第9話 楽園のカンヴァス:原田マハ

アンリ・ルソーの名画を題材にした美術サスペンス。


起:とある大富豪の邸宅に、2人の鑑定士が呼び出される。1人は、若い日本人女性、もう1人は、まぁまあ、おっさんのアメリカ人男性。2人はアンリ・ルソーの作品(と言い張っている絵)の鑑定を依頼される。その絵は、ニューヨークの大美術館所有の「夢」という作品と瓜二つだった。どちらが偽か、またはどちらも真か、、、。

承:依頼内容には奇妙な点が多々あった。鑑定期間は7日間。最終日に、作品の真・偽を判定し、その根拠についてプレゼンをする。そして、大富豪を納得させた方に、作品は贈与される。そして、「全7章からなる参考文献を1日1章づつ読むこと」。その参考文献は、作者不明で、ルソーの人物伝のような、脚色された小説のような書き物だった。そこに書かれていたのは、不遇の画家ルソー、ルソーが恋した女性、その夫、、、そして、パブロ・ピカソの物語であった。

転:日を経ていくうちに、2人の鑑定士は、互いに交流を深め、認め合っていく。そして、互いにのっぴきならない境遇にいることを理解していく。そんななか、アメリカ人は、衝撃な事実にたどり着く「あの絵には、ピカソの新作が隠されている」、、、物語と、絵がつながり始めた、、、。

結:省略


面白ポイント①:誰も殺されない。誰も捕まらない。ミステリー小説

→平和です。しかし、深淵なミステリーの世界に引き込まれていきますし、重ーい気持ちにもなりますし、ハレバレとした気持ちにもなりますし、あれ?あれどういうことだ?っと読後に考察したくもなります。つまり、物足りなさは一切ありません。


面白ポイント②:あんまり登場人物が多くないミステリー小説

→物語の”動き”としては、だいたい二人の鑑定士の動きがメインです。参考文献の物語の中の人物もあんまり多くの人物がでてこないのと、出てくる名前が、ルソーとかピカソとか、有名な名前なので、混乱することはありません。スルスルと読めることでしょう。


面白ポイント③:浮かびあがってくるルソーの苦悩

→メインの物語よりも、私は参考文献の話に感動してしまいました。そんなにルソーに詳しいわけではないですが、作者の手腕により、知らず知らずのうちに感情移入してしまい、まるでルソーの第一人者になった気になります。

→あなたは、ルソーの第一人者。最初の庇護者、、、。そうなれば、もう答えはでたのです。自然と作品はクライマックスへと進み、終焉を迎えます。

→そして、本を閉じると同時に、あなたはルソーを画像検索してしまうことでしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る