第十三話「考察」

※一部「二十世紀少年」のネタバレを含みます


「うわあああ!! 先生……!! 一体どうして!!」


コンクリートうちっぱなしの冷たい病室の床に、奥村の血液が流れ出た。


異変を察知した波留が数分後駆け付け、ツルオはまた違う病室に入れられた。


病室でぼうっとしていると、マコトが入ってきた。


その隣には初めて見る男がいた。


「マコト!! 会いたかった……! けど今、奥村先生が!!」


マコトは少し悩んだ表情をみせてから、口を開いた。


「奥村先生、死んだって」


「!! お、俺のせいだ!! 俺が刺激しちまった!!」


「落ち着け、もともと奥村先生は精神病だったんだ、発作さ」


「ま、まあいったん落ち着くわ……お前には聞きたいことが山ほどあるが、とりあえず、サヤマは?」


「遺体を確認する余裕はなかったが、絶対に死んだ。きっともう地獄にいるさ」


「そ、そうか……それとその隣の方は?」


ずっと黙っていた男が、一歩前に出た。


「僕は管谷アキト、鶴島君とは接点はほとんどなかったっけ」


「……! ああお前、高校の時の……!!」


管谷は同じ高校の人物だが、クラスは違い、”いじめ”には参加していなかった。


「コイツはマジで頭がキレるんだよ、探偵みたいなんだ」


マコトの話を聞き流しながら、彼はポケットから一冊の本を取り出した。


「あ……”二十世紀少年” どうして?」


「君とサヤマの話を録音させてもらってたんだ、だましてたつもりはないけど、悪かった」


「え⁉ じゃあおれは……囮ってことか⁉」


「そう考えるな、逆に今回のMVPは完全にお前だったぞ!」


「そ、そうか……」


ツルオは一瞬二人に腹が立ったが、単純だったためすぐ忘れた。


「それでこの漫画が出てきて……僕は一回も読んだことなかったんだけど、読んでみたんだ」


ツルオも二十世紀少年は小さなころにDVDかなにかで見ただけで、内容はほとんど覚えていなかった。


「”トモダチ”っていうやつが世界征服する話だった……」


「そ、そうなのか」


ツルオはなんの話をされているのかわからなかった。


「トモダチは……ベンタくんとすごく似てるんだ……特に見た目とか」


「じゃ、じゃあやっぱり、サヤマだったのか……?」


「それならよかったんだが……”トモダチ”は二人いたんだ……!!」


「そ、それって……てことは……!」


盛り上がってきたところで管谷は違う話をしはじめた。


「これはほとんどありえない空想論……証拠も何もないし……でもあれだけが”謎”なんだ」


「謎はいっぱいあるぞ……」


「健司の行方はまた別の話で……サヤマの最後の行動だ」


「確かにおかしかったけど……イッちゃってるやつはそんな感じじゃないのか? 奥村先生もそうだったし……」


「いや……明らかに彼はおかしかった。今までは普通に話していたのに突然……まるで……”操られている”ように……」





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