第20話 破戒:島崎藤村

部落差別について描いた古典的名作。


あらすじ

起;小学校で教師をしている青年には、決して破ってはならない、父より授かった戒律があった。それは、「被差別部落出身であることを決して明かしてはいけない」。

彼は<エタ>であった。彼は生まれ故郷、そして、家族と決別し、出生を隠して生きてきたのだ。父の戒律を守り、順風満帆な人生を歩む彼であったが、心の中には常に葛藤があった。

承:学校内に、青年が<エタ>ではないかという、噂が流れる。しかし、彼はしらをきって、それを受け流す。そして、縁があり、心酔している活動家から、ともに活動するように、持ちかけられるが、やはり、しらを切りとおす。彼の中の葛藤は、どんどん強くなる。

転:そんな中、その活動家が殺害される。彼はついに、ある決心をし、生徒たちの前に立つ。そして、自らの出生を告白し、謝罪するのだった。

結:省略


面白ポイント①:彼はなぜ謝罪したのか

→ドストエフスキーの罪と罰と設定が似ているといわれる本作ですが、罪と罰と違い、結構読みやすいです。展開も比較的早く、とっつきにくい部類の小説ではないかなという印象です。

→私が印象深かったのは、クライマックスの破戒のシーンです。彼は、自らの生徒に謝ります。

→謝る理由は、「嘘をついていたから」ではありません。普通の感覚ではそうですよね?

→しかし違います。彼は「<エタ>の自分が、教育をしたということ」に謝っているのです。


面白ポイント②:小説として読める。

→私は、この本を読んで、差別の悲惨さを学ぼうなどという聖人君子ではありません。どうでもいいです。なぜなら、私の周りにそう言った被差別者がいないからです。

→私は、小説として面白いかどうかという視点で読みます。そういう意味で、破戒のシーンはグッとくるものがあるのです。

→感覚のズレ。<普通>の人と論点がずれている。そう思いました。彼は、<エタ>なのです。知的な彼が、そのことに気が付きもしない。そんな哀れな姿に感情移入してしまいます。同情してしまう。悲哀の小説です。

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