第八話「弊害」
マコトが後ろを見ると、五人ほどの黒ビニールをかぶった人間がいた。
「……!!」
マコトは生命的な危険を感じ、一目散に逃げた。
しかし、マコトには向かう場所はなかった。
秘密基地に行くわけもいかず、遠回りをして交番へ引き返すことにした。
「すまねえテッチャン! 迷惑かけるかも…」
マコトは水泳部だった。特段足が速いわけでもなく、泳ぎもそこそこだったが、高校を卒業してから建築系の仕事をしていたこともあり、体力には自信があった。
黒ビニールたちは足が遅かった。だが、まったくペースが乱れなかった。
(おかしいな……相当の経験者じゃないと完璧に一定のペースでは走れないぞ…)
しかし、スピードは老人の自転車ほどで、マコトにとっては全く脅威ではなかった。
それよりも、ベンタくんが複数いる。という情報を得れたことのほうが大きな収穫だった…と思っていた。
(見えた…! テッチャンがいる交番!)
交番からはあまり離れていなかったのでそう時間はかからなかった。
交番が見えてきたとき、突然黒ビニールたちがマコトを追うのをやめた。
(あきらめた…?)
とりあえず、交番へ入る。
さっきまでこちらをにらんでいた警察官の姿は、外からは見えなかった。
「テッチャン! さっきそこで……、あれ、かっちゃん?」
交番に入ったとき、テッチャンの姿は見えなかった。…それも当然の話である。
テッチャンは血みどろになりながら、交番の床に横たわっていた。
「テッチャン!!!! なにがあった!!⁇」
テッチャンはすでに呼吸をしていなかった。
「テッチャン……すまねえ……」
再び、背後に気配を感じた。
しかしさっきとは明らかに違った。
あの五人の黒ビニールとは比べ物にならないほどおどろおどろしいオーラを、マコトは背中で感じ取った。
振り向くと、黒ビニールの男が一人、立っていた。
「ひさしぶり……マコトくん」
「俺の名前を……やっぱりお前…、狭山だろ!!」
「フフフ……同じことを数か月前、健司にも言われた」
健司は自分がいじめていたことをはっきりと覚えていた。
「やっぱりそうだったんだな…悪いが俺は…忘れていた……」
ベンタくんが黙る。
「お前は俺らへの復讐なんだろ? なんで関係ないテッチャンをまきこんだ!」
「ハハハハハ……」
ベンタくんは乾いた笑い声を響かせながら、ビニールごしに顔に手をやった。
「無関係なひとを先に巻き込んだのは…君じゃないか」
マコトは何も言えなかった。
「それと違うよ……君たちへの復讐じゃない…」
「じゃあ目的はなんなんだよ…」
ベンタくんは少し溜めてから話した。
「世界への……復讐さ……」
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