第24話 間木老人:北条民雄
ハンセン病に侵された悲劇の作家 北条民雄のデビュー作(だったような)。
あらすじ
起:ハンセン病施設に収容されて3か月の主人公。彼は、陰鬱な気持ちを紛らわせるために、施設の動物小屋掃除の仕事に従事するようになる。モルモットやら猿谷ら犬やら、檻の中の動物たちと自らを重ね合わせて、日々を過ごしていた。そんなある日、いつも通り掃除をしていると、老紳士ふらっと現れ、彼に声をかけた。
承:老紳士は、落ち着いていて品があり、主人公は好感を持った。加えて、彼は元軍人で主人公の父親とも面識があった。老紳士は、主人公の相談相手となり、二人は交流を深めていく。
転:ある夜。施設から、若い男女が脱走する事件が起きる。男女はすぐにつかまり、男は施設追放。女は、施設へと連れ戻される。女は数日後、大きな松の木に縄を括り、自殺した。主人公は、その松の木が気になる。「この木に縄を括り付ければ、自殺できる」そんな邪念が、頭をよぎった時、老紳士が姿を見せ、踏みとどまる。そして、主人公は老紳士から衝撃的な事実を伝えられる。自殺した女は、彼の娘だった。
結:省略
面白ポイント①:ゴリゴリの悲劇小説
→本書評の2話で取り上げた「いのちの初夜」は、ハンセン病の記録小説という枠組みを超えた、普遍的テーマを描いた作品で、悲しいとか可哀そうとかそう言った感情抜きにして読むべき”文学”作品ですが、この作品は違います。
→ハンセン病による悲劇。悲しみ、憐み、そう言った直接的な感情を揺さぶる重い作品です。
→映画でいうと火垂るの墓クラスの悲劇作品になっています。
面白ポイント②:文学とエンターテイメント
→誤解を生む言い方ですが、この作品は、エンターテイメント小説の良作として、私の中では分類されます。私の中で、笑えるからエンターテイメントというわけではなく、それが悲しみであったとしても”喜怒哀楽の感情を揺さぶるもの”が、エンターテイメントであるという私の定義なのです。
→つまり、私にとって北条民雄は、普遍的な概念を描く”文学”と直接的感情を揺さぶる”エンターテイメント”両方に対応した稀有な作家の一人といえます。
→”いのちの初夜”で衝撃を受けたのち、本作を読んで、北条民雄は本物だと認識し、お気に入り作家の一人となったのです。
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