契約も済んだことで今日は一旦帰ることに。


(明日からめんどくせぇ。)


来澤をある程度送って帰ることにしたが、来澤の興奮は止まらずで俺はまた一層疲弊していった。

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