第8話 天才の栄光と挫折:藤原正彦

国家の品格がベストセラーとなった数学者兼作家 藤原正彦が作者。

数学史に名を残す天才たちの苦悩を、脚色たっぷりに描いた伝記集。


あらすじ

起:中世。イングランドに一人の偉人が生まれる。彼の名前はアイザック。両親は離婚しており、母の手で育てられる。しかし、母は近くの教会の神父と浮気しており、幼少期は一人孤独に過ごすことが多かった。

承:彼は長じて、数学者となる。成果を重ね、それなりの名声を得ていたが、それは彼の才能のほんの一欠片に過ぎなかった。もう一人の天才、ケプラーはそれを見抜いた。ケプラーは、当時、数学界で議論されていた難問を投げかける。「彗星の軌道は円?楕円?」アイザックは即答する「楕円だ」

転:彼はアイザックの可能性を確信し、脳内にある力学体系をまとめるようにアイザックを誘導する。そして、プリンキピアが完成する。それを呼んだケプラーは言った。「驚きのあまり、ショック死しなかったのは幸い」

結:省略


面白ポイント①:圧倒的チート設定

→最近ラノベやアニメではでチートな主人公が人気な気がします。この作品は、それらと同ジャンルといっていいでしょう。

→とにかく、チートです。10歳で5カ国語しゃべるやつとか。寝て起きたら、難解な数学公式が浮かんでいる人間だとか、、、。上記のニュートンのくだりも、チート感丸出しですよね。

→当時、彗星の軌道については、最先端の難問でした。数学者の間でも、色々な議論があり、結論は出ていません。しかし、ケプラーは、自分の中で「楕円が正解」という確信がありました。ケプラーはあくまで、ニュートンを試したのです。

→しかし、回答は即答でした。ニュートンの内部には、圧倒的な力学体形が構築されていることを確信したのです。

→そして、このセリフ。「ショック死しなかったのは幸い」。もうこれは、超チート転生ラノベのセリフじゃないですか?


面白ポイント②:悲しい伝記

→偉人たちの実績をたどるだけでは、ただのチート話で終わります。この作品の最大の魅力はそこではありません。

→作者の脚色たっぷりの人物描写にあります。数学者である作者は、天才の孤独と苦悩を克明に描きます。

→そして、栄光だらけの天才たちの人生から、溢れ出てくる憂い、、、泣けます。類似の小説でいうと「容疑者Xの献身」みたいな感じですね。あれが好きな人は、絶対泣けますよ。これは、泣ける伝記なのです。個人的に本を読んで泣くことはあんまりないですが、「ウィリアム・ハミルトン」の話は、めちゃ泣いてしまいました。



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