第十四話「一冊の漫画」
「あ、操られている……って、どういうことだよ……」
「そのまんまさ……奥村先生も。」
「操るってったって、どうやるんだ、そんなこと」
マコトも口をはさみはじめた。
「それはわからないけど……ツルオくん、奥村先生とサヤマに、なにか共通点はなかったかい?」
「……まあ、考えてみれば、頭がおかしくなってから途端に言ってることが変わってた。奥村先生は”ベンタくんは神だった”なんて言ってたし」
「その発言だと、確かに操られているって言われても納得はできるな」
管谷は顎に手をあて考えている。
「マコト、奥村先生の遺体って、どうなるんだ?」
「普通に火葬されるんじゃないか? 警察は信用できないし。ここにそういう施設とかあんのかはしらないけど……」
「そうなんだ……、あと、ここってそもそもなんなの?」
「な、なんなの?ってなんだよ、ベンタくんの被害を受けた人たちの集まり」
「でも、管理してたのは奥村先生なんだろ? そんなに金持っているように見えなかったけど……」
マコトは話に飽きたのか、二十世紀少年の単行本を読み始めていた。
「主人公、”ケンヂ”って名前だけど……ただの偶然?」
二十世紀少年の主人公は”遠藤健児”である。
「それなんだよ……ベンタくんの本当の正体も、操られているのかどうかも、情報を手に入れようとしたとき、出てくるのは”彼”なんだ……」
「健司……。でもアイツは殺されちまったんじゃ……」
「わからない……でも生きているんじゃないかという希望はなぜかあるんだ……」
ツルオはこのアキトの根拠のない言葉によって、かなり勇気づけられた。
「つまり……健司を見つけないと何もわからないってことだな?」
マコトも乗る気である。
「とりあえず情報が必要だ……ツルオ君がサヤマの家に行った一週間前、サヤマは健司とあっている」
「後、ずっと気になってたんだけど、狭山の母親ってどうしてんだ? 父親は中学の時からいなかったけど……」
ツルオはサヤマとは中学のころから知り合いである。
「調べてみたんだけど、いまは施設に入っているらしい、アルツハイマー型認知症で、二年前くらいから」
「じゃあそのお母さんはなにも知らないわけか」
正直、アキトがそこまで調べているとツルオは思っていなかった。彼は予想以上に頼れるのかもしれない。
「健司は、ベンタくんと対峙したとき、正体を知ったのかな……」
「そう考えるのが一番あり得るけど……だとしたらサヤマは健司クンを家に招くかな……、最初から殺す気だったんなら、対峙したときに殺せばいい話だし……」
「健司が運よく逃げれて、正体を突き止めたんじゃねーの?」
「でもそんな余裕があるなら、健司は俺たちのところにくるはず……」
「とりあえず、明日サヤマの家の近くの情報を手に入れよう。サヤマ家の様子も見たいし……」
翌日、三人はサヤマの家を訪れた。
アパートは全焼したが、死亡者はサヤマのみだった。
サヤマがそのあと、どうなったかわからない。近所の人間に話を聞く限り、真っ黒こげの人のような形をしたものが一瞬見えたといっていた。
相変わらず、日本の警察は動かない。その理由を三人が知るのは先の話……いや、もう知ることはないのかもしれない。
第一章 完
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