第五話「狙い」

「おい、お前もこいつ一発殴れよ」


「いいぜ、俺ゲーセンのパンチマシーンで週で二位とったんだぜ」


「なんだよそれ、しょぼいな」


過去の記憶が鮮明によみがえってきた。


ツルオは高校時代、いじめをしていた。


大学に入らず、フリーターとして生活していたツルオは、そのことなどすっかり忘れていた。


いじめのしていたグループには、健司もいた。


「おい健司、テンション低いな、どうした?」


「いや、なんでもねえよ。ソイツ、むかつくよな」



いじめられていたヤツは覚えていない。いじめはじめた原因も。


ベンタくんの正体はいじめられていたヤツなのではないかと思い始めた。


ツルオはそのことを伝えるため、秘密基地へと足早に向かった。


秘密基地へ着くと、見覚えのある顔がいた。


「あれ…お前、どっかで…」


「お前…ツルオか…話では聞いてた…」


見覚えのある顔をした男はゆっくり立ち上がる。どうやら足にけがを負っているようだった。


「おまえマコトか!?」


「本名は真だ…マコトなんて久しぶりに呼ばれた」


男は杉原シンだった。高校時代のいじめの主犯格だった男だ。


「お前もベンタ君に…?」


「いや…お前同じように反社にやられて…」


「それで幸村さんたちに助けてもらったのか…」


「ああ、お前も大変みたいだな…」


「そうだ…! 俺幸村さんにすぐ伝えたいことがあって! 後でお前とも話したいから、待っててくれ!」


ツルオは急いで幸村の部屋へと向かった。


向かっていく途中、秘密基地内の廊下で幸村とばったり会った。


「幸村さん! 情報が!」


「鶴島くん、あなたニュース見た!?」


幸村は今までにない迫真の表情で話しかけてきた。


「ニュース…? ここ最近見てないすけど…」


幸村は携帯の画面をツルオに向ける。


「あなたの家…爆発した……!」


携帯の画面に映し出されていたのは”東京都あきる野市のアパート爆発 8人ケガ、2人死亡”という文字だった。


「ど、どういうことだ…」


「きっとあなたを狙ってよ! ずっとここにいたほうがいいわ!」


「ち、違う…。あいつは俺が家にいないことをわかっていた……」


寒いのに汗が止まらない。


「どういうこと…まさかあなた…」


「いまさっき、ベンタくんにあった…。この二人死亡ってのは……」


「会ったの!? ベンタくんに!!? じゃあなぜヤツはあなたのアパートを!?」


「幸村さん…死亡した二人ってのは誰かわかります…?」


「いいえ、ニュースで出ているのはこれだけだわ……もしかして…」


「きっと……僕の妻と娘だ……!」







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