第二章
第十五話「あなたのいいなりになります」
健司が初めてベンタくんとあったビジネスホテルでなにがあったのだろうか。
ツルオは人形の死体を眺めながらたまに考えていた。
しかし、それっを知っているのは、憎きベンタくんと健司本人のみなのだろうか……
数か月前―健司が行方不明になった日
健司はベンタくんと対峙していた。
「おめえ……いったい誰なんだよ、俺とツルオに恨みがあるのか……」
「……僕はね……”希望”なんだよ……」
ベンタくんはゆっくり話し始める。
「君は僕がだれなのか……検討はついているんだろ……?」
「まったく……、検討もつかないぜ……。 忘れちまったよ」
「フフフ……君は優しいんだ……。ツルオくんにも優しく、僕にも優しくて……。」
健司はほとんどベンタくんの正体に気付いていた。
「……何を語りだすんだよ。まさにテロリストや革命家の理屈っぽい話を始める気だな……」
「君は賢い……けど自分の感情をコントロールできていない節がいくつかあるよね」
健司は口調や身振りは少しやんちゃさがあるが、怒り狂ったり、暴走したりすることはほとんどない。
感情的になったとしても、感情はコントロールできるほうだと内心思っていた。
「僕は君も救いたいんだ……みんなの”希望”だからね。希望の世界を作りたい」
「なにが言いてえ……」
「僕に忠誠を誓うんだ……”あなたのいいなりになります”って……」
あなたのいいなりになります
健司はこのワードに記憶があった。
ツルオや周りの悪ガキたちが、いじめられっ子に言わせていた言葉だ。
小学生レベルのいじめにも思えるが、この”いいなり”の重さは小学生とは比にならなかった。
健司はいまでもその風景を思い出し、トイレへ駈け込んでいた。
「やっぱりお前は”希望”なんかじゃない……! 復讐を原動力にしてるな……」
「違うよ……。あの時僕は”絶望”したんだ。”絶望”は希望の世界にはあってはならない。絶望の源は処理しなきゃなんだ」
「そのためには人を殺すこともいとわないのか……。だが少なくともツルオは今絶望している……妻と子を失ってな……それはいいのか?」
「だってまだ希望の世界じゃないもの。ツルオ君たちが生きている限り、希望の世界は訪れないからね。 それより早く……僕のいいなりになってよ」
「おれが断ったらどうなるんだ?」
「そうだね……”絶望”するかな」
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