第16話 アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ:モフセン マフマルバフ
三十代以降の人なら記憶があるかと思いますが、2001年に発生した、タリバンによる、文化遺産(大仏)破壊事件に関するルポタージュです。
この事件を機にタリバンの名前が日本にも広く認知されましたね。
あらすじ(ルポタージュなので、あらすじというものはありません。私の私見ありありで、無理やり書いています。)
起:インダス文明、アケメネス朝ペルシャ、アレクサンダー大王の占領地、、、西洋的世界史の中で、アフガニスタンが言及されるのはそれくらい。アフガニスタンは、長らく世界から忘れられた土地であった。
承:地理的条件、風土、様々な要因がマイナスとなって重なり、アフガニスタンは経済や産業が発展しずらい土地であった。近代となってもアフガニスタンは、やはり貧しく、忘れられたまま、、、。そんなアフガニスタンは、2001年、大飢饉に見舞われ、何万人もの人間が餓死してしまう。
転:同時期、武装組織タリバンによって、文化遺産であるバーミヤン大仏が破壊される。国際社会は、破壊行為を一斉に非難する。この時、アフガニスタンは、初めて世界の表舞台に立った、、、と思われたが、しかし、世界が見ていたのは、アフガニスタンでも死にゆく人々でもなく、あくまで仏像であった。
結:作者は、こう結論付ける。
「アフガンの仏像は破壊されたのではない。飢餓で死にゆく人々を前に、自らの権威など無力であることを察し、恥辱のあまり、崩れ落ちたのだ」
ポイント①:恥辱を与えたのは誰か
→作者の言葉は、文章というものの強大な力を感じさせてくれる名文だと私は思います。この言葉は大仏、仏教を卑下することを意図していません。寧ろ、一種の尊敬すら感じます。
→文章の矛先は、破壊行為をした武装勢力ではありません(言うまでもなく、破壊行為を擁護もしていませんが)。偉大なる仏像が、自ら崩壊するほどの恥辱を与えたのは彼らではないのです。
→偉大なる大仏に恥辱を与えたのは、いったい誰なのでしょうか?
ポイント②:「無関心」による大虐殺
→餓死した人たちは、国際社会がほんの少しでも手を差し伸べるだけで、簡単に救えた命です。
→しかも、同時期に遺産の破壊行為に関して、アフガニスタンに人々は目を向けていた。視界には入っているのに、世界は焦点を人々の命に合わせることはせず、無機物である仏像だけを見ていたわけです。つまり、助けられる立場である我々は、餓死する人々を無視したわけです。大げさな言い方かもしれませんが、これは、ホローコストではないでしょうか?
→当事者は、政府のお偉いさんだけではありません。我々もその一人であります。
→こういった「無関心」という「悪意無き殺人」を、今でも日々、繰り返しているのではないか、、、そんな、疑念がわいてきます。
→大仏へ恥辱を与えたのは、飢えで苦しむ人々を無視した我々なのです。
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