第一章

第四話「鶴島キリオ」

健司を背負いながらホテルから離れていると、背後から大きな爆音が聞こえた。


ビジネスホテルが爆破されたのだった。


その衝撃で、健司の死体が落ちる。その時ツルオはあることに気づいた。


「こ、これ…、人形か…?」


ツルオは恐ろしくて健司の死体を直視することはできていなかった。しかし、爆破の衝撃で雑に着せられた上着がはだけ、肉の質感にそっくりに作られた人形が顔を出す。


「どういうことだ…? 健司、お前はまだ生きているのか…?」


恐ろしくなったツルオはどこか不気味な人形を路上に放棄し、一目散で逃げた。



三か月後


ツルオは幸村と食事をしていた。


「それで…私の妻と子、健司の行方はまだわかりませんか?」


「すいませんね…”ベンタくん”の本当の狙いもまだ…」


ツルオは秘密基地に通い、幸村たちと協力して健司たちの行方を追っていた。


「ツルオさん、あなたは何か心当たりは…やっぱりないわよね…?」


「はい…さっぱりです…。社会人になってからはそもそもあまり人と接していないので…」


そこからしばらく沈黙の時間が続いた。


30分ほど経ち、空気に耐え切れなくなったツルオは、幸村に別れを告げた。


「じゃあ、そろそろ僕は帰ります。仕事もあるんで」


ツルオは沈み込む気持ちをなんとか抑えながら帰っていた。


突然、後ろから声をかけられた。


「やあ、久しぶり、ツルオくん」


ベンタくんだった。


「お、お前!! 健司は、俺の妻と子供はどこなんだよ…!」


「焦らないでよ…ツルオくん」


「お前にそんなあだ名で呼ばれる筋合いはねえ! 狙いはなんだ、恨みがあるなら俺を殺せ!!」


「狙い…”世界征服”かな…フフ」


憎たらしい笑みを浮かべていることが、ビニール越しでもはっきりわかった。


「せ、世界征服!? 笑わせるな! できるはずねえだろ!!」


「もう一つの狙いは…”復讐”」


ツルオは死ぬほど逃げたかったが、そういうわけにもいかなかった。」


「復讐だと…? 俺がお前に何かしたか…⁉」


「まあそんな話はやめようよ…アンナさんは元気かい…河合アンナさん…」


「河合……アンナ……?」


河合アンナはツルオの高校時代の彼女である。


「お前…なんでそんなことを…!」


ベンタくんはいつの間にかバイクを用意していた。


「お話はここまでかな…。さよなら」


バイクにすでにまたがっていた。


「待て!! じゃあなんで今おれを殺さないんだ⁉」


ベンタくんはバイクのエンジンをかけながら答えた。


「つまらないでしょ?」


ベンタくんは去っていった。


「あいつは…高校時代の同級生……?」


盲点であった。いや、目をそらしていた。


一番可能性の高い人物を、ツルオは知っていた。


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